第7話 プロキオンと洗礼
〜星霊暦2676年〜
父上からナギナタを貰ってから約2年が経った。
相変わらず戦闘訓練と魔力訓練の日々だった。。
父上が居る日は戦闘訓練、居ない日は母上との魔法訓練をメインにやった。
あとあの日以来プロキオンも一緒に戦闘訓練をするようになった。
プロキオンは余り体が強くないので魔道士に向いているだろうと言う事で護身術での棒術を訓練する事になった。
母上の様に魔道士になれば杖を扱うだろうから覚えて損は無いとの事。
父上は勿論だが、母上も多少棒術の心得が有ったのはちょっと驚いた。
また、僕の槍術と武器の長さも似てることから最近では2人で打ち合いをする日も多い。
っとはいえ、プロキオンは体力が無いのですぐにダウンしてしまうが。
「よし、今日の朝練はここまで!」
「ありがとうございました!」
「は…はひがほ〜ごひゃいまひは…」
プロキオンは大分参ってるようだ。
父上がヒョイっとプロキオンを抱えて家に入っていく。
母上が苦笑いで回復魔法をかけた。
プロキオンも落ち着き皆で食卓を囲む。
「二人共、食べながらで良いから聞きなさい。
今日は皆で出掛けるのは知っているな?」
デジャブ…
「はい父上」
僕は7歳、プロキオンは5歳になった。
そう、今日はプロキオンの洗礼の儀で神殿に向かう。
「僕は魔法研究家になる為に早く魔法が使いたいです」
プロキオンは僕と違って魔法に憧れていたからなぁ。喜びもひとしおだろう。
そして、それ以上に心躍らせている人が1人。
母上である。
母上、顔から喜びがだだ漏れですよ
「そうよねぇ〜プロキオンは魔法大好きですものね〜」
「はい!」
僕も嬉しいけど…
何となく怖いもの見たさで父上の顔を覗き込んだ。
なんて悲しそうな顔をしてるのだ父上!
「ゴ、ゴホンッ!い、良いか二人共。今日は洗礼後に王宮に向かう」
あ~あれ以来王宮へは行かなかったなぁ。
王立魔道具研究所なんかは行ったけど特に僕の魔法は解決しなかった。
「朝食が食い終わったら支度をするように」
神殿へ向かうのには市街地を通って行く。
相変わらず父上と母上は有名人である。
いつもの様に挨拶程度でやり過ごし無事神殿へ到着した。
やはり目の前で見ると不気味さが漂う。
中へ入ると半裸の石像達がお出迎えだ。
相変わらず祈りを捧げる人と、せっせと働くシスター達が居た。
手続きを終え待っていたが、その間プロキオンはソワソワと落ち着かない様子だった。
暫くすると案内のシスターが来た。
「準備が整いましたのでコチラへ」
洗礼の間に案内されると…
居た。あの時の老司祭だ。
まだまだ元気そうで少し嬉しかったが、老司祭も僕に気付きニッコリと笑ってくれた。
老司祭が説明を始めた。
そう言えば僕は、本来の洗礼の儀を知らない。
自分の洗礼の時は色々予想外な事が多かったのでプロキオンの洗礼で本来の洗礼がどんなものなのか見れるのが楽しみだった。
説明が終わり、プロキオンが台座に促された。
「プロキオン頑張れよー」
「プロキオンしっかりね」
もはや定型文だなと思い…
「プロキオン!貰えるならなんでも沢山加護貰っとけ〜」
本音である。
「こ、コレ!ば、罰当たりな!」
「あはは…あ、兄上〜…」
老司祭に困った顔で怒られてしまった。
父上は顔真っ赤にして恥ずかしそうだった。
しかし母上はニコニコして言った。
「それもそうね」
「カ、カペラ殿まで!!」
すると父上が「プッ」と吹き出して笑い始めた。
それにつられて家族で一斉に笑ってしまった。
涙が出るほど笑った。
老司祭の顔が更に老けた。
「ゴ、ゴホン!冗談はここまで。では両手を水晶へ」
プロキオンが水晶に両手を当てて集中し始めた。
いよいよだ。初めて洗礼を客観的に見れる。
するとその瞬間水晶が力強く輝き始めた。
青い光が強く、しかしもう一つ。
緑だ!
僕の時のように直視できない程ではないがそれでも力強い光が放たれている。
隣の母上が嬉しそうに身を乗り出して興奮していた。
老司祭も父上も「おおぉ!」と驚きの表情を隠せないでいた。
しかし水晶の中はもう一つ光っていた。
黄色?いや金色だ!!
他の2つに比べればそれ程強くはないが、確かに金色に輝く光が強く放たれている。
老司祭も父上も口を大きく開け、体を仰け反って驚いていた。
隣の母上は両手を上げてヤッターと言わんばかりに飛び上がっていた。
やがて光は収まり儀式が終わったように見えた。
驚き冷めぬうちに父上が神妙な面持ちで老司祭に問う。
「司祭様…これはいったい」
あれ、前にも見たような。デジャブ…?
「ご、ご子息の加護は……水と風」
老司祭が説明に困っているのが分かった。
「そして…光でございます」
なんとプロキオンはギフテッドで母上の水と風を継いだだけでなく、本来直系の王族しか与えられないという光まで加護を受けたらしい。
3つの加護持ちはあり得ない話ではないが、光が入ってるとなると話は別らしい。
険しい表情の老司祭と父上だった。
プロキオンが若干困っていたので父上に落ち着くようコソっと伝えた。
「父上、プロキオンが怖がります」
父上がハッと我に返り無理やり顔を作ったのが分かった。
母上は対象的に終始ご機嫌だった。
「やっぱりうちの子は天才なのよ〜」
そう言ってプロキオンを抱き寄せて台座から引き剥がした。
その姿に老司祭も父上もやれやれといった感じで困り顔ながらもやっと笑顔になった。
すると母上がご機嫌な様子で口を開く。
「王宮へ行きましょ〜」
そうだ、今日は元々王宮に行く予定だったのだ。
何だか雰囲気は違うが、僕の時と同じ流れなのが少しだけ可笑しかった。
ただ今回も前回同様イレギュラーな事が起き、そしてそれは王族も無視できない出来事の為、王宮に行く予定が無くても行く羽目になっていただろう。
老司祭もそれを勧めた。
それからは父上と母上の行動は早かった。
父上は神殿騎士に一家揃って王宮への入城と王様への謁見の手配を頼み、母上も前回は都合がつかなかったが、今回こそはと謁見時に大司教と各大臣達の同席願いを手配していた。老司祭も急ぎ馬車の手配をしてくれていた。
「馬車のご用意が出来ました」
そう息切れしながら老司祭が呼びに来た。
今回も老司祭は超頑張ってくれたのだろう。
老司祭に感謝をしつつ皆で馬車に乗り込んだ。
アケルナル様は居ないけど前回同様、神殿騎士が2名騎馬で先導してくれるらしい。
穏やかな雰囲気で市街地を抜けお城の前の曲がりくねった丘に差し掛かった。
プロキオンが酔わないように身構えていた。
三の丸、二の丸を越え遂にお城の門まで来た。
やはりお城は大きくて美しかった。
ベネトナシュ王は、アルデバラン様は元気だろうか。
そんな思いに浸りながら何気なくプロキオンに目をやった。
プロキオンは酔っていなかった。
偉いぞ我が弟よ!
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