完全自動化社会の新たなる挑戦

O.K

第1話:完全自動化の世の中

未来の日本。完全自動化が進み、あらゆる産業がロボットやAIによって運営されるようになった。製造業、サービス業、農業、医療、教育…どの分野においても、人間の手はほとんど必要なくなった。この革新により、労働市場は大きく変動し、失業者が急増。多くの人々が新しい仕事を見つけることができず、生活保護に頼るようになった。


主人公、田中翔太もその一人だった。かつては一流企業でエンジニアとして働いていたが、自動化の波に飲まれ、職を失った。新しいスキルを身につけようと努力したが、時代の流れはあまりにも早く、次々と新しいテクノロジーが登場し、追いつくことができなかった。生活保護を受けるようになった翔太は、かつての仲間たちと同様に、日々の生活に追われるだけの毎日を送っていた。


生活保護受給者の増加は止まることを知らず、ついには国民全員が受給者となる時代が訪れた。政府は一見すると膨大な財政負担を抱え、国家の破綻が避けられないと思われた。しかし、驚くべきことに、国家は崩壊するどころか、むしろ繁栄を続けていた。


この奇妙な現象の背後には、国家の新しい経済モデルがあった。完全自動化により、生産性はかつてないほど向上していた。ロボットとAIは24時間休むことなく働き、膨大な量の物資やサービスを生み出していた。人々はもはや労働をする必要がなくなり、すべての生活必需品が無料で提供されるようになっていたのだ。政府はこの豊富な生産力を背景に、国民全員に生活保護を支給し、生活を保障することが可能となっていた。


新しい経済モデルでは、税収もまた自動化の恩恵を受けていた。企業は高い生産性を維持し続け、その利益の一部を税として政府に納めていた。さらに、ロボットやAIの導入には高い初期投資が必要であったが、その運用コストは極めて低く抑えられていた。このため、企業の利益率は非常に高く、政府の財政も潤沢な状態が続いていた。


一方で、国民の生活は大きく変わっていた。労働の義務から解放された人々は、自由な時間を手に入れ、趣味や学問、創造的な活動に専念するようになっていた。これにより、文化や科学技術の発展が加速し、新たなイノベーションが次々と生まれていた。人々はかつての労働中心の社会から、自己実現を追求する社会へと移行していた。


しかし、この新しい社会にも課題は存在した。労働を通じて得られる達成感や社会的なつながりが失われ、一部の人々は生きがいを見つけるのに苦労していた。政府はこれに対応するため、コミュニティ活動やボランティアの奨励、メンタルヘルスケアの充実など、様々な対策を講じていた。


翔太もまた、新しい社会で自分の生き方を模索していた。かつての職業に固執するのではなく、新しいスキルを学び直し、趣味や興味を追求することで、新たな目的を見つけ出した。彼はコミュニティ活動に積極的に参加し、人々とのつながりを大切にすることで、充実した日々を送るようになっていた。


未来の日本は、完全自動化と新しい経済モデルによって、人々の生活が劇的に変化した時代だった。労働から解放された人々は、自己実現を追求し、新たな社会のあり方を模索していた。その過程で生じる課題にも向き合いながら、より良い未来を築いていくために、国民全員が協力し合う社会が形成されていた。翔太もまた、その一員として、新しい時代の一歩を踏み出していた。

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