第1話:世界初の戦車エース
アルフレット・シュナイダーの家は帝国の内では下級貴族、
だが、そんな彼には秘密があった。それは交通事故で神、存在Xによって、ターニャの居る異世界に転生した元日本人男性であった。
彼はこの世界も前世と同じく世界大戦への道を歩んでいる事を確信し、両親の反対を押し切って帝国軍に志願入隊する。
統一暦1924年、ライン戦線。優秀な成績で訓練を終えたアルフレットは大尉としてⅢ号突撃砲A型の車長を務めていた。
「大尉、敵はいましたか?」
「いいや。見えるのは泥に砲撃に銃声、後は土煙と黒煙くらいだ」
その光景にアルフレットは驚きながら顔を下に向け大声を出す。
「おい!10時方向より共和国のソミュア S35騎兵戦車が接近中!数は四両!こっちに向かっている‼」
それを聞いた車内の三人は驚く。
「敵戦車⁉大尉、今すぐ後退しましょ!」
そうアルフレットに助言をする装填手を務める一等軍曹の男性兵士。だが、アルフレットは違った。
「装填手!徹甲弾を装填‼奴らを返り討ちにする!」
アルフレットの向かい撃つ命令に装填手を含めた操縦長と副操縦長は驚愕する。
「大尉!正気ですか⁉
車内へ入りハッチを閉めたアルフレットは険しい表情で対戦車戦闘を否定する装填手の胸ぐらを片手で掴み、自分の近くへと引っ張る。
「これは命令だ!従え‼」
そう言うとアルフレットは突き飛ばす様に装填手の胸ぐらを放すと被っていた軍帽をクルっと回す。
一方、彼の気迫に負けた装填手、操縦長、副操縦長は生唾を飲み覚悟を決める。
■
装填手は素早く徹甲弾を
「徹甲弾!装填よし‼」
装填手からの装填完了を聞いたアルフレットは主砲のスコープを覗き、列の先頭を走るソミュア S35のキャタピラを狙いを定める。
「目標ロック!発射‼」
アルフレットは赤いレバーを引き、主砲を撃つ。
そして先頭の後方を走っていた残り三両のソミュア S35が左右に散開し、走行しながら丘に向かって主砲の47mm SA35戦車砲を発射する。
「次弾装填!砲を左へ移動‼」
アルフレットからの命令に装填手は困惑する。
「ちょっと大尉!冷静になって下さい‼
それを聞いたアルフレットは再び険しい表情となり、怒鳴る。
「車体を動かせばいいだろ‼車体を‼操縦長!ただちに車体を左!9時方向へ!急げ‼」
「あ!はい‼」
操縦長は急いで
そして左翼に散開したソミュア S35が狙える位置に
「次弾!装填よし!」
「発射!」
発射された次弾はソミュア S35の車体と砲塔の間に命中しソミュア S35の砲塔が上に向かって爆発する。
「よし!次!右、2時方向へ車体を移動‼」
「了解!」
操縦長は素早く
「操縦長!命令を撤回!急いで後方へ下がれ‼」
「了解です!」
操縦長は
■
走る
「よし!操縦長!左にある焼け落ちた家屋の残骸に向かえ‼そこに身を隠して敵戦車を迎え撃つ‼」
「了解です!大尉‼」
素早く残骸に身を隠した
そしてアルフレットは再び列を組んで進軍する三両のソミュア S35の先頭を砲撃、撃破する。
すると残り二両のソミュア S35が重なる様に走行をするのでアルフレットは装填手に命令をする。
「装填手!貫徹術式を付与された徹甲弾を装填‼」
「了解!」
装填手は素早く薬莢を排出、そして術式模様が青白く光る徹甲弾を装填する。
「次弾!装填よし!」
「発射!」
「全共和国の戦車を撃破!皆、よくやった!」
アルフレットがそう言うと皆は歓喜に沸く。
するとアルフレットは装填手の肩を軽く叩き、笑顔を向ける。
「二等軍曹、俺は常に仲間と国を考えて戦っている。だから、お前も皆も俺を信じろ」
それを聞いた装填手、操縦長、副操縦長は感激を受ける。
「「「はい!大尉殿!」」」
皆の返事に見たアルフレットはフッと笑顔になると左腰にある水筒を手に取り、水を一杯飲んで一息つく。
そして、この瞬間、異世界で初の戦車エースが誕生したのであった。
あとがき
今回の戦車戦はドイツの戦車エース、『ミハイル・ヴィットマン』の東部戦線での初戦をモデルにして描きました。
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