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一般通過ゲームファン

廃人ゲーマー 黒須ビット①

「ちっ、授業クソつまらねえな……」

 俺は黒須くろすビット、ゲーマーだ。一応高校生でもある。今は授業を聞き流しながら、パニックサバイバル・アウトブレイクに今度のアプデで追加されるボスを倒すための武器と装備品を考えていた。

「では、黒須。」

 ゲッ、当てやがった。

 俺は渋々立ち上がって半、いや4分の1睨みで教師の方を見る。

「平面上のいかなる地図も、隣接する領域が異なる色になるように塗り分けるにはこれだけ色あれば十分だとする定理があるが、その定理のことを何と呼ぶか、答えてみろ。」

「簡単だな。四色定理だろ?」

「正解だ。」

(やれやれ、こんなことのためにわざわざ当てて立たせたってのかよ。さてと、じゃあさっさと構築の続きを……)

 そう考えながら俺は座ろうとした。しかし……

「では、これを見ろ。」

「あ?」

「何だ、その態度は?」

 まずい。言葉に出ていたらしい。

 思わずこぼした言葉一つで、教師からは睨まれ、同級生からは変な注目を浴びせられる。

「すんません。」

「チッ……まあいい。この図は、四色定理の反例として数学者の研究室に届けられた平面図だが、四色で塗り分けることが可能だ。今回は、色の代わりにA、B、C、Dを各領域に当てはめて、これを証明して」

『ビット君、聞こえる? 事件発生よ。』

「!」

 突然、脳内に直接可愛い女の子の声が響いた……じゃなかった。耳たぶに埋め込まれた通信装置が連絡を受信したのだろう、耳小骨が振動し、女性警察官の声が聞こえた。だが、誰だろう? 聞き覚えのない声だ。

「黒須、どうした? 質問に答えろ。」

「ゴホッ、ゴホッ、ゲホゲホ! すみません、少し息が……」

 そう言いながら俺は、右手を低い位置に持っていき、教師に対して手信号を出す。

 これは、教師たちと俺しか知らない、通信があった時の合図だ。

「! わかった、保健委員! 黒須を保健室に連れて行ってやれ!」

「はい!」

 教師が男子保健委員に同伴を頼む。俺は彼に連れられて教室の外に出る。

 え? わざわざ本人と教師以外が理解できない手信号で合図を出してるのに、何で他の生徒に同伴を頼んだかって?

 それは……

「ビット、急ごう。」

「ああわかってる、瑛太。」

 彼が自分と同じ、隊員だから。

 『超常機動制圧隊ちょうじょうきどうせいあつたい』、通称『超機隊ちょうきたい』。警視庁直属、国家公認の極秘組織で、異能を持つ者たちが年齢性別関係なく所属している。その任務は異能を行使し、警察も手を焼く凶悪犯を制圧すること。

 俺たちは階段を一階まで駆け降り、一直線に裏門に向かう。裏門の前には超機隊のカラーリングがされた一台のパトカーが停まっていた。俺たちを迎えに来た車だ。

 その側には、やはり見慣れない女性警官が立っていた。

「黒須ビット君と相澤あいざわ瑛太えいた君ね?」

「ああ、そうだ。」

 その女の声は、やはり先ほど装置で聞いたのと同じ声だった。通信を入れた本人が迎えに来るなんて、珍しい。

「ところでアンタは?」

「それは移動しながら話すわ。ひとまず、乗りなさい。」

 女性警官にそう促され、俺と瑛太はパトカーの後部座席に乗り込む。2人を乗せたパトカーはサイレンを鳴らし、現場へと向かって行った。

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