第129話 ジョアーク城の戦い

 飛竜ローゼの呪いを解くと、なんと飛竜が金髪の美しい女性へと変化した。


「「「「ええっ!?」」」」


 破邪の剣はっつぁんは即インベントリへ。


 女性は裸だったので、ダズー君とミンクはすぐに後ろを向いた。紳士だね。


 俺はとりあえず服を被せて露出を少なくはしてあげたが、敵か味方か分からない相手に対し背を向けるような真似はしない。


 本当は俺だって紳士だから、裸をじろじろとみるような真似はしたくないのだが……仕方がない。うん、仕方がないのだ。


 飛竜の変化に皆で驚いた後に、服を着たローゼと改めて対面した。ローゼはとんでもなく美しい女性だった。傾国の美女という呼び名がふさわしい妖艶ささえある。


「私の呪いを解いていただきありがとうございます。私の名前はローゼ。呪いにより長い間、飛竜へと変化させられていましたが、おかげで助かりました。私を救う為にコムゲーン皇帝に仕えていた、恋人の竜騎士ケインの事が心配です。皇帝の元へ向かうのなら私も同行させてください」


『ボインちゃんならいつでも仲間にしたげるさかい、よろしゅうな』


 おい! 勝手に決めるな!


「よろしくお願いします」


 インベントリから再度取り出しておいたはっつぁんが、勝手に決めやがった!


 だが、はっつぁんが許可したという事は、ローゼには裏切りの陰がないということだろう。ローゼがいれば、恋人だと言っている竜騎士ケインを仲間に引き入れる事も可能だろうしな。


 元飛竜のローゼが仲間になった!



 

 パーティーを組むに当たってローゼの職業ジョブを聞いたところ、人間の時のジョブは白魔道士だったそうだが、飛竜になっている間に激レアジョブ『ドラグナー』のジョブが覚醒していたそうだ。


 なんでも、飛竜化するまではローゼ本人も知らなかったらしいのだが、うっすらと竜の血を引いているらしい。前衛を務めることができるステータスを持ちつつ、要所で白魔法による補助ができるとはありがたい。


 レジスタンスの幹部サリアは、弓と白魔法を使う。


 隠し通路に来るまでに、俺達が瞬影のケンタジードから手に入れていた最強装備の一角『与一の弓矢』とレジスタンスが手に入れていたステータスアップ素材『ドラゴン王孵オーブ』の一つとを交換しておいたので、弓矢での攻撃力はかなりのものだ。


 元宮廷魔道士のミンクは第三職業持ちの凄腕で、白魔法、時魔法、黒魔法を操る魔法のエキスパートだ。精神と知性のステータス値も高く、秀でた殲滅能力を持っている。


 機工士のダズー君は特殊スキル『狙い撃ち』で、敵の姿が見えるやいなや長距離狙撃をして、敵を行動不能状態にして戦闘に参加させない。一刻を争う状態で無駄な戦闘を減らす事ができるのでとてもありがたい。


 不死鳥フェニックスのザックはチョコザ時代に俺との組手で身に付けた前衛としての能力と、各種チョコザ・フェニックスとしての特殊スキルでかなりの万能性を持っている。


 そしてこの俺(スーパー)モンクのルイが、臨時パーティー唯一の純粋な前衛職として、パーティーの盾としてカチモンの実力をいかんなく発揮する。


 ドラグナーのローゼが加入してくれた事で、不足していた前衛が補充されてバランスが良くなった。『アイテム効果増幅』スキルを持つダズー君もアイテムによる回復が見込めるため、全員が高い回復手段を持つ持久力に特化したパーティーだ。


 二つの大陸にまたがる大帝国の本拠地だけあって、ジョアーク城は地上七階、地下三階と広大なマップを持っている。さらわれた時魔道士のアルファと竜騎士のケインは、おそらく皇帝と共に最上階の玉座の間にいるのだろう。


 ジョアーク城の全マップは、ゲーム時代の記憶で完全に把握しているので、宝箱の回収率100%を目指す俺としてはとても残念なことながら、どうしても必要なレアアイテムのみを回収する事にしている。




 押し寄せる帝国兵を次々に蹴散らして、ひたすら最上階を目指す。ゲーム知識の補足として、ミンクが城内の案内をしてくれていることもあり、道に迷って無駄な時間を取られる事もなく、ついに最上階玉座の間の大扉の前にたどり着いた。 


 いよいよ裏切りの元勇者、ジョアーク帝国皇帝コムゲーン=ジョアークとの対決だ。竜騎士ケインがすんなりこちらに寝返るとも思えないので、竜騎士ケインと、もう一人、皇帝の右腕と呼ばれている騎士とも戦闘になるだろう。


 今回は思いがけない不測の事態で臨時パーティーなのが心許ないが、時魔道士アルファ救出の時間が惜しいので。最善を尽くしてこれで乗り切るしかない! 


「いくぞ!」


 俺の気合の一言と共に大扉を開けて中に飛び込む!


 いきなり迎撃されることは無く、玉座の間はシンと静まり返っていた。


「侵入者よ、よく来たな。予は強い者の事が好きだ。しかも、そなたら三人は美しい。そなたらを歓迎しよう。どうだ、我が配下に加わる気はないか?」


 玉座の間の最奥に座る皇帝コムゲーンが、驚くほど落ち着いた声色で俺達に語りかけてきた。


 玉座を見れば、左右に竜騎士ケインと右腕の騎士が直立不動で立っており、玉座の斜め後方には、時魔道士アルファも皇帝コムゲーンに寄り添うように立っている。


「アルファ!」


 ダズーの叫びはアルファに届いていないかのように、アルファは微動だにしない。

 

 皇帝コムゲーンは中性的な顔立ちをしており、男であるはずなのにひどく美しかった。ゲームで見たビジュアルよりも遥かに美しく、妖気が漂うかのようだった。

 

 だが、例えどんなに厚遇で迎え入れると言われても、大魔王デスジードの支配下に置かれている元勇者コムゲーン=ジョアークの部下になる気はない。


 仲間達と顔を見合わせて、声を揃えて言う。


「「「「「ことわる!!」」」」」

 

「そうか、それならば別に予は一向にかまわんぞ。『誘惑テンプテーション』!」


 なんだ!?


 頭が……ボーっと……して……

 

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