第116話 友の死
仲間たちに呼びかける俺の声もむなしく、凶弾がシーラに吸い寄せられているかのように突き進んでいく!
ドパパン!
『
「・・・・・・!」
ザックだ!
「ザーックッ!!」
あれは即死攻撃の
なんとかシーラは無事なようだが、間に割って入ったザックはどうなる!?
あのタイミングで割り込めたという事は、瞬間移動並みの素早さで仲間を守る黒チョコザのスキル『チョコガード』を使ったのか!?
俺はダッシュでザックと仲間の元に駆けつける。ザック、ザックはどうなった!!
「ぷえ〜」
チョコがチョコヒールをザックに使い続けている。
シーラが泣きながら蘇生魔法を使っている。
何度も、何度も繰り返し。
エリーも歯を食いしばり、必死に※①『仮死』状態からHPも共に回復し蘇生する、スキルによる『調合』を繰り返している。
『フェニックスの尾羽』と『おとめのチッス』を調合した『いのちのチッス』や、『フェニックスの尾羽』と『エリクシル』を調合した『リインカネーション』を使いザックに与える。
ザックに駆けつけた俺も、すぐさまスキル『蘇生』を使う。最大限にオーラを練り込んだ『チャクラ』もだ。仲間たちそれぞれで、何度も復活をこころみる。
しかし、ザックはピクリともしない。
頭ではわかっている。
ここはステータスのある世界。ザックは※①『真死』の状態だ。
もう手遅れなのだ。
嫌だ!
チョコザの森でのザックとの出会いからの数々の出来事が走馬灯のように俺の脳内を流れていく。
嫌だ!
ザックは俺の友達なんだ!
消えないでくれ!!
カシャーン!
硬質なガラスが繊細に砕けるような澄んだ音をたてて、ザックが光のエフェクトと化していく……
ザックが! ザックが消えていく……
突然シーラから白く輝くオーラが噴き上がり、シーラの顔付きも変わった。
「え!? うん、お父さん、わかったよ。あとにつづけば良いんだね」
トランス状態となったシーラが、涙をこらえながら詠唱を始めた。
「現世での役目を終え、大いなるマナへと
あたり一面に広がっていた光がシーラの両手に集まってゆく!
集まった光は結晶となり、大人の手の平くらいの大きさの輝く
ザックだった光が……
これがサックの魂だというのだろうか……驚くほど透き通り、輝いている。
トランス状態が解けたシーラがふらりと倒れてきた。
俺は涙をぬぐいながら、慌ててシーラを抱きとめた。疲れ果てて意識がないが、今までの例からすると少し休めば大丈夫だろう。
「シーラありがとう。これでザックはなんとかなったんだろうか?……お疲れ様」
仲間たちを守ると大口を叩きながら、ザックを死なせてしまった……俺はなんてダメな奴なんだ……
ザックを喪った悲しみに、ぼうぜんとしていると、サクッと何かがこめかみに突き刺さった。
「痛い! って、チョコ! なにするんだよ!」
チョコが俺をくちばしでつついてくる。
「ぷえっ! ぷえ〜!」
「チョコが勝手にあきらめるな! って言っているよ。それにザックが死んだのはルイちゃんの責任じゃない。前にルイちゃんが私に言ったよね。人の手の届く範囲には限界があるって。私達は常に命の危険がある事を覚悟の上でやっているんだもの」
「エリー……」
「ルイちゃんは神様じゃないんだから、敵の命懸けの方が上手だったって事だよ。ルイちゃんが全てを背負いこむ事はないよ。私達みんなでもっと強くなっていこう」
泣きはらした赤い目をしながら、エリーが俺を励ましてくれた。手に握りしめた
そうだ……まだこの
そうだ……諦めるのはまだ早い!
他の仲間達も自分の心も苦しいだろうに皆で励ましあってくれている。
まずはこの『迷宮の古城』ダンジョンから無事に帰ろう。
チョコに乗ったエリーが、気を失っているシーラを抱きながらではあるが、ダンジョンからの帰還は大きな問題もなく、飛空艇ミューズ号へと帰り着いた。
船室にシーラを寝かせ、俺たちもダンジョンでの疲労からすぐに眠りに落ちた。
翌朝になるとシーラも回復して起きてきたので、ミューズ号の外へ出て、聖竜王ファーヴニルを召喚してもらった。
「ファーヴニル、この
『それはザックの魂であり、肉体の情報が詰まった小輝石だ。ザックが復活できる方法も一つだけある』
――――――――――――――――――――――――――――
※①
行動不能状態の三種類解説。
HP2=『瀕死』
時間経過による状態異常『瀕死』の自然回復可能(ゲームではバトル終了後なら行動可能だが、そのまま次のバトルを行うとバトル中は、また行動不能となる)。ポーション等のアイテム、魔法でHPを回復する事で『瀕死』状態を回復可能。
HP1=『仮死』
時間経過では回復不可能(バトル終了後も蘇生しない限りずっと仮死状態のまま)。蘇生アイテムや蘇生魔法で蘇生(=『仮死』状態からの復活)可能。
HP0=『真死』
数秒後に身体を構成しているマナがほどけ、おおいなる源のマナへと光となって還っていく。
蘇生不可能。
いつも応援していただきありがとうございます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます