前夜

心沢 みうら

何者でもない僕の死は「1000いいね」

夜に書いた。


◇◇◇


死はSNS上における一大コンテンツだと思う。

それぐらいに死は大きいものであり、しかし身近でない人々にとっては軽いものである。なんとなく追悼のいいねを押して、それ以後あなたは彼を忘れる。


あるいは、その投稿への返信を見るかもしれない。あなたは彼の友人の追悼の言葉に、同意を込めていいねを押すだろう。そして「荒らし」のような人々を見て眉を顰め、ブロックをする。そうするとその投稿は見えなくなって、あなたの頭の中から消えるだろう。


あなたはある程度返信を見終わると、すぐに別の投稿に目移りして、十分後には彼のことなど綺麗さっぱり忘れている。


彼は死んだ。苦しい闘病のあと?それとも衝動的な自死?


彼の死をメガホンに誰かがなにか主張を始めたりする。

全てはコンテンツである。


死んだあとの一瞬の間だけ、彼は生前得られなかった多数からの承認を受けて輝いて。

その後は誰にも思い出されなくなって、もう一度死ぬのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る