第18話 街中での乱闘騒ぎ
街に入って冒険者ギルドに向かっていると、荷馬車の馬とすれ違うがスレイプニルで漆黒のソレイユはその馬達より1,5倍の大きさがあり脚も8本ある為、物凄い目立っていた。
「アステル。皆がこちらを見てるわ。やっぱりスレイプニルは目立つわね」
「この大きさだから、驚いて見てしまうよね」
「なるべく急いで冒険者ギルドに行きましょう」
少し急ぎ足に冒険者ギルドを目指すと、対向から箱馬車が騎士を連れてやって来た。余り気にせず乗馬のまますれ違う瞬間、騎士が突然抜剣して、
「無礼者!」
と言って俺に向かって剣を袈裟懸けに振り下ろして来た。咄嗟に俺は〝身体強化〟を掛けて剣を受け止めるが打撃の勢いは殺せず吹き飛ばされる。
それを受けて、ソレイユが棹立ちになり、「ヒヒィ〜〜ン!」と鳴きながら騎士に攻撃を加え様としたので、
〘ソレイユ!やめろ!〙
と念話を飛ばすと、ソレイユは前脚を着地させて「ブルルッ」と鳴きながら右前足で
「エリナベル、このまま冒険者ギルドに行って、職員に絡まれている事を伝えて来てくれ」
「アステル。大丈夫なの?」
「大丈夫だ。それより、君が巻き込まると色々と大事になるから彼奴等が近寄って来ないうちに行ってくれ」
「分かったわ。直ぐに誰か来て貰うから」
そう言って、エリナベルはヘクトルと冒険者ギルドに向かった。取り敢えず、エリナベルの安全は確保出来そうなので、ソレイユに近付き首を撫でながら鎮める。
すると、下馬して俺を攻撃した騎士がこちらに依ってくる。それに合わせて残りの3人も馬を降りてこちらへやって来た。
「貴様!子爵様の馬車を見下ろしおって不敬だぞ」
そう言ってまた上段から俺に斬り掛かってくる。俺は腰に差している短剣を抜き振り下ろされた剣に刃を合わせる。鍔迫り合いとなり力負けしてないと感じると、騎士の太腿を前蹴りして後ろに下がる。
「ぐはっ」
騎士は装備していた太腿の鎧部分陥没して痛みで
「おいおい。警告も無しにいきなり斬りつけるのがこの国の流儀なのか?殺気まで飛ばしやがって、殺す気なら殺される覚悟も出来ているんだろうなぁ」
俺は剣に魔力を纏わせて蹴りを入れた騎士を睨みながら威圧する。蹴られた騎士は、
「き、貴様、こんな事仕出かして…うっ」
残りの3人は抜剣してこちらに刃を向け威嚇してくる。街中でしかも中央での乱闘騒ぎに見物客が続々と集まって来る。そして2人同時に俺に迫って来て剣を振り上げたと同時に短剣を左手で持ち縮地を使って、左側にいる騎士の
「ギャアアアッ」
「ウグッ」
俺は攻撃を終えると縮地を使いソレイユの前に戻り攻撃態勢を維持しながら残りの一人を睨みつける。膠着状態になっていると群衆かき分けて衛兵を引き連れた騎士がやって来た。それと同時に冒険者ギルドからもエリナベルが職員を連れてやって来た。騎士が、
「双方、剣を収めよ!往来での乱闘騒ぎは如何なる理由があろうとも禁止されている。速やかに剣を収めよ!」
俺が剣を収めて、残りの騎士も剣を収めると、箱馬車からでっぷりと太り貴族服を来た男が降りて来た。
「我は、グズマン子爵である。我の配下がこの我に不敬を働いたそこの輩に制裁を加え様としたところ、逆に襲い掛かって来たのだ」
それを聞いた領内警備の騎士が、
「グズマン卿、貴方先月も馬車で子供を轢いてご領主様に懲戒処分を受けたばかりでは無かったでしたか?しかも貴方、帝国貴族ではないでしょう。子爵とはいえ陪臣貴族とのすれ違いに下馬の必要は無い事はご存知ですよね。まさかすれ違う時に、下馬しなかった事を不敬と言っているのでは無いですよね」
「そっ、それは……。しかし我より高い位置で見下ろす行為は不敬であろう」
「はぁ。君。経緯を話してくれないか?」
その警備の騎士は俺に話を振ってきたので、
「はい。この子はスレイプニルのソレイユと云って、俺の従魔です。額に従魔紋があります。従魔だから乗馬して移動した方が落ち着くと思い乗馬のまま冒険者ギルドへ登録の為に移動していたら、箱馬車をすれ違いざまにそこに倒れている騎士が斬り掛かって来たのです。警告も無しに。一応従魔の入場に際してギルドマスターからこの書状を貰っています。それとこれは俺のギルドカードです」
警備の騎士は書状とギルドカードを確認する。そしてそれらを俺に返すと、
「ほう。なる程な。彼の言い分を証言出来る者はいるか!」
警備の騎士は、群衆を見渡すと何人かが手を上げて、
〈俺は、立派な馬が通り過ぎようとしていたのでみてました〉
〈俺もです。無礼者と言ってその騎士が突然その冒険者に斬り掛かったのを見ました〉
「それで、君はどうしたんだ」
「身体強化を使い、剣をまともに受けて落馬しましたが、ソレイユが暴れない様に宥めていたら、尚も斬り掛かって来たので反撃しました。その騎士が俺の反撃を受けて倒れると、そこの2人が斬り掛かって来たのでそれも反撃してこの通りの状態です」
「良く分かった。それでは君は正当防衛だな。罪には問えない。良し!取り敢えず怪我人を教会に運んでやれ!」
警備の騎士が後ろを振り向き、衛兵に指示を出す。いつの間にか衛兵の人数が増えていて後ろには人が運べる荷車を持って来ており、それに怪我をした騎士を乗せて移動して行った。そしてその騎士は子爵に向き直して、
「グズマン卿、一緒に来て頂けますかな?手荒な事はしたくありませんが抵抗すると云うならお相手して捕縛することになります」
「ぐっ、分かった。」
子爵は項垂れて馬車に乗り込み、衛兵2人とその警備の騎士も馬車に乗り込むとその場から移動した。
こうして、集まった群衆も散らばって行く。
俺はソレイユに、
「我慢してくれてありがとう」
と感謝すると、
〘人間の掟に従わないとね〙
「理解してくれて助かる」
エリナベルが側に来て、
「従魔登録急ぎましょう。まだ、ヘクトルもセラスも登録していないから」
「分かった。早く済ませてしまおう」
俺達は冒険者ギルドへ急ぐのだった。
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