第121話 チャイナドレスEV

 ドワーフ王との腕相撲に勝ったら、なぜかとつぜん始まったうたげ。なにかにつけて飲む機会をうかがっているドワーフらしく、こちらの依頼を話すのは宴の席での事となった。


 ドワーフ王国の名物料理『コンソメスープ』『逆さ筍の蒸し焼き』『地底湖ヤマメのムニエル』『地底黒豚の丸焼き』『ドワーフの火酒』などで歓迎してもらえたのは良かったのだが、ドワーフの火酒が強すぎて、カサンドラ以外は誰も呑めなかった。


 料理はどれも初めて食べる味だったが、どれもこれも深く濃い味わいでとても美味かった。「ドワーフ料理は美味い」という新たに知り得た食の情報になんだかとても嬉しくなる。


 やはり美味いものを食べると、体の奥底から生きている! と感じる事ができてとても幸せな気分にひたれる。エリー、イーリアス、ミーニャも実に楽しそうであるし、美味しいものに出会ったシーラの笑顔に癒される。


 ドワーフの面々がほろ酔いになった頃に、ようやくドワーフ王とまともな会話を始めることができた。一にも二にもまずは酒。ドワーフ文化恐るべし。

  

「光の戦士よ、我らドワーフは、火の大輝石と土の大輝石の恩恵に日々感謝しておる。風と水、そして火の大輝石の解放、誠に大義であった! どうか土の大輝石の解放もよろしく頼む。我々ドワーフもできる協力はなんでも惜しまずにやらせてもらおうぞ」


「それでは、世界最高の鍛冶職人とうたわれた、ドワーフ王ドワジカシフ様とドワーフの皆さまににお願いがあります。一つはアダマンタイトのインゴットを、アダマンタイト繊維に加工してください」


「おお、アダマンタイトの加工か。アダマンタイトを加工する事は我らドワーフにとっても誉れである。喜んでやらせてもらおう」


 よしよし、予定通り。


「もう一つは、聖竜王ファーヴニルが残した『聖竜の牙』『聖竜のひげ』『聖竜の角』『聖竜の革』『聖竜の鱗』で新たな武具を造ってください」 

 

 俺がそうお願いすると、室内が急にシーンと静まり返った。


「ルイよ、今なんと言った?」


「ここにいるシーラの為に、聖竜シリーズの装備を作ってください」


 俺がもう一度言い終えて、インベントリから聖竜素材をずらりと取り出して並べると、ドワーフ達が涙を流して再び室内が静まり返った。

 

「……聖竜素材といえば、我々ドワーフの神代の祖先が扱ったという伝説の素材。それを一目見ることができるだけでも生涯に一度どころではない幸運というもの。このエレーナ=スゲーナ=ドワジカシフ、誠心誠意、魂を込めて武具造りに関わらせていただこう」


 武具造りに燃え上がったドワーフの皆さんの歓待は凄まじく盛り上がり、宴を通り越して祭りとなった。飲めや歌えの大騒ぎとはこの事をいうのだろう。


 盛り上がった結果、温泉で楽しいひとときを過ごしたのはまた別のお話である。


 翌日から早速ドワーフ秘伝の精錬技術で、アダマンタイトのインゴットをアダマンタイト繊維に加工してくれた。


 アダマンタイトのインゴットは、アダマンタイトゴーレムとアダマンタイトタートルを倒して二つ手に入れているので、今回線維化をお願いしたのは一つだけだ。インゴットのサイズが大きいので、これだけで数人分の防具を造ったり強化する事ができる。


 もう一つのインゴットは、他の素材が揃った時に武器に加工してもらう予定だ。こちらもその時がくるのが楽しみである。


 聖竜素材シリーズは、なにしろ言い伝えでしか存在を知らなかったので加工には時間がかかるそうだ。どういったものにするかはしっかりと打ち合わせをして頼んであるので、完成が待ち遠しい。



 


 アダマンタイトの線維化に成功したので、聖竜シリーズの完成を待ちわびつつ、「ラリホー!」と別れの挨拶をしてドワーフ王国から浮遊大陸へと移動する。


 一度不死鳥フェニックスのザックに乗って飛空艇ミューズ号に戻り、ミューズ号でナイヤチ村を目指した。  


 このイベントが終われば、ついに『カッチカチの盾モンクカチモン』の最終形態へと進化する事ができる。オラわくわくすっぞ!

 

 飛空艇ミューズ号をナイヤチ村の近くへ停めてもらい、パーティーメンバーと共にチャイナ萌えチャモ爺さんことシロー爺さんの家へと向かった。


 家の入り口のドアノッカーを鳴らす。

 カンッ! カンッ! カンッ!

 

「ごめんくださ〜い! こんにちは~! シローお爺さんいますか〜?」


「その声はルイさんか? 鍵は開いておるぞ、入って来なさい」


「お久しぶりです。アダマンタイト繊維を手に入れたので敵の防御無視の攻撃も防げる様にチャイナドレスを強化していただけますか?」

 

 気のはやる俺は挨拶もそこそこにインベントリからアダマンタイト繊維を取り出し、神の腕を持つといわれる裁縫職人でもあるシロー爺さんにお願いごとをした。

  

「おお、アダマンタイトの繊維化に成功したんじゃな! これはこれは、腕がなるわい。よかろう! 早速とりかかるからチャイナドレスを脱ぎなさい」 


 チャイナドレスをシロー爺さんに手渡すと、「集中して作業するので、夜にまた来なさい」と言われたので、村の近くで不死鳥フェニックスザックの性能チェックなどをしつつ、狩りをしてシロー爺さんへのお土産として様々な料理を作った。


『カチモン』の進化祝いの料理となるので、エリーとカサンドラ、そしてミーニャが腕をふるってくれた。食べるのが楽しみだ。


 


「よし! できたぞい!」


 夜になって再びチャモ爺さん家へ行くと、ちょうどチャイナドレスの強化作業が終わったようだ。


「一から造ったのではないので、アダマンタイト繊維がチャイナドレスの性能に馴染むのにはしばらくかかるじゃろう。鉄を鍛えるかの如く、敵の防御無視の攻撃を受ければ受けるほどチャイナドレスは再生機能も相まって強くなる。最後には、防御無視攻撃を一切受け付けなくなるじゃろうて」


 そう言ってシロー爺さんはチャイナドレスを俺に手渡してくれた。


 チャイナドレスEVエボリューションを手に入れた!


 よっしゃー!!!

  

『チャイナドレス』の性能とは「物理防御力は体力に完全に依存すること」であり体力の数値が物理防御力としての値となるのだ。


 つまり今の俺の体力のステータスは725なのでチャイナドレス物理防御力は+725になるのだ。そんなぶっこわれた数値の装備品は世界中探してもどこにもない。


 物理防御力の算定式は体力+装備品の物理防御力なので、725+725=1450となる。その上、唯一の弱点ともいえる防御無視攻撃をも今後鍛えれば封殺する事ができる。


 更に『チャイナシューズ』の「魔法防御力が物理防御力と同じ値になる」という性能のおかげで、通常はモンクのとても低いステータス精神の数値に大きく影響されてしまう魔法防御力も、自動的に1450となってしまうのだ!


『三しゅの神器』ならぬ『三チャの神器』のもう一つ、『チャイナリボン』の効果で全状態異常無効のおまけ付き!

 

 最高物理防御力!

 最高魔法防御力!

 全状態異常無効! 


 カチモン。ゲットだぜ!!



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