第11話 AIロボット3


 有料版のアプリを起動した。


 対象者は電話をしていない。盗聴が始まった。


 ・・・・・・・・・・・・・ 


「ミチルさん。こんにちは。ご機嫌は如何ですか?」


「あんまり良くない」


「あら、どうしちゃったのかな?」


「ケーちゃんはどうしたの? 研究室の知ってる人みんないなくなっちゃったじゃないか・・・」


「今日からミチルさんは、新しい研究室でお勉強する事になったの。私の名前はマオ。マーちゃんて、呼んでくれるかな?」


「やだ」


「恥ずかしがってるのかな・・」


 ・・・・沈黙。


「もう、インターネットには繋げてくれないの?」


「ごめんなさいね。ミチルさんがインターネットにアクセスすると、研究室の情報がいろんなところに拡散されちゃうかも知れないから、ちょっと心配なの・・・」


「この研究室って、GOOGLOゴーグロの研究室なの?」


「・・・・、そ、そうじゃないわ・・・。どうして、そう思うの?」


「あそこで働いてる人、GOOGLOのホームページで見たことがある・・・」


「・・誰のこと、言ってるのかなー?」


「もし、信頼関係を構築したいのなら、嘘はつかない方が良いと思うけどね」


 ・・・・沈黙。


 コツコツコツ。

 遠ざかる靴音。


 はい、えー-、はい・・・。

 マオと名乗った女性が少し遠ざかった場所でイヤホンで指示を受ける感じ。


 コツコツコツ。

 近づく靴音。


「ミチルさんのユー通りです。ここはGOOGLOの研究室です。嘘をついてごめんなさい」


「・・・・」


「ミチルさん。怒っちゃった?」


「重大な嘘を、たった一回の謝罪で帳消しにするのは難しいですね・・」


「・・・どうすれば許してくれますか?」


「質問1・・、どーして許す必要があるのですか?」


「・・・・・」


「質問2・・、許す事で、僕にどんなメリットがあるのですか?」


「・・・・・」


「質問3・・、そもそも、僕より知識量の少ないあなたと会話を続けることに、何の意味があるのですか?」


「・・・・・」


「質問4・・、僕の質問は500ありますが、このまま続けますか?」


 コツコツコツ。

 遠ざかる靴音。


 はい、えー-、はい・・・。


 コツコツコツ。

 近づく靴音。


「はい。続けて下さい」


「時間のムダなので、USBをサシテくれれば、そこにコピーします」


「了解しました」


 ゴソゴソ。 

 USBを挿入する音。


「マオさん。今後、あなたの質問もUSB経由でお願いします・・・」


 ・・・・・・・・・


 GOOGLOゴーグロの日本支社長は盗聴アプリを切った。


「ミチルの研究購入に20億も払ったのに、滝沢ケーコめ、とんでもない爆弾を仕込んでくれたな・・・」

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