13
ミアが行方をくらましたという連絡が入ったのは、翌朝のことだった。
「さっきノヴィツカヤ捜査官の上司から直接連絡が来て、彼女が所持していた通信機器の位置情報が追えなくなったそうよ。滞在しているホテルに確認させたところ、部屋はもぬけの殻で、宿泊代相当のキャッシュだけが残されていた」
僕はベッドの上に横たわったまま、私物のグラスウェアを掛けて部長と通話をしていた。視界には、自室の天井と重なるようにして部長のアイコンが浮かんでいる。
「なら、捜査同行の件はどうなりますか?」
その問いに部長からは「結論が出るまであなたたちは自宅待機」という答えが返ってきた。
そして通話が終わる。
相手のアイコンを含むUIが視界から消え、見えるのは天井の壁紙だけになる。
僕は数分間そのまま天井を見つめたあと、音声操作で再び通話アプリを立ち上げ、今度はコディを呼び出すことにした。
「
視界に「呼び出し中」の表示が現れ、すぐにそれがコディのアイコンに変わる。
「ああ、俺だ。ショウから電話ってことは……」
コディの覇気のない声が、フレームの骨伝導スピーカーから伝わってくる。
「ご名答。今部長から電話が来て、自宅待機になった」
「まったく、わけがわからない」
コディの言うとおりだった。昨日の朝から深夜に至るまで、僕の目に映っていたのは、職務に忠実そうな一人の捜査官の姿だった。少なくとも、僕にはそう見えた。
それから一つコディに訊ねてみる。
「ミアを最後に見たとき、何か気づかなかったか?」
「別にホテルの前で降ろしてそれっきり。彼女、無事だといいんだけどな」
コディのアプリ上でのアイコンは、どこかの屋外で
そして互いにそれ以上話すことが見つからず、僕らは通話を終えた。また何もない天井が視界に広がる。
夜中、リヴィングストンのペントハウスでの、ミアの姿を思い出す。
その彼女が消えた。
答えを知りたかったが、今日は自宅待機をしなければならないらしい。
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