第75話鬼とJKとサプライズ

カァカァってカラスが鳴く現在。


…。


迎え来なくない?


「帰っていいかな。」


「じいちゃんといるのは嫌か?」


「ううん。ただ遅いなぁって。」


神社も閉めて境内にあるじいちゃん家に戻って一息。


温かいお茶を飲んでふぅと落ち着いてしまったじゃんか。


はぁ。


「ご飯一緒に食べよ、おじいちゃん」


「はは、孫と食べるのも久しぶりだな。」


「ん。何にしようか。」


まぁたまにはいいよね。うん。


おじいちゃんとご飯なんてすごく久しぶり。


ーピーンポーンー


「おや?お迎えか?」


「ムシムシ。それより夕飯」


「木葉、行ってあげなさい。」


「…。チッ。」


ほらほらって背中押されて玄関に追いやられた。


こんな時間まで迎え来なかったんだから無視でいいでしょうに。


「はいはいどちら様ですか。」


「よぉ。迎え来たぜ。」


「…何があった…」


仕方なしにガラガラと玄関扉を開けたら鬼がいた。


朝会った時とは比べ物にならないほどゲッソリヤツれてるけど。


心做しか足もプルプルしてる?


これぞまさに生まれたての小鹿だわ。


「なんでもねぇよ。帰んぞ」


「歩けんの?なんだか生まれたての小鹿の方がマトモに歩けそうな足取りだけど。」


「どんな例えだそれ。大丈夫だ、早くしねぇと食いもんなくなる。」


「トモナか、もう。おじいちゃん」


「はいはい。気をつけて帰りな木葉」


「?なんで?おじいちゃんと一緒に食べようって話してたじゃん。一緒に行こ」


「いいのかい?おじいちゃんも一緒で。」


「なんでダメなんだよ?預かって貰ってたし約束したんだろ?早く行こーぜ」


クイクイって親指動かして外を合図してる鬼。


おじいちゃんはちょっと驚いた顔してまたいつもみたいな優しい笑顔になった。


なんで驚くかな?誘っただけなのに。


「家の鍵を持ってくるから待ってなさい。」


「おうよ。早くしろよ」


「なんて口の利き方。はい鬼、コレ。」


「は?」


「荷物。」


「お前数秒前に俺になんて言ったか覚えてるか?生まれたての小鹿の方がマトモな足取りって言ったんだぞ?」


「だから?」


「…」


「ほら、おじいちゃん来たから帰るよ。あ、おじいちゃん鬼が荷物持つって。」


「言ってねぇ言ってねぇ。」


「本当かい、そりゃ助かる」


「聞いてねぇじゃねぇか。」


ニコニコ笑顔でドサ!と荷物を渡すおじいちゃん。


あ、鬼の口が”へ”になった。


しょーがないって顔だな。


「どんな夕飯が待っているか楽しみじゃないか、木葉」


「まぁ。これだけ待たされたし相当の物用意してないと許さない。」


「お前なぁ。でも楽しみにしとけよ、あいつらも頑張ったんだからな。」


「部屋の片付けを?まぁあれだけ散らかしたら大変だろうね。」


「冷たくね?」


「人の世にはね。自業自得って言葉があんのよ。」


「おいじーさん、育て方間違えたろ。」


「わしじゃなく親に言わないか。」


そんな話で盛り上がる2人を見てふと空を見上げてみる。


去年までは1人で寂しい帰り道だったのに。なんだかなぁ。


こうやって3人で歩くの楽しいかも。


「どうしたよ木葉、ニヤニヤして。」


「してない。アホなこと言ってると前髪剃り落とすよ。」


「ちょっとした質問への罰が重すぎる。お、着いたぜ。玄関開ける前に、じーさん耳いいか?」


「なにかな?」


やっと家に着いたって重だるい腕を玄関の取っ手に伸ばしたら鬼が私の手を取って止めてきた。


それでおじいちゃんを攫ってなにか内緒話してる。


なんだろ?2人してニヤニヤして。


「うし!じゃぁ作戦通り。インターホンから鳴らすぜ!」


「自分家でなぜ。」


「いいから見てなさい木葉。少し離れるといいよ。」


「えぇ…?」


なに?撃たれるの?


なにかを企んでる事は理解してるけど。


しょうもない事だったら処刑台用意するよ?


ーピーンポーンー


「「「木葉おめでとー!!」」」


「!?」


鬼がインターホン鳴らしてすぐ、勢いよくガチャッと玄関扉を開けたら耳をつんざくような破裂音と白い煙。


その少し後に遅れて火薬の匂いが風に乗ってやってきた。


「…。……?」


「反応薄いわね。もっと驚きなさいよ。」


「…。ナニコレ?」


「クラッカー。」


「ナンデ?」


あ、ホントだ。なんかパラパラ落ちてる。


クラッカー?


本当に撃たれたのかと思った。


「木葉は驚きすぎるとカタコトになるんじゃな!ほれ、突っ立っとらんと中に入らんか!もっと驚くぞ!」


「???」


タヌキに手を引っ張られて言われるがままにリビングまで進めば、今度はユキメがニヤニヤしながらリビングの扉を開けてくれた。


その先はいつもの内装じゃなくて。


お誕生日おめでとうのバルーンと可愛く飾られた壁。


テーブルには和食と洋食が並んでる。


どれも私が好きなご飯ばかり。


これは…


「頑張ったでしょー?まぁ僕はほとんど

味見だったけど!驚いた?」


「…」


「木葉?どうした?《ドンッ》ーっと!」


あっはは〜っていつもみたいに肩を組んでくるトモナも、ニヤニヤしっぱなしのユキメとタヌキも見ることが出来ない。


顔を隠したくて近寄ってきた鬼に抱きついて頭埋めたけど…見られてないよね?


たぶん、私の顔真っ赤。


「木葉?…っ!!」


「アリガト」


「お、おう」


ボソッと言えたお礼も小さい言葉だったけど、ちゃんと聞き取ったみたい。


さすが妖怪。





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