岩窟王ゴレムス

原寛貴

HO1 クエンサーの死

「後は任せたぞ……ヘイビア……」

 クエンサーはそう言い残し、絶命した。

「く、クエンサーああああああああああああああああああ‼」

 相棒の死に、ヘイビアが珍しく取り乱す。

「少佐! ウィンチェル上等兵のバイタルに異常値が……‼」

「落ち着いて、ヘイビア‼」

「これが落ち着けるかって話ですよフローレイチアさん‼ アンタ人情まで爆乳に吸い取られてんのかよ、ヘイ‼ クエンサーが死んだんだぞ‼ 取り乱しちゃいけねえって分かってても無理でしょ、そりゃ‼」

「だからこそよ‼ クエンサーを無駄死ににしたいの⁉」

「うるせえ‼ 黙れ‼ やってられっかよ、こんなの‼ 次は誰が死ぬんだ⁉ ニョンリか⁉ 俺か⁉ 俺だな、多分‼ 激昂した俺は馬鹿みたいに突っ込んでゴレムスに踏み潰されんだ‼ それか敵兵の接近に気付かず撃ち殺されんだ‼ アンタの読みではどっちだよ、フローレイチアさん‼ 賭けるか⁉ アンタが負けたら支払うのは身体だけじゃ済まねえかもだぜ‼」

「落ち着いて、ヘイビア‼」

「それしか言えねえのか、馬鹿爆乳上官様よ‼」

 ヘイビアは動転していたが、それでも自分の言っていることの異常性に気付いていた。普通ではない。狂っている。これは元々のヘイビアの気性の荒さに、ブレーキ役の相棒が死んで歯止めが利かなくなってしまったためだろう。

「まだお姫様は戦ってる‼」

「ああ⁉ お姫様⁉ はっ! それこそ馬鹿だぜ! 旦那が死んで未亡人になったからってヤケクソの殴り込みか⁉ 勝てる訳ねえ‼ 相手は最強のレールガンを持つ、ゴレムス『オンリーマイレールガン』だぜ⁉ あんな逝かれた破壊力のレールガン相手に、俺らがどうしようってんだ‼ もうクエンサーもいないんだぜ⁉」

 クエンサーがいない。先程まで馬鹿話していた少年がいない。それだけでヘイビアの心はもう完全に折れてしまっていた。戦意も敵意も殺意すら足りない。軍人失格だ。

「聞いて、ヘイビア。もしかしたら」

「何だ⁉ クエンサーを持ち霊にする話か⁉ オーバーソウルして襲ってやろうか⁉」

「茶化さないで。もしかしたら、勝てるかもしれない」

 何に、とは聞かない。そこまで捻くれてはいない。

「クエンサーの死は無駄ではなかった。と証明して」

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