第四十三章 80万とはまた微妙な・・・

 黄金のレイとの激闘を終えて、わしらは遅延ちえが待つシェルターへと戻っていた。途中に数々の暴徒が現れたがわしらの格闘術で薙ぎ払っていった。もちろんじゃが魔法や黄金のレイからもらったオーラは一度も使っていない。

 そうして暴徒たちを次々と倒していると一人の暴徒に目がいった。それは黄金のレイが化けていた篠宮しのみやだった。髪はくすんだ青色になっており、服もボロボロになっている。


 わしはそんな篠宮の横を通り過ぎて先へ進んだ。



「・・・・・・そういえばさ・・・」

「なんじゃ?」

「・・・・・・見たの?」

「何を?」

「だから・・・・・・見たの?」

「主語が足りんぞ。見たかだけじゃ会話にならんじゃろう」

「~~~!! もういい!」

「ちょ、美紀みき! ぐえっ! おい、勝手に単独行動するな!! というかわし、歩けんのんじゃけど!? ちょっと戻ってきて!! 神様仏様美紀様!!」


 わし一人を置いて一人でシェルターに帰ろうとする美紀をわしはとりあえず懇願することにした。

 美紀は「はぁ・・・」とため息をついた後、わしのところに戻ってきてわしに肩を貸してくれた。ふう、何とかなったわい。これで———


「ぐえ!」


 その時、突然腹に痛みが!!美紀が突然わしの腹を殴っていたのじゃ。わしはせき込みながらしゃべる。


「ゲホッ! ちょ、美紀。何してくれるんじゃ」

「イラっときたから一発返しただけよ」

「何発もやる気じゃったのか!?」


 美紀はそうブツブツ言ってはいるがちゃんとわしのことを運んでくれた。まぁさっき見捨てられかけたんじゃが・・・

 しばらく歩いていると美紀がボソッとつぶやいた。


「・・・遠くない?」

「・・・悪かった。巻き添えにならないように結構遠くまで離したからな」


 黄金のレイと戦ったところから歩き始めてちょうど20分くらい経っていた。戦闘の被害が出ないようにちょっと遠くに飛んだのじゃが・・・


「・・・・・・いや、待てよ」


 おかしい。いくら巻き添えにならないように遠くに飛んでいったからってここまで遠くまで飛んでいくことなんてあるのか?いや、わしは体感でも1kmほどしか飛んでいないはず。


 まさかと思い、わしは辺りを見渡してみる。周りには暴徒と化した人たちが遠くで徘徊していたが特別何か変なことはなかった。だが、見渡す景色には見覚えがあった。


「ここは・・・・・・まさか・・・」


 ———わしの黒雷が降った後であろう焦げた地面。


 ———爆発した後のようなクレーター。


 そう、ここはわしと黄金のレイが戦闘していた場所なのだ。


 もちろん、わしらは数十分かけてここから離れたつもりだった。だがわしらはここから全然動けていない。


———もしや誰かの魔法や魔道具か?


 そう考えていた時、わしらにめがけて何かが投げ込まれた。わしは反射的に手の甲でそれを弾いた。


 わしが弾いた謎の物体は地面に落ちた瞬間、爆音とともに爆発した!どうやら爆弾だったようだ。

 わしは美紀をかばうように前に出る。


「美紀、下がっておれ」

「でもまだ回復が・・・」


 美紀が止めようとしてくるがまたもやわしらにめがけて小型爆弾が投げ込まれた。さっきまでと違い数が多い。

 わしは投げ込まれてくる爆弾をすべて手の甲で弾いた。先ほど手の甲で弾いても爆発が起きなかったのを見るとこの爆弾は地面に触れる、もしくは魔法による攻撃を受けると爆発するものだと見た。

