第87話 脅威の二本指

 シーラが青魔法『落とし子ダンス』を踊り、クラーゲンの動きを一瞬止めた!


 その一瞬の隙をつき、ザックのチョコリュードライバーで触手をかいくぐりクラーゲン本体に肉薄したタイミングで、チョコの『チョコ・ラ・エービー』でイーリアスと位置を入れ替える!


 待ち構えていたイーリアスとケオルグが吠える!


「「アルティメットユナイトスキル『時の冒険クロのだいぼうけん』発動!」」 


 イーリアスが練り上げた暗黒パワーを込めて、魔剣フォルバガードでクラーゲンの本体を右上から左下へと袈裟斬けさぎりで斬る!


 ズザシュ!

  

 次の瞬間には『チョコ・ラ・エービー』で入れ替わった勇者ケオルグが、逆手に持った聖剣コンフロントで右下から左上へと勇者最強の一撃で逆袈裟斬ぎゃくけさぎりに斬り上げる!


「「魔剣斬✕勇者最強斬聖魔ストラッシュクロス!!」」


 ズバン!

  

 闇属性と聖属性が、エックスに斬り裂かれた交点で反発しあい、クラーゲンの本体中心を消滅させていく!


「ガッギッグブブブブブブ、わ、我の再性核が!!」


「手応えあり!」

 

「やったか!?」




「おのれ! 勇者共め! グブブ、こうなれば最後の手段よ!」


 クラーゲンがクラゲの体の本体と触手の付け根部分に突き刺さっていた、二本の禍々しい何かを抜き取ると消滅した本体中心部に突っ込み吸収していく。


「まさか! 今のは邪神の指か!?」


 ケオルグが驚愕して叫んだ。


「そうとも! グブブブブ! これを完全に取り込めばわれわれではなくなってしまうが、致し方なし! 邪神バウバウ様! 我に力を!」


 ズズズズズ


 クラーゲンの中心から湧き出てきた真っ黒な闇にクラーゲンの全身が包まれていった。ドゥゴン、ドゥゴンと、脈動するかのような気持ちの悪い音があたりに鳴り響く。


 闇が再び中心に吸い込まれていくと、それまでのクラーゲンと全く違うシルエットが浮かび上がってきた。体長も倍に伸びており、無数の触手は十本に統一されて、禍々しく太く強靭になっていた。


「ば、馬鹿な、その姿は神話において海の破壊王とまで呼ばれたクラーケン!」


 水の勇者ケオルグが震えながら叫ぶ。

 

「グブブブブ、グブブブブ、グブブブブ! なんだ笑いが止まらぬな。まあ良い、死ね! グブブブブ」


 クラーケンへと変貌を遂げたクラーゲンが十本の死触手を振り回して攻撃してきた!


 ソフトに払い落とす余裕など最早ない!


 鋼鉄のムチの様な触手の高速連撃を俺、イーリアス、ケオルグの前衛三人でガツガツと弾き落とす!


 しまった!


 後ろに四本も抜かれた!


 キン! キン! キン! キン!


 召喚獣オクトロスの物理攻撃カットが働いて、後衛へのダメージは無かったが危ないところだった。


 ゲームシリーズ『ファンサ1』と『ファンサ3』にはクラーケンが出てきたが、『ファンサ5』にはクラーケンは出てこないはずだ。それなのに現れたということは……確実に俺の知っているゲームとは違って来ている。


 一つわかった事は俺が攻撃しても増殖はしないようだという事だ。『無限に増殖する』という性質が変わってしまったのだろうか。ともあれ、あの高速連撃はヤバイ!


「シーラ! オクトロスの効果が切れたらすぐに召喚し直すんだ!」


「うん! わかった!」


 再び触手の連撃を繰り出してきたクラーケン!


 ガガガッ!


 高速連撃に少し慣れたが、またもや後衛に二本抜かれてしまった! 

  

 キン! キン!


 召喚獣オクトロスの物理攻撃カットが働いて、後衛へのダメージは無かったが、役目を終えたオクトロスは星霊アストラル界へと返って行った。しかし、すかさずシーラが再び召喚する!


「オクちゃん来て! オクトロス召喚」


「たこですみません」


 ドスン!

 

 オクトロスの召喚時初回攻撃は即死攻撃の『たこですみません』だった。


 少し期待したがやはり死天王の第二形態ともなるとクラーケンに即死攻撃は効かないようだ。だが防御で活躍してくれればそれで十分だ。


 ブシュ〜!


 怒ったのかクラーケンが『すみ』を吐いてきたので、俺とケオルグが前面に立ち防御に徹している間に、くらやみの状態異常にかかってしまった者をシーラ達の魔法で治した。


 更に触手の高速連撃が襲いかかってきた!


 だが流石に目も慣れてきたぞ!


 ズバン!

 

 俺は目の前に迫ってきた触手の一本をカウンタースキル『拳盗断』で1メートル程斬り落とした!


 斬り落とされた触手の先っぽは、しばらくグネグネとしていた後唐突に、ボン! と、爆発した!


 ぐお!?


 こういう仕組みか!?

 だが増殖では無いのなら、やりようはある!


 俺が受けたダメージをザックに回復してもらいながらも、俺は思考を続ける。斬った後に……どこかへ。


「ケオルグ! 『丸呑まるのみ』したらどうだ!?」


「む、いけると思うぞ! 水の大輝石の恩恵で我が胃袋は異次元空間と繋げることができる!」


「よし! 頼む!」


 迫りくる触手の一本を、イーリアスが渾身の力で斬り落とした瞬間に、シュバッ! っと長く伸びる舌で巻き取ると、ケオルグは触手の先端をスキルで丸呑みした。


 どうだ!?

 

 頼むから爆竹を口に詰め込まれたカエルのように、中から破裂してくれるなよ!?


「問題無い! いけるぞ!」


 良かった! ケオルグの胃袋の勝利だ!

 そしてクラゲの時と違って新たに触手が生えてきていない! 触手の嵐に対して光明がみえたか!?

 

 だが、未だ十本ある触手のほんの先端を処理したに過ぎない。クラーケンの巨大な本体は無傷のままだ。

  


 

  

 ――――――――――――――――――――――――――――


 聖魔のルビはアバ○と読んでも良いかもしれないw

 ク□ノとカエルのエ○クス斬りでも同じ効果かもw


 クラーゲン→クラーケン

 濁点(指二本)が取れました(*ノω・*)テヘ


 皆様お待ちかねの第二形態へ!


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