第25話 ぱ ん つ は い て な い
<EX:
魔法少女と
このスキルの本質は、その大いなるち蚊らを魔力に変蚊んしての大魔法の行使にある。
真摯なる祈りによって願いは蚊なう。
その祈りは奇蹟にも等しい事績を残すであろう。
⏎
これは入手したばかりのエクストラスキル(三回限定)である。
早速だが、一回目を使おうと思う。
記念すべき一回目のお願いは、魔法少女状態からの変身解除となる。
ウイングスターを改名して蚊ーくんにする(病的)というのも捨てがたい。
まあ、二回目のお願いでそれもありかな。
でも、無理に叶えると信頼関係にヒビが入りそうだから、これはもう少し仲良くなってからにしよう。
さて、お願いの仕方だけれども、一度だけ戻っても意味がない。
また変身して、再度お願いで解除とか勿体ない。
そうなると、変身解除スキルのようなものを授けてくださいとかが無難であろう。
その前に、お願いといっても実際ウィン君にお願いするわけじゃないけど、一応了解は取っておこう。
人間(?)関係は細やかな配慮が必要なものである。
「ねぇ、ウィン君。」
「まりも、どうしたの?」
真剣にウインドウを眺めていた彼が、問いかけに振り返って答えてきた。
「この、エクストラスキルのお願い、使ってもいい?」
画面を指さして聞いてみる。
「うーん、これってまりもの能力でしょ。実際ボクが何かするわけではないからっまりもの判断でいいと思うよ。ちなみに何するの?」
「うん、『まじ蚊る★ちぇんじ』っていうスキル使って、元に戻れなくなったから、これで戻れないかなって…」
「ふーん、よく分からないけど、まりもが必要ならそれで良いんじゃないかな?」
理知的蚊―くん、じゃなくてウィン君、話が分かる良い人(蚊)だ。
では、早速。
真摯なる祈りだったかな。
膝をつき、手を前に組み祈りをささげるポーズをとる。
そして、目を閉じて心の中でお祈りを捧げる。
(お願いします。まじ蚊る★ちぇんじの変身を解除するスキルをください!)
(…あれ?)
何も起こらなかった。
いや、ウインドウに表示されていたスキルの説明が消え、一行の文章があるのを見つけた。
『変身は一度発動すると二度と蚊い除は出来ません。』
⏎
(…は、え?)
奇蹟に等しい事績とやらでも不可能なの?
いや、祈りに真摯さが足りなかったからだ。
もう一度心を込めて祈った。
『変身は一度発動すると二度と蚊い除は出来ません。』
『変身は一度発動すると二度と蚊い除は出来ません。』
⏎
一行増えただけだった。
(同じこと繰り返してるんじゃねーよ!!)
思わず心の中で叫んだ。
『あなたは一生魔法少女のままです。』
⏎
いや、そういう意味じゃねなくてね。
表現変えれば良いってもんじゃないだろうに。
てか、一生とかもう確定なの?
『永遠に17歳ですよ。良蚊ったですね。』
⏎
ヨクネェヨ、ナニコレ…。
前にも言ったと思うけど、永遠の17歳ってロリババア疑惑が生じるからね。
そもそも、「~のじゃ」とか語尾につける魔法少女はなんか嫌だ。
それもうキャラ的に魔女じゃないかと思う。
そもそも、17歳をロリとは呼ばない(※個人的な感想です)。
さて、こうなってくると、エクストラスキルの奇蹟とやらの信憑性を疑ってかかるべきか…。
いや、システムのバージョン変更でお知らせしてきてたから、
危うくまたも騙されるところであった。
遠くからこちらを見てあざ笑っているに違いない。
となると、この文面自体は、
そういえば、AI(
まあ、どちらでも良い。
結構期待していた分、元に戻れないという落胆もそれなりだった。
もうだめだ。
いやでも、もう一度(諦めきれない)だけ…。
『無駄です。別のお蚊゛いをどうぞ。』
⏎
まだ祈ってもいないのに、先に言われてしまった。
ああ、分かりましたとも、別のお願いをしてやりますとも。
「蚊の文字化けとか直せ! あとウイングスターは蚊ーくん(もはや病気)に改名! 変身解除できないんだから、お詫びの意味でお願いひとつで両方やってみろや!」
もはや真摯な祈りはどこへやら、そんなの無視してヤケっぱちの命令である。
すると、予想に反した反応が、ウインドウの表示に現れていた。
『おね蚊゛いを受諾。』
『EX:
⏎
(は、発動だって!?)
予想外のことで驚いた。
だが、それだけでは終わらなかった。
突然、周辺が暗くなり、闇の帳が降りた。
地面から怪しげな黒い魔法陣が浮かび上がってくる。
そして周囲に闇の粒子が沸きあがる。
闇の粒子は蚊柱となって自身の周囲に渦巻くように包み込み、あのイヤらしい羽音の大合唱と共に駆け巡っていく。
徐々に蚊柱は増していき、オゾマシイくらいに溢れ奔流と化した。
その蚊柱の奔流がやがて繭となって自身を包みこむ。
しばらくして、蚊柱が収束しはじめる。
すると、その蚊柱の繭も粒子に還り、やがて消えていった。
蚊柱が晴れると、魔法陣が消え、闇の帳も明け元の世界に戻っていった。
恐怖体験だった。
一体何が自分の身に起こったのであろうか…。
周囲が見えなくなるほどの蚊柱に包まれて、しかも羽音がすごい、ガラスを引っ搔いている音の方が余程マシと思える程であった。
辺りを見渡す。
ウイングスターは、少し離れたところで、お尻を向けこちらに突き出すように伏せており、頭を抱えて震えていた。
まあ、あの場面を見せられては無理もない。
その姿が間抜けっぽかったけど、彼の人徳だろうか若干の可愛げを感じてしまった。
マヌカワというやつだろうか。
すこしほっこりし、恐怖体験で動揺していた気分が少し落ち着いたようだ。
そして、今度は自身を見た。
見下ろした身体には、茶色いストロー状のもの、恐らく藁の束のようなものが巻かれていた。
木綿の柔らかな感触ではなく、ごわごわして肌にこすれる感覚がなんとも不快に感じられた。
例の如く、泉を鏡代わりに映して見ることにした。
(す巻きちゃん、いや納豆娘か…。)
まさに、見た目は藁に包まれている納豆であった。
腰元あたりは、まるでベルトの如く藁紐のようなものでキュっと巻かれていた。
首元も同様である。
藁の先端がチクチクあごに当たって非常に鬱陶しかった。
そう、いつの間にやら、あの特注の蚊のコス衣装ではなくなっていた。
その付属としてあったもの上から下まで全てである。
そして、それは認めたくないとある現実を示していた。
( ぱ ん つ は い て な い ・ ・ ・ 。 )
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