 わしの考えを察したのか美紀も先ほどもらったオーラを使わず、すべて弾き飛ばしている。


 しかしこのままではジリ貧だ。どうにかして投げ込んでいる者を探さないといけない。


 その時、爆弾を投げ込んでくる方向にうっすらと人影が見えた。


「そこか!」


 わしは指を鳴らし、黒雷を発動。人影が見えた辺り一面を黒焦げにした。


「ぐああああああ!!」


 その時、どこからか悲鳴が聞こえた。それと同時に爆弾が投げ込まれなくなった。安心したわしは黒雷を放った場所に向かう。そこには謎の覆面男がいた。


 もちろんわしはこのような知り合いは知らない。かといって今まで生きた中で会ったこともない。とにかく奴の目的を知らなければならん。


「お前は何者じゃ? なぜわしらを襲う?」

「・・・・・・」


 わしは覆面男に問いかけた。先ほどの黒雷の爆風を受けたからか気絶しているようだ。


「次射~?」


 遠くから美紀が駆けつけてくる。それにしてもわし、頻繁にみんなのことを置いていくよな・・・


「って誰この人?」

「わしも知らん」


 美紀が覆面男を見て少し戸惑っている。どうやら美紀の顔見知りでもないようだ。わしは手足を拘束させた後に覆面男を起こした。そして先ほどと同じ質問をした。すると・・・


「フフフフ・・・」


 嫌な笑い声だ。続けて覆面男が話す。


「お前たちを倒せば報奨金がもらえると聞いたんだ」

「報奨金?」

「ああ、そうだ。 お前たちは裏社会の中ではかなり注目されているんだ。 お前たちを倒せば大体80万円ほどくれると言われたんだ」

「80万とはまた微妙な・・・」


 そこは1000万円とかじゃないのか? なんとも言えない表情をしているわしらを察したのか覆面男は続けて話す。


「もちろんそれだけではない。 デストロイ・サンダーの一員にもしてくれるという噂だ」

「デストロイ・サンダー・・・・・・!!」


 美紀がその単語に反応する。それは黄金のレイが所属している組織の名前だ。わしはついでに気になっていたことを質問する。


「デストロイ・サンダーとはそもそもどういう奴らなんじゃ?」

「デストロイ・サンダーは古来最強の魔族、デストロイヤーと同じ時代に生きた5強の魔族のオーラを持っている集団のことだ」

「そのデストロイヤーのオーラを正和が受け渡されたということか」

「ふぅ・・・・・・どっちにしろ俺はお前たちの暗殺に失敗したんだ。 すぐにデストロイ・サンダーのメンバーがやってきて俺を始末するだろう。 早くここから離れた方がいい」

