この素晴らしいエリス様と祝福を! 並行四重奏〜ヘイコウカルテット〜 3
「第3章 この少し変わった街で色恋を!」
「あぁ……。じゃりっぱ……。じゃりっぱが行ってしまいました……」
あの後、何とかことなきを得て無事アルカンレティアに着いたのだが……何だがめぐみんが不穏な事を呟いている……
「おいめぐみん…そのじゃりっぱって何だ……?」
「あぁ……あのドラゴンの子供の飼い主さんがね、走り鷹飛に爆裂魔法を撃ち込んだ時に、助けてくれてありがとうって、飼い主さんが大魔道士に名前を付けて欲しいって言ったんだよね……」
……紅魔族に名付けを頼んでしまったのか。
「ドラゴンは一度名前を付けると、二度と他の名で呼んでも反応しないと聞いたのだが……」
ダクネスがそんな事をぽつりと言っていたが、聞いてない事にした……。
「お!着いた付いた!水と温泉の都アルカンレティア!」
そんなクリスの言葉に、そちら側を見ると…澄んだ湖と、温泉が湧き出る大きな山に隣接するこの街は、至る所に水路が張り巡らされていた。
一度だけ魔王軍の手先と戦闘になった事があるみたいだが、それ以降魔王の誰一人として近付いてこないらしい。
曰く。
プリーストを数多く抱えるこの街は、魔王軍の者にとって戦い辛いからだ。
曰く。
この街は、水の女神、アクア様の加護に守られているからだ。
___曰く。
「ようこそいらっしゃいましたアルカンレティアへ!この街では、色々なサービスを受け取れるのですが、アクシズ教に入れば更に色々なサービスを受け取れます!!ただし無理強いはしませんがね!!」
この街には大量のアクシズ教徒がいるから、それに関わりたくないからだ……と、聞いていた筈なのだが……
俺達が街に着いた途端、いきなりアクシズ教徒であろう女性に話し掛けられ、全員にアクシズ饅頭と言う食べ物を渡してきた。
「あぁすいません、ありがとう御座います……。」
「いえいえ!それでは良い一日を〜!!」
そう言って、後ろの客にもどんどん饅頭を渡し勧誘をしている……。
「おいクリス、俺が聞いた話に寄ると、無理矢理勧誘してくるやばい奴らの集団だと聞いていたんだが……。」
「あぁ……実はアクア先輩の教えってね、例え魔王軍や悪魔であっても、改心するのなら受け入れるって教えでね、攻めてきた魔王軍もアクシズ教に入ろうとするから、適当な噂を魔王軍が流してるんだよね……。」
何と可哀想な事だ……あいつそんなに良い女神様だったんだな……それに教徒達も皆一歩引いた上で誘い、何でも受け入れるみたいな感じだ……第1印象は最高だ。
「カズマカズマ!!私が知っている情報じゃ、もっとやばい奴の集団だと聞いていたのだが、それは嘘だったのか!?」
私の情報ではエリス教を見ると石を投げつけてくるって聞いたのに……と、ブツブツ言っているのだが、こいつそれ目当てで来たのか…?そんな街だったらこいつの事だから、この街に住もうとか言い始めるだろうな……。
「うし!じゃあ皆解散!各々夜になるまで街を観光したり休憩すること!」
そう言って、皆色んな所に行く中、ダクネスは落ち込んだ様子で宿泊に向かって行った。
さて、俺も温泉にでも入るか!!
「まずはこの街の案内マップでも見つけるか……」
「あのカズマさん…?」
ん?ってウィズ!そういやウィズも連れてきてたな……全く忘れていた。
「ん?どうしたウィズ?」
「いえ、あの…態々連れてきてありがとう御座います。私も付いてきてよかったのでしょうか…?」
何だそんな事気にしてるのか、
「まぁ気にすんなってウィズ、どうせなら皆で旅行した方が楽しいしな!今日は精一杯楽しもうぜ!!」
「ありがとう御座います!!」
そう言ってスキップ気味に温泉があるであろう方向へ向かって行くウィズを見る…う〜ん可愛いな……っと思っていると、急に後ろから悪寒が走ってきて、ぎこちなく後ろを向くと……。
「あ、クリスさんどうしたんですか…?」
「いやぁ〜?べっつに〜?ただ鼻伸びてたなぁっと思ってさ。」
と、こちらを冷めた目で見てくるクリス……なんだ!?胸が無い事を気にしてるのか!?
