第14話 ・システム・ステータス・スキル
『システムオン』
濡れた服を絞りながら、その言葉を口にすると、システムウインドウが浮かび上がる。
(良かった、騙された訳じゃなかったみたいだ。)
きちんと、ウインドウは出たし、お試しの時に見た文字列もそのまま並んでいた。
・システム
・ステータス
・スキル
えっと、指で触れる(タップ)でいいんだっけ。
お試しの時は出来なかったが、契約すれば使えるとカーナさんは言っていた。
契約は既に済んだから、使えるはずだ。
『システム』のところを人差し指でタップする。
すると、画面が切り替わりツリーみたいな表示がされた。
<システム>
‐44106-3210:VER.1.00000000001
‐※VER.1.00000000001変更点:一部予定機能の実装中止
‐異世【蚊い】言語機能サポート
‐蚊ん理蚊ん補佐
⏎
(おお、出た。)
ちょっとだけ、感動。
バージョンの前にある数字もそうだが、小数点以下がやたらと長いのが気になるが。
しかも、VER.数字の細かさからしてかなりの微細な変更っぽいのに、一部機能の実装停止とか重そうな仕様変更な気がするのは何故だろう。
(あ、ツリーの3番目にルビ振ってある。)
ミツヒレ…光秀の事なんだろうなぁ。
数字の語呂合わせで『0』を『デ』と読ませようとして『レ』とそのまま書いてしまった的な、早く言えば誤字みたいなものだろう。間抜けである。
それはさておき、異世【界】言語機能サポートを見て、こちらの世界が【千界】という【界】の集合体だと言われていたことを思い出した。
(あれ、ここって何【界】だっけ。)
名称を聞きそびれていた。
あれだけ、転生に至るまでの過程を長くグダグダやってて、肝心の事を聞いていないとか、間抜けさについては光秀のことをとやかく言えそうになかった。
仕方ないので、更なるタップで情報の追加を試みた。
だが、システムのツリーはこれ以上増えなかった。
(えー、これだけ?)
しょぼい機能だと思いながらも、右下にあった『⏎』をタップして元の画面に戻した。
・システム
・ステータス
・スキル
『ステータス』をタップ
画面が切り替わった。
<ステータス>
申し訳ございません
ステータス機能は実装予定でしたが、諸般の事情により実装を中止させていただくことになりました。
⏎
(お・の・れ・み・つ・ひ・れ・ぇーーーーーーーーー!!!!!!!!!)
あの野郎、ゼッタイわざと仕込みやがった。
ご丁寧に、あの世? での『お試し』ではステータスが見れるかのような期待を持たせておいて、いざ確かめようとしたらコレだ。
『⏎』で戻る。
・ システム
・ スキル
『ステータス』消えとるがな…。
先程まで、『システム』と『スキル』の間にあったものが無くなっていた。
バージョンとか含めて、厭らしい仕込みだとつくずく思った。
そもそも、異世界転生では無く、異世【界】転送であった。
今すぐにでも舞い戻って、奴に全てを問いただしたかった。
しかし、こちらの世【界】から戻る手立てが今のところない。
それに、いま思えばカーナ管理官もグルだったということだ。
あの執務机を見ても高級なお役人席っぽかったし、そのような立場になれる人間ということは、腹芸のひとつやふたつお手のものだったのだろう。
見事に騙されていた。
半ば諦めの目でウインドウを見やる。
『システム』は使えないことが分かった。
『ステータス』は楽しみにしていたのにハリボテだった。
そして、残されたのは『スキル』の項目のみ。
(もう、嫌な予感しかしない…。)
それでも、縋りつくように最期の希望をタップする。
画面が切り替わった。
<スキル>
・まじ蚊る★ちぇんじ (れべる1)
⏎
(…蚊? これも誤字か…!?)
瞬間、理解した。
そして、呆然と立ち尽くす。
最初の精霊契約の相手が何であるのか、その契約相手の末路を理解したからであった。
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