「なぜわしらにそこまで教えるんじゃ?」

 覆面男は「クククク・・・・・・」と笑いながら話す。


「ただ、お前たちが俺と話している間に後ろから殺されてしまうなんていう面白くないオチを避けたかっただけだ」


 変わった奴じゃな・・・ ふと、そう思った。


 わしらは少し経ってからその場を後にした。戻るまでの間、ろくな会話をしなかった。





「二人とも! 無事か!?」


 わしらがシェルターに戻ると遅延が焦った様子で近づいてきた。時間を見てみるとわしがここを出てから数時間は経過していたらしい。


「悪かったのう、遅延。いきなり飛び出して」

「本当だよ、シェルターに結構な暴徒がやってきたんだぞ。結構疲れたわ・・・」


 どうやらわしが黄金のレイと戦っている間、シェルターに暴徒が襲ってきたらしい。結局遅延のゴーレムたちで何とか持ちこたえたらしいが。


「それで遅延、どうじゃ?」

「ああ、君たちが外にいる間いろいろ調べておいた」


 そういいながら遅延がパソコンを立ち上げる。それにコウシュミレートのデータが入っているUSBを挿す。


「見た感じ、生き残りはほとんどいないな。とりあえず暴徒になっている原因がわかったよ」


 遅延がこちらにパソコンの画面を見せる。そこには解析されたデータが映っていた。


「この街の空気中に謎の原子がある。それが人の体内に入り込み、脳にまで達した瞬間理性を失っているらしい」

「新たな原子か?」

「うん、それも人工的に開発されているものだ」


 遅延は険しい顔でさらに話す。


「これを開発したのはこの町の出身者、爆弾ばくだん 毛呂二もろにという研究者らしい」

「爆弾 毛呂二・・・そいつがこの町を変えた元凶か」


 しかしなんか名前が気になる・・・なんだよ、爆弾 毛呂二って。 まるでこの後、爆弾をもろに受けるみたいじゃないか。 さすがにそんなことはないよな。 名前を付けた奴が預言者でもない限り。


「この毛呂二という研究者は妄言癖があったらしくてね。結構研究者の中では有名だったらしいよ。『この世界を我輩の物にしてやる!!』とか言っていたそうだね」


 とりあえずヤバい奴だということは理解できた。


「どうやればこの町の人たちは元に戻るの?」

「この町の中心部にある市役所に行ってその中にある動力装置を破壊すれば元に戻るはずだ」

「動力装置か・・・」

「おそらくこの毛呂二もその動力装置にいると思われる。そうなったら次射と美紀には前線に出てもらうけど・・・」

「かまわん、いいか? 美紀」

「えっ・・・う、うん」


 美紀は少し頼りなさげな返事をした。黄金のレイを倒した後からずっとこんな感じじゃ。なんともなければいいが・・・


「もし次射の力による破壊が難しかったらこれを使ってくれ」

「これは?」

「’雷撃弾’・・・ 僕が開発した高威力の爆弾だ。起爆のスイッチはこちらで操作する。君は動力装置にこれを貼ってくれればいい」

「わかった」


 そういいわしは遅延から雷撃弾を受け取る。わしの手のひらくらいのサイズの小型爆弾だが遅延が言うのじゃから威力はとてつもないだろう。


「今日のところは休もう。明日、ここを出発するぞ」


 謎にリーダーシップを執りだした遅延に笑いながらもわしらは休むことにした。



「・・・・・・美紀、どうしたんじゃ?」

「少し早起きしただけよ」


 夜、わしが一人コウシュミレートでそとの様子を見ていると美紀が起きた。物音を聞くからにおそらくまだ布団をかぶっているようだ。わしは美紀の方に視線も向けずに画面を見続けていた。


「どうせ嘘じゃろ?ほんとはさっきまで起きてたくせに」

「なんでそんなに細かくわかるのよ。そこまで来たらキモイわよ」

「急な暴言やめい」


 結構傷つくんじゃからな!!


「そういえばとても今更じゃがおぬし、親にはなんて説明してるんじゃ?」

「お父さんはいつも通り泊まり込みで働いててお母さんも今出張中なの。明後日くらいには帰ってくるでしょうけど」

「そうか」


 少し話して黙って・・・また少し話して黙って・・・それが永遠に繰り返される。


 このシチュエーションにわしは懐かしく感じた。

 正直、高校に入るまではそこまで話すわけでもなかった。学校では美紀は友達と遊び、わしは一人教室にいる。休日でも美紀は友達と遊び、わしはただ盆栽を集めていた。


「ねえ、次射」

「ん?・・・っておい!」


 突然、美紀がわしの背中に寄りかかってきた。わしは取り乱しながらも平静を保とうとしていた。

———忘れていた・・・!!


 普段の戦闘中はあまり気にならないが実はこいつ、なかなかスタイルがいい。このわしですら正気を保てないほどに。


「離れろ」

「もう、つれないな」


 わしが言うと意外にも美紀はあっさりとわしの背中から離れていった。そしてわしはその時初めて美紀の方を向いた。


「まぁ、今日はこのくらいにしといてあげるね」


 薄いパジャマを着て、小悪魔のように微笑む美紀の姿があった。

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