「おいクリス、さっき見つけた案内マップによると、あの店の角を右に曲がった温泉の効果が胸が成長する効果らしグハッ!!!」
真っ赤な顔して鳩尾を殴って来るクリス、フンッ!とそっぽ向いてその効果がある温泉へと向かって行く……やっぱり気にしてんじゃん……。
「う〜んここの温泉にするか!何か混浴もあるとか無いとか……。」
別に下心がある訳じゃないが、"一応"混浴付きの温泉にしておいた…まぁ下心がある訳じゃないが……。
「さて、どの温泉に入ろうかな?」
あの後お金を払おうとすると、初回サービス無料と言う事で無料で入らせてもらう事になったのだが……俺は今究極の選択が迫っている。
まず俺から見て右が女風呂、まず論外、次に真ん中の混浴温泉、俺は今早く温泉に入りたいこら最短で行くならここ、最後に左が男風呂、論外。
「よしッ!」
そう言って、意気揚々と混浴の札を潜り抜ける俺、まるで何かを成し遂げた気持ちだが、目的は中に居る女性…ではな温泉、さ〜て入るぞ〜!
「〜〜〜」
「〜〜〜」
ん?中から何か話し声が聞こえるぞ?一人は男性の声で……もう一人は……女性の声!?
こうしちゃおれん!早く中に入らなくては!!
「おい!!この街を滅ぼすのを辞めるとはどういう事だ!!」
ん?今何て……?
「え〜?だってこの街聞いてた話と違うもの…それに、ハンスも薄々分かってるでしょ?」
「クッ!!だが、相手は今一番危険な組織だ……俺は一人でもやるぞ!」
俺は腰にタオルを巻くと、ツカツカと引き戸の前に歩いて行き、前触れもなくスパン!!といい音を出して開ける。
「「ッ!?」」
突然開けられた扉とその音に、中の二人はビクッと震えた。
浴槽の中に居たのは二人の男女、男の方は浴槽には浸かっておらず、腰にタオルを巻いたまま、女のそばで片膝をついている。
筋肉質で背の高い、茶髪を短く切り揃えた男は、驚いた表情で俺を見ていた。
だがそんな男の事など視界に入れるのもほんの一瞬、俺はもう片方の、かなりリラックスした面持ちで湯船に浸かっている女性に目を向ける。
赤毛のショートカットに猫科を思わせる黄色い瞳が特徴的な、巨乳でスタイルの良いお姉さん係美女だった。
(ひょっとして聞かれたか……?)
(分からないわ……。でも、何だがこちらをずっと見ているような……)
ボソボソと喋っているが、悪いが読心術で全て聞こえている。
俺はそっと目線をずらし、何食わぬ顔で体を洗うために洗い場へ、二人の視線を浴びながら、俺は体を洗い始めた。
(……ねぇ、私の方ばかり見ているんだけど、どう言う事なの……)
(あぁ……まぁ話は聞かれて無かったみたいだぞ…あれは疑いの目じゃない、好奇の目だ……。)
男の言葉にお姉さんは、心なしかさっきよりも深く湯船の中に身を沈めた。
クソッ!!余計な事を!!
体を洗い終えた俺は、二人からちょっと離れて湯船に入り身を沈め、ついでにさっきよりもお姉さんをガン見する事にした。
(ねぇ。ね、ねぇ……)
(う、疑われるよりは良いじゃないか。俺は仕事があるから!)
