異世界 綺麗と可愛い、どちらが強いのか?
ぺったんこ
第1話 王様の疑問
イルミーナ宝国の国王であるオルト・ノワール13世は、ある疑問を抱いた。
血縁によって王位を継承していくには、子孫繁栄を重視する必要があった。
様々な女性を見てきた王様だが、答えが出せない。
それほどまでに難題で、己の考えだけでは辿り着けない、究極の問。
「の~う、誰かワシに教えてくれんか……」
頭を抱え込み、苦慮する姿に、これは一大事だと家臣や大臣、騎士やメイド、王宮にいる全ての人が集まり王様が口を開くのを待った。
数分して、ようやく顔を上げ、皆に問いかける。
「綺麗と可愛いは……どちらが強いのだろうか?」
しーーーん、と静まり返る王宮内。
誰も答える事ができない。
それもそのはず、王様の問である、「どちらが強いのか?」など、誰も考えたことが無いのだ。
それどころか疑問が分からない者もいた。
「どういう意味なんだ?」
「いや、分からない」
「綺麗と可愛い、どちらが美しいのか?ってことか」
「違う気もするけどな……」
皆は話し合うが、一向にまとまらず時間だけが過ぎていく。
自分たちだけでは無理だと判断した家臣と大臣が、莫大な賞金をかけ世界中に募集したところ、多くの人が集まったが、解決できる者はいなかった。
中には、賞金狙いで嘘を付く輩も多く、取り押さえて牢屋にいれる事態も発生する。
嘘とみなされれば犯罪者扱いとなることを恐れた人達は、次第に訪れる人が減り、遂には誰も来なくなってしまった。
そんな中、一人の女が王様の前に現れて口を開いた……
「王様、答えは分かりませんが、簡単に謎を解く方法なら思いつきます!」
「それは本当か? いったいどんな方法なのだ?」
「戦い勝者を決めるのです!」
ローブに身を包み、妖しげに笑う女。
女の提案には不審がある。
王様の悩みは、綺麗と可愛い、どちらが強いのか?
女が言った方法では意味がない。
なぜなら単純に闘わせても、容姿に関係なく、強い奴が勝者となるだけ。
それでは意味がない……
「そちの言う、やり方では駄目だ!!! 世の悩みを断つことはできぬ。 皆の者、世を愚弄した愚か者を捕えよ!」
「「「はい!」」」
激怒した王は女を捕えよと命じた。
騎士が囲み、魔術師が魔法で束縛するが、女はニヤリと笑う。
「ならば、見せて差しあげましょう。 どうぞ私の起こす奇跡をご覧下さい!」
余裕の表情で、魔術師による束縛を無理やり破壊して、囲んでいた騎士を魔法とは違う奇跡の力で吹き飛ばしてしまう。
さー次はどうしますか、といった表情で王様を見る。
呆気に取られていた王様はハッとなり、部下に命じる。
「ええーい! 何をしておる! もう一度魔法で縛り付けてしまえばよいのだ」
誰も王様の命令に返事を返す者はいない。
すでに魔術師は倒れ伏し、残りは王様と女の2人だけになっていた。
「バカなっ!? 大魔導師をこうも容易くっ」
「これが奇跡でございます!」
「ぬぅぅ……世を殺しに来たのか? それが、そちの目的かぁ?」
「いいえ。 私は王様の願いを叶えに来たのです。 今お見せした奇跡を使えばこの世界のルールを変える事ができます」
「なんとっ!? そのようなことがっ!? た、頼む、世の望む世界へと作り変えてくれぬか」
先程までの態度とはうって変わり、地べたに平伏し頭を垂れる王様。
野望のために必死にお願いする、その様子からは王としての威厳を感じない。
まるで、神にでも祈っているようである。
「いいでしょう。 綺麗と可愛いが強さとなる世界に……。 ……の奇跡をご覧あれ森羅万象!!!」
納得した女は両手を上へと広げ、奇跡を行使する。
世界中が光に包まれ、剣と魔法を貴重としてきた時代が終わりを迎える。
こうして、この世界は綺麗と可愛いが強さになるステータスへと書き換えられた。
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