第99話 極熱魔王
ソーア大火山の最深部の大扉を開けると、
整えられた祭壇には高さ三メートル程の大輝石が空中に浮いていたが、光は鈍く六割は輝きを失って黒く変色していた。
よく見ると大輝石の周囲には魔法陣がびっしりと埋め尽くされており、そこから半透明の黒い鎖のようなものが何本も大輝石へと伸びていた。
広い祭壇の
「チチチチチ! 罠をはり防備を固めておったのに、部下からの報告は信じられぬ速さでこちらに近づく貴様らの事が矢継ぎ早にきおった。死天王の内、二人の魔王を倒したという実力は
本体であるツーヘッドドラゴンのソージーンに寄生している、醜悪な顔をしたドルイドンのタンショ部分が口を開き、俺たちに語りかけてきた。ここまでの流れはゲーム通りだな。
「我が名は、極熱魔王ソージーン=タンショ! 名誉あるこの名を覚えて死んで
極熱魔王ソージーンの巨体が立ち上がった!
二本の長大なドラゴンの首が、それぞれわずかに揺れながら、ぐぐっと伸びた!
その二本の首に挟まれた奥では、ドルイドンのタンショ部分が醜悪な顔でニタリと笑っている!
くっ!
もうダメだ!!
「ぎゃははははは!」
笑いを我慢できない!
「ルイちゃん!?」
「ルイ!? 何かの精神攻撃を受けたのか!?」
「ぷぷぷ! ふぅふぅ、いや大丈夫、なんの攻撃も受けていない。安心してくれ。ぷぷっ!」
掲示板が! 掲示板が悪いんだ!
事もあろうに、この極熱魔王ソージーン=タンショの名前と長く伸びた二本の首を足に見立てて、『
数多くのプレイヤーが何度も全滅させられて痛い目にあわされる事となる極熱魔王ソージーン=タンショ。この鬼のように強い魔王様は、それ以来プレイヤーに不名誉なあだ名で呼ばれ続けている。
「き、貴様! なにを笑っておるのかわからんが、不愉快だ! 死ね!!」
おっとまずい、気を引き締めてなんて自分で言っておきながら、大笑いしてしまうなんて!
見た目は同じだが、火属性の左の竜頭、氷属性の右の竜頭からそれぞれブレスが吐き出され、混じり合った極太ブレスが俺達に襲いかかる!
「雪だるま君!」
「まかせるのデス!」
『永久氷床のかけら』を装備した雪だるま君の出番だ!
雪だるまの専用装備『永久氷床のかけら』の効果で、雪だるま君は常時あらゆる熱に由来する攻撃を、その膨大な冷気で防ぐ事ができる!
先頭に躍り出た雪だるま君が、氷炎のドラゴンブレスを一身に浴びるが、圧倒的冷気の障壁を展開して微動だにしない!
スペードのエースの形をなぞらえたような陣形をしいた俺達!
先頭に雪だるま君、次列に俺とイーリアスが少し開いて並び、三列目にチョコとザックが俺達より更に外に横並び、四列目中央にシーラ、五列目の中央よりにエリーとミーニャが並ぶ。歩兵の軍団で行う
ソージーンの必殺のブレスを耐え抜いたぞ!
すぐに二列目に下がった雪だるま君、代わりに一列目に踊り出る俺とイーリアス!
間髪入れずに放たれたタンショの状態異常魔法攻撃を、先頭の俺達がむしろ自分から当たりに行くことで、積極的に受け止める! 俺とイーリアスには装備の力であらゆる状態異常攻撃は効かないのだ!
元々装備していた『炎のリング』と、更に決戦前に入れ替えておいた装備、俺は『吹雪のリング』とイーリアスは『氷の盾』で単独の氷と火の属性攻撃にも対処可能だ。
戦闘開始直後から歌い始めたエリーの『いやしの歌』が効いてきた。
一定の時間経過ごとにHPを自動で回復してくれる、この歌スキルは水の大輝石の加護を得た時に覚えたものだ。白魔法『オートヒール』と同じ効果でありながら、更にこちらは二度まで重ねがけができる。
「オクちゃんきて! オクトロス召喚!」
「だいかいしょう」
ゴォォォ!
オクトロスが召喚され、『大海嘯』で極熱魔王を攻撃する。更に頭上に留まって敵の物理攻撃を八回までダメージカットしてくれるのだ。
大海嘯は水属性攻撃だから、氷属性の右の竜頭ソージーンには効果が薄いようだが、それを差し引いても防御だけでも十分に役に立つ。
なにせ相手は推奨レベルに達していないHPの低い魔道士系ならば、一撃で死ぬほどの馬鹿みたいに強い
極熱魔王はタフさも並ではない。せっかく本体のソージーンにダメージを与えてもタンショが次々に回復していってしまうからだ。早めにドルイドンのタンショを取り除く必要がある。
俺達の防御体制が固まったところで、予定通りにソージーンの二本の首を牽制しつつ、奥まったタンショを集中的に狙う!
しかし、いやらしいことに、ソージーンに寄生しているドルイドンのタンショは魔道士タイプであり、遠距離攻撃の代表である魔法攻撃に対して高い耐性をもっているのだ。
だが、
イーリアスは、
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