第53話 メタル○○○○狩り

 進化も終わったから次は一気にレベル上げしなきゃな!


 ファンサ名物のメタル狩りだ!


 その前に、諸々の確認と準備をしないとな。


 飛空艇ミューズ号と合流した俺達一行。乗り込む前に、飛空艇技師のシュドゥに話しかけた。


「シュドゥさん。いずれ俺達は海月魔王クラーゲンを倒しに海底に行かなければならないんだけど、当然生身で泳いで行くのは無理があるよね。海底に行ける乗り物を何か造れないかな?」


「海底じゃと!? うーむ、空とは違って水が入ってこぬようにせねばならんし、船体の骨格は水圧で壊れないように頑丈な物で造らねばならん。動力は······飛空艇用の予備の動力セットで転用すればいけるかの······いや······ブツブツブツブツ」


 早速、潜水艇製造の為のロードマップを考えてくれている。ありがたいね。できる男の横顔はかっこいいぞ! 頑張ってくれ!


 

 

 ポクポクポク・チーン!


「ルイよ、まず一番の問題は骨格じゃ! これを一から設計開発するとなると、実用化まで五年はみておいて欲しいのう」


「五年! ソウダ! コレヲ使えばいけるんじゃなイカ!?」


 知っていたとは言えないので、大根役者魂で最高の演技を披露しつつ、インベントリをガサゴソ漁って目的の物を取り出す。


 タラララッタラ〜!

 

「ジャイアントタートルの甲羅ぁ!」


 インベントリから取り出したのはメカイデカで討伐した時にドロップした『ジャイアントタートルの甲羅』だ。背中側だけでなく、側面や下側もちゃんと残っている状態だ。要するに中の肉が無くなった状態である。


 それにしてもでかいな。甲羅のサイズは長さ約20メートル位か。こんなのよく入るよな、インベントリの不思議さよ。隣の飛空艇ミューズ号より一周り大きい位かな。


「これは······巨大な亀の甲羅か! 確かにこれを使えば水圧に耐えることも問題なくできそうじゃ! 頭には、操舵室を誂えて、手足と尻尾の穴に推進装置を組み込めば······むうぅ、そうなると止水をどうするかじゃな。これにも妙案があるかの?」


「ジェリーを倒すとドロップする『ジェリー粘液』を使ったらどうかな?」


「おお! ジェリーか! モンスター素材じゃな。大量に必要じゃから討伐が大変じゃが、その手も有効じゃのう! すぐに解決策を思い付くとはルイ! お主は天才か!」


 いや〜!

 ゲームでシュドゥに依頼された素材をこちらから言っているだけだから、天才はあなたですよ~!


 褒められて悪い気はしないけどね! 


「後は潜水・浮上に使う浮遊石をどうするかじゃな。以前取ってきた浮遊石は、全て飛空艇用に使用しているからのう。最後の手段としてはミューズ号の浮遊石を取り外して兼用で使うかじゃな」


 俺は再びインベントリをガサゴソすると、目的の物を取り出した。


 タラララッタラ〜!


「ふゆうせきぃ〜!」


「なんじゃ、お主はまだ隠し持っておったのか! あの時多く取ったのじゃな。お主も悪よのぉ〜!」


 おしゅど様こそ!

 わっはっはっはっ!


 他に何かあったっけかな?


「これらが全て揃いさえすれば、モロダジャナ王国の儂らの飛空艇のドックに帰れば数日で作れるぞい! つまり後はジェリーからドロップ品を大量に集めればよいだけじゃ!」


 よしよし。計画通り!


「それじゃあレベル上げを兼ねてジェリー狩りをしよう。ここから東に行けばジェリー海岸という所があるから明日の朝から出発しよう」


 仲間達にそう告げて休憩した後、森で最低限のレベル上げをした。ジェリー海岸で即死する訳にはいかないからな。その結果、俺とエリーはレベル19に、チョコザ達はレベル10になった。 


 翌朝、飛空艇の船室でいつもの朝の儀式を終わらせると、ジェリー海岸へと向った。飛空艇で四時間程飛ぶともう着いてしまった。早い。


 早速ジェリー狩りだ。このジェリー海岸は色々なジェリーが出るのでレベル上げにもってこいだ。カラフルなジェリー達を倒してドロップ品を集めていると、15回目の戦闘でお目当ての『メタルジェリー』が出てきた!


 ファンサシリーズではお馴染みのこのメタルジェリーは、倒すとすぐにレベルアップする程の経験値の塊なのだ。


 だがメタルジェリーは大変素早く、まぐれ当たりしない限りそもそもダメージを与える事ができない。しかも硬すぎるため与えるダメージは常に1なのである。


 なぜかあらゆるスキルをはじいてしまうので、スキルでの攻撃さえミスしてしまうというトンデモモンスターなのだ。


 だが、俺には秘策が有る。


「イーリアス、聖剣(偽)『ラナロック』って持っているか? なければ名刀(偽)『まさめ』でもいいし、この間使っていた『エクスリバー』でもいい」


「全て持っているぞ。急にどうしたのだ」


 ああ、やっぱり持っていたか。流石は刀剣コレクター。


「今すぐ装備をどれかに変えて、メタルジェリーに攻撃してくれ!」


 イーリアスが装備を『まさめ』に変えてメタルジェリーに斬りかかると、刀がすっとメタルジェリーに吸い込まれていった。しかもアクセサリー『鬼面』の効果で、連続二回攻撃だ。


 これこそが偽物刀剣シリーズの必中・必ダメージ1の効果だ。ステータス表記上は『まさめ』の物理攻撃力は234も有るのだが、悲しいかな(偽)なので表記通りのダメージは与える事ができない。必ず1なのだ。


 通常の戦闘では、はっきり言って役に立たないので、ラスボス相手に忍者のスキル『投げる』で大ダメージを与えるくらいしか役割がないかと思われていた。投げるとなぜか攻撃力はちゃんと参照されるからな。

 

 だがメタル系統相手にはこの偽物刀剣シリーズでの攻撃が最善の手となるのだ。


 そもそもレベルが95も有るイーリアスからすれば、攻撃さえ当たるのならメタルジェリーなど雑魚でしかない。あっという間に倒してくれた。


 おっ、流石はメタルジェリー。レベルが上がった! この調子で俺達をパワーレベリングで引っ張り上げて欲しい。それにしても平氏装備に刀姿だと絵になるな。凄くかっこいい!


 次々に出てくるカラフルなジェリーを倒し続けていると、一番のお目当てである『はぐれメタルジェリー』が出てきた。


 こいつはメタルジェリーより素早く、更にすぐに逃げる。しかも火、氷、雷の上級攻撃魔法を乱打してくるので、ある程度のレベルがないとこちらが戦闘不能に陥ってしまうのだ。レベル上げに来たはずなのに、逆にやられてしまってはかなわない。


 しかしこちらにはイーリアスがいるのだ。


イーリアスせんせいお願いいたしやす」


「なんだその話し方は? 変なやつだな」


 イーリアスが華麗に『まさめ』を振るうと、あっという間に『はぐれメタルジェリー』は光るエフェクトを残して消えていった。


 お! レベルが2も一気に上がった。



 


 イーリアスによるメタルジェリーの乱獲で、目標にしていたレベル50を、わずか三日で達成できてしまい、俺とエリーのレベルは51となった。


 潜水艇に必要な素材も十分に集まった。


 次は桃狩りに行こう。

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