第14話 芋を蒸して食べる

ある秋の日、事業所では芋を蒸して食べるイベントが企画されていた。秋の味覚を楽しむため、利用者全員で芋を収穫し、それを蒸して食べるというイベントだ。翔太もこのイベントを楽しみにしていた。


朝、事業所に到着すると、田中さんが迎えた。「おはよう、翔太くん。今日は芋掘りと蒸し芋を楽しもうね。」


「おはようございます、田中さん。芋掘りなんて久しぶりで楽しみです!」と翔太は笑顔で答えた。


事業所の庭には畑があり、そこにさつまいもがたくさん植えられていた。利用者たちは畑に集まり、手袋をつけて芋掘りを始めた。翔太は彩子と一緒に畝を掘り起こし、大きなさつまいもを次々と掘り出した。


「すごい、大きな芋がたくさん出てくるね!」と翔太が興奮気味に言った。


「本当だね、翔太くん。こんなにたくさん収穫できるとは思わなかったよ」と彩子も笑顔で答えた。


全員が協力して芋を掘り終えると、田中さんが蒸し器を準備し始めた。大きな蒸し器に水を入れ、収穫したばかりのさつまいもを並べて蒸し始めた。蒸し器からはほのかに甘い香りが漂い始め、皆の食欲をそそった。


「いい香りがしてきたね。もうすぐできるかな?」と翔太はわくわくしながら尋ねた。


「もう少しだよ、翔太くん。待ってる間に、他の準備をしよう」と田中さんが答えた。


皆でテーブルを準備し、食べるためのお皿やフォーク、バターや塩を用意した。蒸し器の蓋を開けると、湯気と共に甘い香りが広がり、ホクホクのさつまいもが現れた。


「わあ、すごく美味しそう!」と彩子が感嘆の声を上げた。


「さあ、みんな。蒸し芋ができたよ。好きなだけ取って食べてね」と田中さんが声をかけた。


翔太は大きなさつまいもを手に取り、バターを塗って一口かじった。ホクホクとした食感と自然の甘さが口いっぱいに広がり、思わず笑みがこぼれた。


「これは本当に美味しいですね!」と翔太は嬉しそうに言った。


「うん、自然の甘さがたまらないね。秋の味覚を楽しめて幸せ」と彩子も満足そうに答えた。


皆が蒸し芋を楽しみながら、笑顔で会話を交わし、楽しい時間を過ごした。田中さんも満足そうに皆の様子を見守っていた。


「こうしてみんなで一緒に食べると、より一層美味しく感じるね」と田中さんが言った。


「本当にそうですね。皆さんと一緒に食べると、心も温かくなります」と翔太は感謝の気持ちを込めて答えた。


その日の午後、翔太は彩子と共に事業所の庭で過ごしながら、秋の陽射しを楽しんだ。芋掘りと蒸し芋を通じて、季節の変わり目を感じることができ、心が豊かになった気がした。


「今日は本当に楽しかったね、彩子さん。次は何をするのか楽しみだよ」と翔太が言った。


「うん、私も同じ気持ち。これからも一緒に楽しい時間を過ごそうね」と彩子は微笑んだ。


姫路の風が、秋の豊かさと新たなインスピレーションを運んでくれる。翔太の物語は、これからも続いていく。日々の小さな一歩が、大きな成長へとつながるのだ。

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