第89話 水の大輝石 (第三部第一章終わり)
聖竜王ファーヴニルの『
水の大輝石がひときわ強く輝くと、とても温かい透き通った声が心に直接響いてきた。
『我が勇者よ、そして光の戦士達よ。良くぞ海月魔王を倒してくれました。あの魔法陣によって、世界の源の一つたる私の力が吸い取られ、この星に生きる生命は危機に瀕していました』
柔らかな光がシーラに降り注ぐと、意識を失っていたシーラが目を覚ました。
『水の力を宿す、水の大輝石を解放してくれたあなた達の名前を教えてください。』
水の大輝石に問われて俺達は名乗っていく。
「俺はモンクのルイ!」
「吟遊詩人のエリーです」
「
「シーラでっす!」
「ぷぇ〜!」
「ぷぇ!」
「チョコザのチョコとザックね」
『ルイ、エリー、イーリアス、シーラ、チョコ、ザック。改めて感謝をします。ありがとうございました。そして水の勇者ケオルグよ、よくぞ魔を打ち払い困難を成し遂げてくれました』
「水の大輝石よ、水の巫女メアリーを……」
『お待ちなさい、今解放しましょう』
再び強く水の大輝石が輝くと、水の大輝石の中に保護されていた水の巫女メアリーが、ケオルグの足元へと横たわっていた。
水竜人のメアリーはシーラと同じ様にほとんど人間と同じ姿だが、眉間から短い一本角が生えていた。見た目の年齢は俺と同じ15歳位だろうか。未だ眠っているが、その姿は儚げな面影ながら大層美しい。
「メアリー!」
ケオルグが抱き上げるがまだ目を覚まさない。
『安心しなさい勇者よ。巫女は長らく眠っていた為まだ目覚めませんが、もうしばらく待てば目覚めるでしょう』
『しかし、危ないところでした。海月魔王の侵食が強くなってきたのでどうしようもなくなってきた時に、巫女の祈りと力を合わせて過去に干渉し、200年前の勇者を水の巫女の祠に転移させ保護したのが功を奏しましたね』
「なっ!? それでは、俺は本来なら200年前にクラーゲンに!?」
『そうです。敗れた後クラーゲンの餌食になっていました。しかし巫女のたっての願いと、風の大輝石の復活もあり、一時的に抵抗が弱まって大きく侵食を許す事になってしまいましたが、勇者の命を救うことができました。危険な賭けでしたが、成功しましたね』
なんと!?
時をかけるカエルだったのか!?
それは俺も知らなかったな。ゲームでの水の大輝石解放ムービーでそんなのは無かったからな。びっくりだ。
ケオルグ一人では前回の二の舞いになるとふんで、光の戦士たち、つまり俺達が合流するこの現在まで眠らせておいたのも良かったんだろうな。戦力を集中する事が出来たわけだ。
『しかし、世界の危機はまだ続いています。何者かがこの世界の根源的な力を宿す、残り二つの大輝石を封じその力を吸い取っているのです』
『火の大輝石は火の国のマグマ溢れる火山の中に。
土の大輝石は世界の中心にある洞窟の奥深くに。
それぞれが世界の安定に力を尽していましたが、今はその活動がほとんど止まっています』
『水の大輝石は世界の生命の成長と浄化の役割を果たしています。あのまま全て汚染されていたら、二度とまともな生命はこの星に生まれてこず、今ある命も枯れ果てていた事でしょう』
『光の戦士達よ。どうか残り二つの大輝石も救ってください。火と土の大輝石もそれぞれ重要な役割を担っています。まだ余力が少ない為わずかですが、水の大輝石の力をあなた達に分け与えます』
水面の煌めきの様な、清らかな輝きが水の大輝石から発せられた。
『成長と再生の加護です。この力も使って、どうか世界を崩壊から救ってください』
『まだ一体小神殿内に魔に汚染された者が残っています。排除してもらえたら、その後は海底神殿に守護結界をはり直し、力の回復をはかります。光の戦士の道行きに幸あらん事を』
光がやみ、水の大輝石からの声も聴こえなくなった。どうやら話は終わったようだ。
「皆、本当に世話になった。お陰で宿敵クラーゲンを討伐し、メアリーと水の大輝石を取り戻す事が出来た。心から感謝する。ありがとう。それと、悪いんだが俺はここに残って、メアリーが目を覚ますのを待たせてもらいたい……」
ケオルグが頭を下げてお礼を言いながら今後のことを語りかけてきた。
「ああ、まだ時間は十分残っているからアダマンタイトタートル討伐は俺達だけで大丈夫だよ。目を覚ましたらメアリーと200年分幸せになってくれな!」
「すまん、恩に着る。落ち着いたらいずれメアリーとも話をしに会いに来てくれ。もし俺の力が必要な時は遠慮せずに言ってくれ。その時は命懸けで協力しよう」
パーティの皆もケオルグと口々に別れを告げて、大神殿を後にした。
帰り道の途中で、第十一の『
時間はかかったが、水の大輝石の解放後は厄介な回復をしなくなるので、倒しやすくなるのだ。とはいえ、流石の硬さで適応桃の効果の残り時間が後一時間になってしまった。急いで潜水艇ロシナンテ号に戻らなくてはならない。
新弟子のジュゴン君もちゃんと生き残ってくれてて、討伐を手伝ってくれたので良かった。彼には事情を話したので、この後はケオルグのいる大神殿か、自分の『
全ての宝箱は回収し終えたし、もうお暇しても問題無いかな。ここのお宝のメインは大神殿にあった『水神の胸当て』だ。『〜神シリーズ』を全て集めると凄いことになるから今から楽しみだ。
チョコザに乗って急いで第一の小神殿まで戻ると、潜水艇ロシナンテ号に乗り込んだ。そのまま浮上して飛空艇ミューズ号へと乗り換えると、再び大空の旅だ。
今回の戦いでイーリアスのレベルがカンストしたので、いよいよ転職だ。名イベントだから今から楽しみだな。
―――――――――――――――――――――――――――――
以上で第三部第一章『水の大輝石』は終わりになります。
「面白かった!」
「続きが気になる!」
「今後どうなるのっ・・・!」
と思っていただけましたら
目次のページ
https://kakuyomu.jp/works/16818093077952549761
のレビューから、作品への☆☆☆評価を是非お願いいたします。
面白かったら星3つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちで、もちろんOKです!
作品、作者のフォローや、
応援♡もいただけると本当にうれしいです。
応援コメントも随時お待ちしております♪
執筆の励みになりますので、よろしくお願い致します♪
明日はいつもより大分短い文字数ですが、休憩がてら間話を投稿致します。
その後もう一話いつもの間話を挟んでから、第三部第二章『火の大輝石』を投稿開始します。
最後までお読みいただきありがとうございました!
いつも応援していただき誠にありがとうございますm(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます