第二章
第八話 アピールポイント?
先ずはパンケーキを頼むことにした
パンケーキは一種類だけれど、ミツバチが好む花の蜜を練りこんであると大々的にアピールされている。
以前、視察の際に休憩に立ち寄って一度だけ口にしたことがあったけれど……。
パンケーキはフワフワで、ほんのり甘い香りがして、花の蜜が練りこまれているからか、ほのかに甘みを感じたのを思い出して思わず顔が緩む。
メニューのトッピングに視線を移すと、花の季節限定という文字に思わず食いついて身を乗り出してしまい、小さな笑い声に気がついて思わずメニュー表で顔を隠した。
「ふふっ……限定とかって、興味を惹かれるわよね?」
「んー……お嬢は、いつも甘いモノに目がハートになってますけどねぇ」
「うっ……レイ、不敬です。
花の季節限定セットは、白に近いピンクの小さな花の蜜と、砂糖漬け、それと赤い艷やかな木の実。すべて一つの花の木から採取されたと書かれている。
二人も
パンケーキが出来上がるまで、先ずはチャコラさんの職業であるテイマーについて聞くことになり、家柄から外の世界を知らない
「テイマーは、具体的にどのようなお仕事なのでしょうか? チャコラさんは、冒険者と名乗っていましたけれど……」
「あっ、チャコラって呼び捨てで呼んで! 簡単にいうと、自分の代わりにテイムした魔物に敵を倒させることかな? テイマーにも色々あるんだけど……実は、アタシのスキルは時間制限があるのよねぇ。ルキディア様は聞いたことあるか分からないけど、ハズレスキルかな……」
チャコラに敬語は不要と伝えたことで、砕けた普段の話し方で返してくれた内容に、
チラッと横のレイに視線を向けると、世間知らずの
店内は、現在時刻がお昼に近いこともあって先ほどよりも人が増え、賑わいを見せている。それなのに、レイ以外で男性は一人もいない。
「ほら、この間勉強したじゃないですかぁ? まさか、寝てました?」
「ね、寝ていません! 耳にしたことがなかったから……記憶から抜けていただけです……」
「普通は、契約が成功したら破棄しない限り生涯を共にできる相棒なんだけどねぇ……アタシの場合は、24時間限定なの。その代わり、テイム数にも限りがあるんだけど……時間制限で勝手に破棄されるから、無制限」
これは、良いことなのか分からない問題だと
メリットは、誰とでも協力関係になれること。けれど、それ以上のデメリットは……唯一無二の相棒ができない。
これは、モフモフ好きな
「冒険者としては、良い部分も見えますね? ただ、モフモフ好きな
「そうなの! せっかく仲良くなって、信頼関係が得られても……それはテイムしている間だけ……契約する際も、魔物に認められないと出来ないから。スキルで繋がってるだけとは思いたくないんだけどねぇ」
すると、何か言いたそうに眉を寄せるレイの姿がある。
その意図を理解した
「あっ……そうでした。チャコラに聞いてもらいたいお話があって、お誘いしたのでした」
「そういえば、そうだったわね? 自分のことで、こんなに盛り上がるとは思わなくて……でも、聞いてもらえて嬉しかった。ハズレスキルなんて、恥ずかしくて言えないから……」
チャコラの言葉に
両手を再び膝の上に置くと表情を緩めた。
「そんなことはありません!
「そ、そうよね! そういえば、ルキディア様は、どうしてモフモフ限定で半径5メートルって制限が……?」
「うーん……それが、不明なんですよねぇ。
再び
一度深呼吸してからチャコラの目を見て、揺れる耳に視線がいってしまうのを
「その……冒険者が好きなのでしたら、断られるかもしれませんが。
「えっ……? ぇぇええ!?」
驚きで耳が立つチャコラの大きな声は店内に響き渡り、何事かと店員が走ってくる。
「ご、ごめんね……アタシのせいで。でも、どうしてアタシなの?」
「それは……その……」
「ハッキリ言うと、お嬢はモフモフに目がないんです。それと、ご友人もいらっしゃなくてぇ。獣人族の年が近い
正直に言うと、モフモフしたい。と、直訳された。
引かれたかもしれない……モフモフの対象だと感じて、中には拒絶反応をみせる獣人族もいる。
けれど、耳に聞こえたきたのは声を抑えた笑い声。
「なーんだ。アタシに会ってから、若干視線が上や下にいってたのは、この耳と尻尾を触りたかったのね?」
「はうっ……モフモフと同じように見てしまい、申し訳ございません」
思わず頭を下げると、そっと触れる感覚に顔をあげた。
お父様とお母様以外に、
チャコラも自分のしていることに気がついたようで、パッと手を離すと土下座する勢いで姿勢を低くする。
「うわっ! アタシったら、王女様になんてことを……大変申し訳ございませんっ」
「いえ……無礼を働いたのは
「俺なら、いつでもお嬢の頭を撫でてあげますよー?」
調子のいいレイを軽く睨みつけると、チャコラがこちらに頭を寄せてきた。
灰色の大きな耳がとても魅力的に映る。彼女の髪も同じ色をしていて、生え際がまったく分からない。
「どうぞ? 耳を差し出すとか……ちょっと恥ずかしいけど、触っていいわよ?」
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