第4話 ワイバーンの逆襲
次のフロアに到達すると、冷たい風が吹き抜ける広間に出た。天井は高く、壁には古代の文字が刻まれている。広間の中央には巨大なワイバーンが待ち構えていた。その翼は広がり、鋭い爪と牙が光を反射している。
「これは一筋縄ではいかないぞ。」
城島が低く呟き、全員が戦闘態勢に入る。ワイバーンがこちらを見下ろし、唸り声を上げた瞬間、戦闘が始まった。
「翔、ワイバーンの弱点は?」
トウマが叫びながら剣を構える。
「翼の付け根と腹部だ!攻撃を集中させろ!」
翔がデータを確認しながら指示を出す。トウマはその指示に従い、素早くワイバーンの左側に回り込む。ワイバーンの巨体が動き、翼を広げて風を巻き起こす。トウマはその風圧に耐えながら、剣を振り下ろした。
「うおおおおお!」
一撃は翼の付け根に命中したが、ワイバーンは痛みにもがき、激しく反撃する。その尾が鞭のように振り回され、トウマは一瞬で後方に吹き飛ばされた。
「くそ…!」
「トウマ、大丈夫か?」
明日香がクロスボウを構え、的確に矢を放つ。矢はワイバーンの腹部に命中し、彼女の狙いが正確であることを証明する。しかし、ワイバーンはその傷にも怯まず、怒りに満ちた叫び声を上げた。
「奴の動きが速すぎる!気をつけろ!」
城島が剣を構え、ワイバーンの注意を引きつけるために前に出る。彼の一撃はワイバーンの胸部に深い傷を残したが、その反撃で再び後退を余儀なくされる。
「翔、次の指示を!」
由美が治療の準備を整えながら叫ぶ。翔は冷静にデータを分析し、即座に指示を出す。
「ワイバーンの右側が手薄だ。そこを攻めるんだ!」
トウマは再び立ち上がり、剣を握り直す。彼の目には決意が宿っていた。家族を守れなかった過去を乗り越え、今度こそ仲間と共に勝利を掴むために。
「了解。全員、右側に回り込め!」
トウマの声に応じて、全員が動き出した。明日香のクロスボウ、城島の剣、そしてトウマの一撃が次々とワイバーンの右側に集中する。ワイバーンは痛みに叫び声を上げ、翼を振り回して反撃するが、その動きは次第に鈍くなっていく。
「今だ、トウマ!」
城島が叫び、トウマは最後の力を振り絞ってワイバーンの腹部に深く剣を突き立てた。ワイバーンの叫び声が広間に響き渡り、その巨体が崩れ落ちた。
「やった…!」
全員が息をつき、戦闘の終わりを確認する。ワイバーンは完全に動かなくなり、広間に静寂が戻った。
戦闘後、全員が疲れ切った体を休めるために集まった。
「よくやった、みんな。」
城島が満足そうに微笑む。トウマも笑顔で応えた。
「皆さんのおかげです。」
「しかし、疲れたな…。しばらく休息が必要だ。」
明日香が深呼吸しながら言う。翔も同意するように頷いた。
「次の挑戦に備えるためにも、一度都市に帰ろう。」
由美が提案し、全員がその提案に賛成した。彼らはダンジョンを後にし、都市への帰路を辿り始めた。
都市に戻ると、彼らはその日の戦闘の成果を報告し、しばらくの休息を取ることにした。都市の空気は新鮮で、彼らの疲れた体と心を癒してくれた。
「ここでしばらく休もう。次の挑戦に備えて、体力を回復させるんだ。」
城島の指示で、全員がそれぞれの宿に向かう。トウマも一人、静かな部屋で休息を取った。
その夜、トウマはベッドに横たわりながら、今日の戦闘を振り返っていた。ワイバーンとの激しい戦闘、そして仲間たちとの絆。それが彼の心に深く刻まれていた。
「皆のおかげで、僕はここまで来れたんだな…。」
彼は静かに呟き、目を閉じた。家族を失った過去を乗り越え、今では新たな家族とも言える仲間たちと共に戦っている。その絆が、彼の心に新たな希望を灯していた。
「これからも、全力で戦う…。皆と一緒に…。」
そう決意しながら、トウマは深い眠りに落ちた。彼の心には、未来への希望と決意がしっかりと根付いていた。
翌朝、全員が再び集まり、次の挑戦に向けて準備を始めた。
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