第48話鬼とJKと罠

宣戦布告に近い大胆な告白を受けて数日。

長が里に帰るって言ってきた。


「ほんじゃぁの小娘。わしは一旦帰るぞ。」


「はいはい。これ道中食べなよ。」


「餞別か?あれだけ無情な事をしでかす娘と思えんわい。」


失礼発言だな、まったく。そんな長を玄関先で長にお見送りをするのは私と鬼とタヌキと…あれ?1人足りなくない?


「なぁー長、なーんで僕縛られてんの?」


「里守が2人も抜けてどうするんじゃ。帰るぞトモナ。」


「えーっ!だったらイツキもっ!!」


「じゃーな、元気でやれよ。」


「たまに帰るからのう、トモナ」


「見捨てるの早いな。」


ヤダヤダヤダ!ってすっごい地団駄踏んでる。

あれが江戸時代から生きてる妖怪の見せる姿なのか…


まぁトモナだからね、うん。


「やかましいわたわけが!!トモナお前、里守続ける変わりに婚姻せんって話じゃろ!!」


「え?そうなの?」


「だってそっちの方が楽しそうだから。でも今は木葉のとこの方が楽しい!!イツキが戻れば問題解決でしょ!?」


「ざけんな。長はお前を指名なんだトモナ。諦めろ」


しっしっ。て手を振る鬼に覚えてろよって啖呵切るトモナ。


仲良いなぁ、まったく。


「抵抗しおってからに。ほれ、小娘の渡した餞別でも食いながら戻るぞ。」


「ちぇーなんだよ。てか木葉、何渡してくれたんだ?」


「そういや。中身なんだよ?」


あれって指さす鬼と中身を見て固まる長。

その様子にタヌキは興味持ったのか長の横に並んで一緒に中身を見だした。


「…木葉、長の事怒っとるんか?」


「は?怒ってないけど。」


「何渡したんだ?」


「『食べれば食道破裂!?激辛煎餅!』っぷ!あっははは!ありがとう木葉、僕これ大好きなんだ!」


「わしに死ねと言うんか…」


なに、そんな落ち込んで。


死ねって思うなら直接言うけど?


まぁトモナは喜んでるしいいか。


「ん。たまに遊びに来なねトモナ。それじゃ。 」


「そうだね、週7で遊びにくる!」


「それは毎日じゃな。」


タヌキがなんでやねん!みたいにツッコミ入れてトモナは元気よく肩を落としたままの長を連れて帰って行った。


いやぁ嵐だったなぁ。


―――


それから時間は過ぎ夜。


「これでよしっと。」


「木葉?何してんだ?」


夕飯を作ってる最中の鬼がいつの間にか私の後ろに立ってた。


それに続いてタヌキもテクテク歩いてきて首を傾げてる。


なにって、防犯だよ。


「なんじゃ?この紙は?」


「触っちゃダメだよタヌキ。それ破魔札だから。」


「ぬぉ!?!なぜそんなものを貼っとるんじゃっ!!」


「要塞にでもするつもりか?」


「まぁ。何かしら起こると予想して。」


「なんじゃそりゃ」


うへぇ。って口曲げた鬼とその鬼の足にしがみつくタヌキ。


触らなければいいんだから危なくないでしょーが。


さてと、仕掛けも済んだことだしご飯にしよっと。


ーバッシャァァァ!!!


「きゃぁぁ!?!」


「うお!?なんだ!?」


「リビングから悲鳴じゃ!!」


「ほら、早速かかった。」


耳をつんざくような悲鳴と水が落ちる音。それにビックリした2人がバタバタとかけ足に向かって勢いよくリビングの扉を開けた。


「何があった!?」


「いっったぁぁい!!なにこれ!?何の水!?」


「うぬ?あれは雪女のユキメではないか。何しとるんじゃ?」


「何してるとかいいから助けなさいよ!!なんなのまったく!!」


「それはこっちのセリフ。人ん家に不法侵入してなんなの?」


「はぁ!?」


倒れて身動き取れない銀髪ロン毛の白着物の女の目の間に仁王立ちで立つ。


顔色悪い妖怪ね。さっき雪女って言ってた?そりゃ血色悪いか。


「なんの用かって聞いてんの。」


「イツキが惚れた女を見に来ただけよ!!ついでに驚かそうとしたの!!」


「へぇ。それで?」


「勝手に入って悪かったわよ!!イタズラしたかっただけ!!」


「…ん。」


「こ、木葉?」


痛い痛いって半泣きの雪女。

今までの誰よりも素直に謝ってきた…


こういう妖怪もいるんだ。


「お風呂案内するよ。立てる?」


「肩貸しなさい。」


「仕方ないな。行くよ。」


「ぬぅ?今回はお咎め小さいのう?」


「あいつ体調悪いなら言えよな、まったく。診察券でも出しとくか?」


「…聞こえてるから鬼。下手に歩かない方がいいよ。数日再起不能になるから。」


「ヒッ。わ、わいは木葉について行く!!」


「ん。」


またまた。って軽くあしらう鬼を無視してリビングを出れば瞬時にギャァァァ!!!って悲鳴が聞こえた。


だから言ったのに。


「じょ、成仏するんじゃぞ…イツキ。」


「ばーか」






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