言いながら、男はそそくさと出て行く。
ハンスと呼ばれていた男が出て行くと、風呂場の中は何だが気まずい空気になった。
どうしよ……何か緊張してきたな。
「……あの。貴方はこの街の住人じゃなさそうね、ここには旅行に来たのかしら?」
お姉さんが突然声を掛けてきた……向こうも、この空気にいたたまれなくなったのだろう。
「旅行……そうですね、仲間と一緒に湯治に来たんですよ。」
「あら?奇遇ねぁ……私も湯治の最中なのよ。でも貴方、若そうなのに湯治だなんてどうしたの?怪我でもした?」
「えぇ、まぁ一応冒険者をやってまして、クエスト中に首に重症を負ってしまいまして……まぁ名誉の負傷ってやつです。」
俺の言葉にクスクスの笑い。
「私は自分の半身と戦った際に、力を完全に奪いきれてなくてね……それで、本来の力を取り戻す為に、こうして湯治をしているの。」
そんな事を、冗談めかして言ってきた。
「何か俺の仲間の魔法使いが喜びそうなお話ですね。」
「ふふふっ、貴方のお仲間ってもしかして紅魔族?私が魔法を教えた紅魔族の女の子は元気にしてるかしら……。」
そう思い出に浸るようにして、遠くを見つめるお姉さん。
「さて。私はそろそろ上がるわね。……それと、この街の温泉には、今後あまり入らない方が良いかも知れないわよ?」
お姉さんは、そんな良く分からない事を言いながら風呂から上が……。
「……あ、あのぉ……出来れば少しこちらを見ないで欲しいかなぁ……って……。」
「あぁお構いなく。」
上がろうとしたお姉さんは、俺の即答を受けちょっと泣きそうな顔をした。
………しょうがない、そうして俺が後ろを向いていると、お姉さんは小さく、ありがとうと、言い残し。
「あーあ……。折角の温泉街だったのに……。また新しい湯治先を見つけないと……」
そんな意味深な事を呟いて、風呂場から出て行った。
___に、しても、この街を"滅ぼす"……そして、今後はこの温泉に入らない方が良いと言い残して行った……。
どうしてそんな事を教えてくれたのか分からないが……あのお姉さんは言葉は好意的だった……と思う。
俺はこれ以上考えるのはやめる事にした……そうだ、今回は旅行に来ただけなのだ……今回は聞かなかった事にしよう!……それに、まず考えるべきなのは……。
「……おいこら落ち着け我が聖剣エクスカリバーよ……これじゃ風呂から出られないじゃないか……。」
ふぅ……さて、温泉もたっぷり堪能した事だし!あいつらが何処に居るか探しにでも行くか。
「あ!カズマ!こんな所に居たんだ!!」
そう言って、こちらに歩いてくるクリス……心無しか少しバストアップしているような……。
「……ねぇカズマ…一体君は私の何処を見てるのかな?」
「一向に成長の眼差しが見えない部分だ。」
「身長かな?」
「自覚してんだろまな板。」
そう言うと同時に、クリスとは真逆に方向へと駆ける俺と、確か40万くらいしたナイフでこちらを刺そうと駆けてくるクリス……やはりクリスは面白いな。
そうして、他の仲間を探すのと同時にクリスから逃げていると、温泉で見かけた男……確かハンスとか言ったか?そいつが関係者以外立ち入り禁止の所へ歩いているのを見て、あぁ今回も厄介な事に巻き込まれるな……と思うと同時に、俺は躓いて転けてしまった……。
「……おいクリス、本当はほんの少し成長してると思うぞ。多分さっき入ってた胸が大きくなる温泉の効果だと思うぜ!」
「何で入ったの知ってるのさ!!」
いやだって俺が教えた方向に行ってたの見てたし……。
「まぁ、カズマ君は一回お仕置きされると良いと思うよ」
そう言って、また鳩尾に痛みを感じ、意識が飛ぶのだった……。
少しガヤガヤし、俺は目を覚ました……すると俺は、後頭部が少し硬い事に気づくと、ダクネスが膝枕してくれているのを察し……。
「……硬い、チェンジ。」
「今度は私がお前を殴ってやろうか?」
おぉ怖い怖い、少しふざけただけじゃないか。ジョークジョーク、アメリカンジョーク。
「んで、ここは一体何処なんだ?」
「あぁ、さっきクリスがお前を運んできてな、そこで話を聞かせてもらったが…少しばかりデリカシーがなさすぎるんじゃないか?」
「そうか……ならダクネス、お前がクリスに胸が大きくなる秘訣を教えてやれよ、お前無駄にデカイんだからさ。」
「そういう所がデリカシーが無いんだ全く……。」
成程……女の子って難しいんだな、こういう所が分かるやつがモテるんだろうなぁ……今度御剣にでも聞いて見るか…いやあいつ顔だったな。
「ただいま戻りました。いやぁやっぱりこの街は良いですね……ん?カズマはまた膝枕してもらってるんですか…良かったですね。」
「いや、ダクネスの膝枕って硬いからさ…めぐみんが変わってくれない?」
「何でですか……まぁ良いですけど……。」
あ、良いんだ……。
そうして、めぐみんに膝枕を変わってもらってんだが……これが何だが……。
「……何か…安心するな……うん、めぐみんはきっと良いお母さんになるよ。」
「何馬鹿な事言ってるんですか…ほら、もう終わりです、早く起き上がって下さい。」
何だもう終わりか……そうして俺達がのんびりくつろいでいると……。
「カズマカズマ!!大変な事になったよ!!」
そう言うかなり焦った表情で、扉をバンッ!と扉を開けて、息を切らしながらこちらを見るクリスが居た………。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます