第123話 カジム=ワカーゲン大佐

「誰か助けてぇ!」


「はっはっはっ、どこに行こうというのかね」

  

 突然開いた最奥の間の扉!


 中から転がるように飛び出してきたのは、黒髪のおさげ髪の女の子だ!


 間に合ったか!?


「カジム大佐! やめろ! アルファ! 今の内に逃げるんだ!」


「小僧! 小娘に一目ぼれでもしたのか!? 機工士としての才能を見いだして引き上げてやった恩を忘れたか! 帝国を裏切るとただではすまんぞ! その魔弾銃を下ろせダズー!」


 俺達からは見えないが、扉の中では何やら争いになっているようだ。

 

 俺たちの姿を見付けて、こちらに転がり込んでくる女の子!


「助けてください! 私を逃がすために、中で悪い奴らにダズーが襲われているんです! ダズーを助けてください! お願いします!」

 

「君は?」


「私はアルファ。時魔道士のアルファ。目が覚めたら突然高い所から落っこちて、そんな私をダズーが受け止めてくれて……あぁ! こんな事をしている場合じゃないんです! 中できっとダズーがひどい目にあってる……お願いします! 私達を助けてください!」


 ゲームではここで中で頑張っているダズーとアルファのボーイミーツガールから始まるドキワクムービーが流れてくるんだよな。


 俺も探していたこの女の子アルファを巡っての、カジム=ワカーゲン帝国特務大佐を絡めた機工士ダズーとのやり取り。長尺ムービーながら多くのプレーヤーに泣けると絶賛されていたっけ。


 今、中でアルファを逃がすためにカジム大佐とやり合っているダズーは、13歳の孤児ながら天才オーパーツ魔導科学者として、機工士きこうしという職業ジョブとの相性もあって、特務部隊の補助役として今回ここオンカ遺跡にやって来ている。


 土の大輝石解放イベントで鍵となるのは時魔道士アルファなのだが、ここオンカ遺跡ではアルファだけでなくダズーも守りきらなければ、今後アルファが味方になってくれない。 


 二人の命を守りつつ帝国の特務部隊を倒すという護衛イベントは、始めからダズーがタコ殴りにされて命が危ない状態から始まるので難易度が高い。ゲームの時は何度もリセットさせられた程だ。そしてこのダズー君は若いので血気盛んなのだ。

 

 自分では一切回復手段を取らずに、ひたすら前に出て攻撃し続ける。死にたがりのシェンヒム大司教を思いだすなぁ。


 護衛イベントはホント嫌い!


 アルファもダズーもいい子だから好きなんだけどね。


 こうなる前にもっと早く助けに来たいのだけれど、残念ながらオンカ遺跡のダンジョンに入る為の鍵を持っているのがカジム大佐なので、どうしてもこのタイミングになってしまうのだ。


 おっと、こうしちゃいられない!


「みんな、行くぞ!」


「「「「おー!」」」」

 

 今回のイベントの立ち回り方はすでに打ち合わせ済みだ。後は実行あるのみ!


「僕は知っているぞ! 帝国を裏切っているのはカジム大佐の方だ! 今回ここで力を手に入れたら自分が新たな王になるつもりなんだろう!」


 パーティーメンバーにアルファを加えて最奥の間に突入すると、機工士ダズーがカジム大佐と闘いつつ舌戦も繰り広げていた。カジム大佐の悪行を暴露している。そんな事を言ったら必ず殺さなければいけない相手だと認識されてしまうというのに……


 ダズーは、周囲を大佐と部下に包囲されており、すでに息もたえだえの様子だ。全員が初めてシーラと出会った時のシーラやエリート帝国兵のように、前世でのパワードスーツのようなオーパーツ装備を身に着けている。


「ダズー!」


「アルファ! なんで戻ってきたんだ! 君は逃げてくれ!」


「シーラ頼む!」


「うん! ヒールザム!」


 シーラの唱えた回復魔法の光がダズーを包みこんだ!

 

 まずは何をおいても回復魔法でダズーのHPを全快にしておく。


「我々の邪魔立てをするとは何者だ! 私は未来のラミューダ王だぞ! そこにひれ伏せ!」


 カジム大佐がサンダーレーザーを撃ちまくる!

 

 部下達もそれに合わせて、各種魔導レーザーをぶっ放してきた!


 それを避けつつ突進した俺とイーリアスが路をきりひらき、ミーニャがダズーに接近すると、エリーたちの方へとダズーを放り投げる!


「ちょっと失礼するにゃ」

 

「うわぁ!」


 第一ミッション達成!


 イーリアスには後衛の護衛に回ってもらい、俺とミーニャで帝国特務部隊を次々に蹴散らす!


「おのれ〜!! ラミューダ島を掌握した私の力をなめるなよ! オーパーツ兵器『ラミューダ巨神兵』召喚!」


 でたな!

 

 カジム=ワカーゲン帝国特務大佐のジョブは時魔道士と召喚魔道士だ。ゲーム同様に追い詰められると次々に強力な『ラミューダ巨神兵』を召喚してくる。あっという間に五体の『ラミューダ巨神兵』を召喚しおえると、カジム大佐は巨神兵の肩に飛び乗った!


 ここまでの道中に出てきた『ロボット警備兵』とは段違いの強さを誇るラミューダ巨神兵。厄介な固定ダメージの各種レーザー攻撃をぶっ放してくる危険な奴らだ。


 ズカガガガ!

 ビカッ!

 バヒュン!

 ヒュバッ!

 ドゴン!


 膨大なHPを持つ五体の兵器との闘いは激しいものとなった。


 だが、順調に強化してきた俺達の敵ではない。最後の一体を倒すと、カジム大佐が青ざめた顔で叫ぶ。


「おのれー! こうなれば最後の手段だ! 魔装アーマー召喚!」


 頭部が無く、そこに乗り込むタイプの巨大な魔装アーマーを召喚し、カジム大佐が合体した!

 

 巨体のくせに素早く動きながら、全身にある砲門からレーザーを撃ちまくってきた!


 だが、この最終形態になった時には、通常展開されているボス耐性の中で唯一、暗闇耐性だけなくなるのだ!


「シーラ!」


「うん! 青魔法……」


 シーラが青魔法スーパーフラッシュを唱えようとした瞬間、シーラ、アルファ、ダズーの三人が頷きあった!


「「「アルティメットユナイトスキル、メガメガ発動!!!」」」 

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