アルモフトラズに潜入せよ4

「よう、兄ちゃん」


 一度気配が離れたと思ったら前に回り込んできた。

 3人の男たちがレオとフーニャの行手を阻む。


 レオはこの3人が冒険者ギルドにいたことを覚えていた。

 わざわざ冒険者ギルドを出るのを待って追いかけ、回り込んできた。


 まだ確実ではないけれど撒いた餌に何かが食いついたとは言っていい。

 何が食いついたのかは分からない。


 期待はずれでないことを願うばかりである。


「何か用か?」


 警戒しつつも毅然とした態度でレオは対応する。

 ここで怯えた表情を見せてはいけない。


「……あんな大金、人前で見せるもんじゃないぜ」


「忠告……じゃなさそうだな」


 レオたちの後ろからさらに2人の男が現れた。

 期待していた人ではなさそう。


 それどころか大外れの相手である。


「大人しく金置いていきな」


 男たちは一斉に武器を抜く。

 こいつらはレオが冒険者ギルドで出したお金を見て奪い取ろうと考えたならず者であった。


「ご主人様」


「うん、やっちゃおうか」


 前後の道を塞がれた以上逃げることもできない。

 レオが剣を抜き、フーニャがメイスを手に取ると男たちは顔をしかめた。


「この人数差で戦うつもりか?」


「大人しく引くっていうなら見逃してやるぞ」


「なんだと? それはこっちのセリフだ!」


 余裕ぶったレオに男たちは苛立ちを募らせる。


「金さえ払えば見逃してやろうと思ったのに……やっちまえ!」


「何をしているのですか!」


 男たちがレオとフーニャに襲い掛かろうとした時だった。

 男たちの後ろからさらに別の男が現れた。


「げっ!?」


 黒い制服に身を包んだ中年男性で男たちのことを睨みつけている。


「散れ!」


「は、はいっ!」


 先程まで威勢の良かった男たちが制服の男性の一喝でしおらしくなる。

 チラチラとレオたちのことを名残惜しそうに見ながらも男たちは走って逃げていく。


「お騒がせして申し訳ありません。時にああした連中がいるもので」


 制服の男は被っていた帽子を軽く持ち上げて頭を下げる。

 帽子の下の頭はやや薄くなっている。


「ええと、あなたは?」


「看守団のメルビンダと申します」


「看守団?」


「ああ、この町は初めてですか? 看守団とはアルモフトラズの看守で結成されている町の警備隊のことです」


 大きな刑務所があるために仲間を脱獄させようなんて人がアルモフトラズに集まることもある。

 そんな犯罪計画を未然に防ぐためにアルモフトラズの治安維持活動をアルモフトラズ刑務所の刑務官が行なっているのだった。


 それが看守団。

 要するに警察みたいなものである。


「冒険者ギルドでの会話聞かせていただきました」


 襲われているレオたちを見て助けに来てくれたのか。

 そう思っていたら近づいてきたメルビンダは声を抑えてレオに声をかけてきた。


「犯罪者となっている獣人に興味があるとか」


 今度こそ釣れた。


「ええ、興味あります」


「…………お売りいたしましょうか?」


 一見人の良さそうな笑みを浮かべるメルビンダの顔をレオは見た。

 その目の奥には怪しい光が宿っていた。


ーーーーー

変態が故に2が抜けておりましたので挿入しました

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