第17話 潔白

 酒田辰之助は、警察署に留置された。

綾小路警部は粘ったが、辰之助の「知らん!」の一点張りにしびれを切らせ、事態を進展させる為に街にでた。


 夕方 千倉警察署


 勝也達、6人は酒田辰之助に面会に来た。

美代も一緒である。

 本来なら許されない所だが、警察としては辰之助の口を割らせるため、身内と話しをさせれば気が緩むかもと思っての事であった。


 面会室に現れた辰之助は、孫達を見ると悲しそうな顔をした。

酒田が「爺ちゃん!」と鼻水をたらし泣き出した。

それを見た辰之助も、涙腺がゆるんだ。

「何でこんな事になったのか?」第一声はそれだった。

 美代は、「お言葉ですがお爺様は、本当に〝死体〟とは関係ないんですか?」と聞いた。

辰之助は、厳しい顔になり「ワシは潔白じゃ!死体など埋めておらん!」と言い身体を斜めに向けた。

勝也は、「何か、疑いを晴らす方法はないのでしょうか?」と聞いた。

辰之助は、暫く考えこみ「ワシは、昔千倉で教師をしていた‥戦争中もな‥戦後まもなく、義之 お前の父が産まれ、その後千倉を後にした‥

川井源太郎かわいげんたろうと言う教え子がいた。まあ、気の荒いヤツで仲間を束ねておった。だがワシの言う事はよく聞いてな‥ヤツがまだ千倉にいるなら、何か知ってるかもしれん‥〝小次郎〟の太助に聞けば居場所は、解るだろう‥」そう言うと警察官が入って来て

「時間だ!」と告げた。

連れられる辰之助は、「無理はするなよ」そう言って面会室を後にした。


 勝也達6人は、小次郎に戻り、与島太助に川井源太郎の事を聞いた。

太助は、眉を顰めひそたが、この時間なら、〝養生の滝〟と言う居酒屋で飲んでいるだろうと教えてくれた。

川井源太郎は、漁師をやっているそうだとも教えてくれた。

 小次郎から、〝養生の滝〟に向かおうとすると、

勝也の母澄江に「何処行くの!」と呼び止められる。

すかさず伊藤が「警察から、掘った時のスコップを持って来てくれっていわれてます!」と、咄嗟に嘘をついた。

澄江は、「暗くなる前に帰るのよ!」と言い、勝也達が昨日泊まった部屋へ戻った。

 親達も酒田辰之助が、重要参考人になり、なにかと忙しくしていた。


 〝養生の滝〟


 美代を先頭に店に入り、カウンターに居る板さんに〝川井源太郎〟の事を尋ねると、奥の席に居ると教えてくれた。

 6人が奥の席を覗き込むと、やさぐれた漁師であろう5人がヒソヒソ話をしていた。

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