二章 二年後

第164話 二年後


 ー都内ー


 ミーンミーンミーン


「ぁっつー。早く涼しい室内に入りたいね~。」


 あの八岐大蛇との戦いから二年後、月兎は未だにサラリーマンと術士の二足のわらじで活動していた。


 ピピピピピー


 ガチャ


「はい。まどかちゃん?」

『はい、先輩。すいませんが午後からの会議なんですが中止になったので今日は直帰でいいらしいです。』

「了解。…どう?新人の世話は?」

『大変ですよ…。もう先輩には頭が上がりませんね。』

「ははは。新人なんて誰だってミスするもんだ。広い心でな。」

『はい、わかってますよ。では、お疲れさまでした。』

「はいよ。お疲れ。」


 ピ


 ピピピピピ


 ガチャ


 自分のスマホに会社の後輩であるまどかから電話がありこの後の予定である会議が無くなったため直帰となり早く帰って寝ようと思っていた月兎だったがまた電話があり何だと思いながらバイブにより揺れるスマホをみるともう一つのスマホに電話がかかってきた。


「はい。」

『すいません。月兎さんの連絡先ですね。』

「あぁそうだ。依頼か?」

『はい。つい先程警察に東京郊外にある取り壊し予定の商業施設から声がきこえるとの通報があり警察がいくと巨大な切り傷が建物内にあったそうで我々に任務の依頼がきました。』

「なるほど、分かりました。自分がいきます。」

『ありがとうございます。では場所を送りますね。』

「了解です。」

『では。』

「では。」


 ガチャ


 八岐大蛇との戦いの爪痕は二年たった今も残っており特級も源の弟をのぞき四人が戻ったが未だに源の兄は本調子ではなく巫女も未だに車椅子だった。

 幹部の残り一枠も未だに決まっておらず術士の数が減ったことにより、どこも人手不足になっていた。月兎がいた支部も無くなり協会本部に吸収されていた。

 さらに月兎は八岐大蛇の頭を捕えるのに活躍をしたため二級に昇級していた。そのため先ほどのように希に協会から直接依頼が来るようになっていた。


 ピコン


「お、場所が来た。…良し、行くか。」


 しばらくして協会から現場の情報が送られてきたので確認をしながら月兎は現場に向かった。


 ー東京郊外ー


「ここか。」


 夜になるまで周りでご飯を食べ夜遅くまで時間を潰した月兎は取り壊し予定の商業施設にやってきた。


「何かいるような気配はしないけどな。」


 そう言いながら奥に行くと


「ここが例の傷跡か。」


 協会から言われた傷跡を見つけた月兎は傷跡を眺めた。


「でかい傷跡だな。かまいたちとは落武者じゃなさそうだな。…ここまで大きいのはめんどくさいけどなぁ。」


 そう独り言を話していると


『おい、月兎。気配がするぞ、近付いて来るかもな。』


 と月兎が宿している妖怪、夜刀神の破月から言われた。


「戦いの前に正体を知りたいな、良し。孫悟空、分身で敵を見てきてくれ。」

『畏まりました、ご主人様。』


 そう月兎が頼んだのは破月以外の宿したもう一体である孫悟空を偵察を頼んだ。


「今のうちに準備するか。」


 そう言いながら月兎が出した武器は八岐大蛇との戦いから更に成長した「緋熊の戦斧」(ひぐまのせんぷ)である。元の能力である「再生」と「回収」、八岐大蛇との戦い中に得た「攻撃力上昇」、「熊の実体化」の他に「炎属性」、「巨大化」の能力をこの二年の間に手に入れたのだった。


「あるじ様。」


 月兎が戦闘の準備をしていると偵察に出ていた孫悟空の分身が戻ってきた。


「どうだった?」

「は、牛頭がいました。」

「牛頭かぁ~。力強いからめんどくさいんだよな。まぁ殺るか。」

「案内します。」


 こうして孫悟空の分身に案内された先には牛頭がいた。


「ブモォォォォォォォォォ!!」


 月兎を見つけた牛頭は斧を持ち月兎に飛びかかるが


「おりゃ!」


 月兎は左腕を変化させその左で「緋熊の戦斧」を持つと思い切り振り抜いた。牛頭は防ごうとしたが、


「ブ、ブォ?」


「緋熊の戦斧」を止めることはできずそのまま一刀両断されてしまった。


「良し、仕事終わったな。帰って寝るか。」


 あっさりと牛頭を倒した月兎は帰ろうとすると協会のスマホにメールが来た。


「ん?何だろう?」


 また依頼かと月兎がチェックするとどうやら明日協会本部に顔を出してほしいと言うないようだった。


「なんかやな予感がするけどいかなきゃ駄目か~。」


 今から明日が億劫になる月兎だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る