第115話 聞き込みの成果
「では、お互いの商売が上手くいきますように」
「お互いの商売が上手くいきますように」
商人ギルドの中。
「ふむ……」
かれこれもう六十人くらいと話しただろうか。新商会設立祝いとしてお祝いの品物を貰うことも多かった。
その中には卵を扱う商人や砂糖を扱う商人がいて、けっこうな量を貰ったよ。一人では消費しきれないので、このままリットリアへ流そうと思う。
お祝いの品物はいつものように収納空間に入れたのだが、これが大いに驚かれた。オレが自分で言うのもなんだが、一等資格を取ったと言った時より驚かれたかもしれない。
ほとんどの商人が、どこくらい入るのか、どこまで運べるのか、中に入ったものはどういう状態なのかなど熱心に質問を重ねてきたよ。オレの【収納】は、商人にとってかなり興味深いギフトだったようだ。
まぁ、そうだよね。商人初心者のオレも商人には便利なギフトだと思うし、やるつもりはないが、抜け荷などの犯罪もし放題だ。
オレはそこに目を付けた。
もしかしたら、この【収納】のギフトの力で商人たちの商売を手伝うこともあるかもしれないと意図的に零したのだ。
これはかなり効果があった。
商人たちが目の色を変えていろいろと教えてくれるようになった。中には内緒の話をしてくれた商人もいた。
だが、リットリアへの嫌がらせの話となると、商人みんなが口裏を合わせたように何も言わなくなってしまう。
しかし、とある商人と話している時、商人たちは口ではなく目で教えてくれているのだと気付いた。みんなリットリアへの嫌がらせの話になると、目を上に逸らすのだ。
最初は意味がわからなかった。とぼけているのかとも思ったが、そうではない。商人たちはリットリアへの嫌がらせをしている相手を教えてくれていたのである。
ここ王都の商人ギルドの上方。そこにいるのはギルド長を代表する役員たちだ。いずれもこの王都で大きな店を構えており、成功している商人たちである。その中の誰かが犯人だと商人たちは教えてくれていたのだ。
まぁ、普通に考えれば、小麦、バター、卵、砂糖、これらを扱う商人の数は多いだろう。その商人たちに一斉に指示を出せるとすれば、商人ギルドの中でも権力者というのは最初から分かっていた。
言わば、最初に立てた仮説が立証されただけなのだが、前進と言えば前進だろう。あとはギルド長をはじめとする役員を調べていけばいい。
「トマとマケールが怪しいな」
トマは商人ギルドの役員で、マケールは商人ギルドのギルド長だ。二人とも広く商売をしているが、元々は食品関係の商会を運営しており、食品を扱う商人への影響力は大きい。
怪しいのは怪しいが、まだ二人だけに絞る段階でもないか。
とりあえず、商人ギルドの役員とギルド長の中に犯人がいるとだけ覚えておこう。
その後、オレは商人ギルドを出て、今日知り合った商人たちの商会で買い物していく。買う物はもちろん小麦と卵、砂糖だ。大量に買って収納空間に放り込み、オレはリットリアへとやってきた。
「ジルベール様! いらっしゃいませッス! カトルカールのご注文ッスか?」
「それもあるけど、お土産も持ってきたんだ」
「お土産?」
「ああ。とりあえず、カトルカールの材料を置いている場所に案内してくれないか?」
「はいッス!」
いつものように元気に出迎えてくれたジローに食糧庫への案内を頼む。
ジローに付いていくと、ひんやりとした部屋に案内された。
「ここがリットリアの材料室ッス! もしかして、またバターを持ってきてくれたッスか?」
「実は今日はバターじゃないんだ」
オレは収納空間から小麦粉の入った袋を少しだけ出してジローに見せる。
「小麦粉ッスか!」
「ああ。あとは卵と砂糖もある。これを定価でリットリアに卸すよ」
「マジっスか!? すぐに師匠を呼んでくるッス!」
ジローもリットリアへの嫌がらせを知っているのだろう。驚いた顔をして、すぐにエミールを呼んできた。
「ジルベール様! ようこそいらっしゃいました。ジローから聞いたのですが、本当にいいんですか?」
「ああ。実は商人の一等資格を取ってな。商売を始めたんだ」
「それもすごいですけど、すべての商人がリットリアへの嫌がらせに加担しているのに、ジルベール様の行動がもしバレでもしたら……」
エミールは優しいなぁ。自分が苦しい状況なのに、オレのことまで気遣ってくれる。だからこそ、助けたいんだ。
「気にしなくていいよ。オレはこれがやりたくて商人の一等資格を取ったようなものだからな」
「ジルベール様……!」
「すげーッス……!」
「リットリアは潰させない! エミールの信念も貫こうぜ!」
「ありがとうございます、ありがとうございます……!」
商人が手のひらを返して敵に回り、エミールも相当堪えていたのだろう。その目にはきらりと光る涙があった。
「リットリアは負けない! やるぞ!」
「おー!」
「おーッス!」
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