第1話 過去
私はこの先、3つの日付を忘れることは出来ないだろう。
五月二十七日。
六月三十日。
九月の第一月曜日。
少女が死んだ。十四歳だった。
死んだ理由は簡単で、自殺してでもいいから、中学校に戻って、高校に進んでほしいと、社会もコミュニティも思っていたからだ。
そして私自信も、彼女から逃げた。
二重人格、オーバードーズ、自傷行為、妄想。どれも私達には身近なものだったけれど。
多くの人々は、そうではなかった。
私は考えた。彼らは何故、私達の言葉を聞いてくれなかったのか。
何故私達の気持ちを考えず、学校に執拗に戻し、何が何でも全日制に通わせようとするのか。
そうか、と、私は気付いた。
私に必要なもの、足りないもの。それはきっと、「力」だ。
権力でもカネでもなんでもない。
大人たちを屈服させるために必要なのは、圧倒的な知識だ。そして、資格だ。
死物狂いで勉強し、心身を蝕まれ、障害者差別と戦いながら、毎日返済に追われていた時―――。
私の前に「小さくされた人」が現れた。
「今度こそ、彼女の命を守り抜きなさい」
私は、彼女こそが、ある程度の知識とほんのちょっとの収入を得た私に遣わされた、キリストだと思った。
決して見捨てまい。
元よりこの命、教会コミュニティから嫌われ捨てられてから、自分の信仰のために生きている。
数十万で人の命が変えるなら、安いものだ。
権利や法律も、聞き齧って学んだ。私には戦う武器がある。
私達は数字ではない。一人の人間だ。
「人を殺す経済」から、きっと彼女を守り抜く。
―――そのためなら、私は自分の身を持ち崩し、早死しても構わない。
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