第19話 戦いの幕開け
窓から日差しが差し込む。
外から鳥のさえずりが聞こえて来ると共に携帯のアラームが鳴り響き、朝が来た事を自室のベットに横たわっている竜弘へ伝えた。
「……もう朝か。そういえば今日は確か学校……。」
左手を支えにして起き上がろうとした時、むにゅっと柔らかな何かに触れてしまう。
抱き枕とかその辺を敷いた覚えはないしその柔らかな物には何故か温もりが有る。
「えッ…、何だろう……?」
布団を右手で捲ってみるとそこには可愛らしい寝顔で眠っている長い黒髪の少女が自分の隣に居た。よく見ると自分の左手はその子の胸へ触れていて、柔らかな感触はそれだった。
「さ、ささッ、さ、さ、冴月ぃッ!?どうして僕のベットに!?」
思い起こせば昨日、冴月は自分の家に泊まる事になったのは解る。そして寝る時に彼女は自分へこう話していた。
『私は布団で寝るから竜弘はベットで寝て良い。泊めて貰ってるんだもの、贅沢言わないから…気にしなくていい。』
そして自分はベットで眠った。
だが何故か彼女がベットに横たわっている……。
「んん……何…?ふぁあ……。」
冴月が目を擦りながら竜弘を見つめる。
だが、何故か視線を逸らされてしまった。
「……?ねぇ、竜弘…どうかし──ッ!?」
竜弘が自分の胸へ触れている。
そう解った瞬間、彼女はベットから飛び降りて薄いオレンジ色の寝間着の上に顕現法術を用いて黒い法衣を肩へ羽織ると鞘から蒼月を引き抜いた。ギラリと青白い刃が朝日に照らされて輝くと刃先が竜弘へと向けられる。
「うわわわッ!?誤解、誤解だってば!!」
「信じらんない、人が寝ている時にこんな真似するなんて……最ッ低!!」
「違うって、そもそも何で冴月が僕のベットに居るんだよ!?」
「そ、それは……ッ…兎に角、身体に触ったのは別!!斬る、絶対に斬ってやる…!!」
冴月が威圧したまま竜弘へ差し迫る。
「覚悟ッ!!」
「わぁあああッ!!」
振り上げられた直後、携帯の横に置かれていたステュクスが呟く。
[サツキ、狙うなら峰打だ。朝から臓物をぶち撒けられるのは妾も不快だからな。]
そして直後に鈍い音と共に竜弘が悲鳴を上げた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「ねぇ冴月さん?お兄ちゃん具合悪そうだけど大丈夫?」
「……大丈夫、死にはしないでしょ。」
冴月と竜弘、朱音の3人はそれぞれテーブルを囲う様に食事を摂る。一方の竜弘は峰打ちされた箇所を気にしながら食事をしていた。
どう見ても冴月が悪いとは言えない、反論したら恐らく今度は切り刻まれる。
「竜弘、お醤油取って。」
「あ、はい……。」
少し強めな言い方をされつつも竜弘は醤油瓶を取ると彼女の前へ置いた。
「…ありがと。」
「ど、どういたしまして…。」
食事を終えれば今度は学校へ行かなくてはならない。竜弘が3人分の食器を片付け、先に支度を終えた朱音と冴月が外へ出て行くと後に続いて竜弘も施錠してから出て行く。合流してから朱音が通っている中学校の有る途中まで話しながら歩いて行った。
朱音は途中で立ち止まると2人へ手を振る。
「じゃあ私は此処で。また遊びに来てね、冴月さん!」
「うん。行ってらっしゃい朱音。」
冴月も手を振り返して朱音と別れた後、竜弘と共に通っている高校へ向かって再び歩いて行く。
その最中に彼女は竜弘へ話し掛けた。
「気になったんだけど…この前、襲われた時に何で相手が死徒だって解ったの?」
「え?うーんと…何か直感的に感じたんだ。この人達は人間じゃないって。」
「ふぅん…でも、それだけじゃ説明になってない。もっと具体的に話して。」
冴月は竜弘の方を向くとジッと見つめる。
彼は色々と頭を悩ませた末に結論を纏めた。
「えーっと……鉄が錆びた匂いがする…かな?」
「錆びた匂い?どんな?」
「うん、何か鉄とか金属が錆びた様な独特の匂いがするんだ……それも特別に強い匂いが。後は雰囲気…普通の人じゃないような感じ……かな?」
冴月は頷くものの、彼女はそれ以上何も話さなかった。
「なぁ冴月?何か言ってくれても──」
「…竜弘も少しずつだけど感じ取れるようになってるのかもしれない。私とは違うけど、死徒かどうか判別が出来る様になってる……それが解る様になってるのはお前が成長している証。」
「成長……か。」
「だからって、無茶して死に掛けたりするのとは話が違うから。しっかり憶えておく様に!!」
前へ回り込んだ冴月からビシッと指を差されると竜弘は苦笑いして彼は頷いた。
それから学校へ到着し、上履きを履き替えてから教室へ足を運ぶと竜弘と冴月は有紀と挨拶を交わして席へ着く。それから直ぐ後に浩介が入って来て竜弘へ絡みに来た。
「珍しいよなー、俺ん事置いて倉本さんと一緒に来るなんて。お前も中々やるよなぁ?」
「悪かったよ、ごめんってば!!」
竜弘が笑いながら鬱陶しそうに浩介を払うと
今度は有紀が冴月を小突いて来る。振り返ると両肩を掴まれて耳元で囁かれた。
「……上手く行きそう?」
「…未だ解らない。でも、平井さんには負けたくないから頑張ってみる……私なりに色々と。」
「ふふふッ、この前より良い顔してるよ?私はどっちの味方じゃないけど。」
ポンポンと冴月の頭を有紀が撫でていると
チャイムが鳴り、各々が自分の席へ座っていく。
直ぐに担任である綾音が入って来て、ホームルームが始まる。文化祭に関する話や学習に関する話が終われば今度は普段と同じ形で授業が待っている。
この日の1限は英語、別の男性教師が入れ替わりで入って来ると直ぐに授業が始まった。
冴月は普段通り話を聞きながら形だけでもと思い、ノートを取っているとステュクスが話始める。
[……サツキ。]
「…?どうかした、ステュクス。」
[何者かに見られている様な視線を感じた……用心しろ。]
「視線って…あの教師じゃなくて?」
手を止めた彼女は左右を目で追って確認してみるが
違和感の正体は解らぬまま。冴月は目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませてみるが何も感じなかった。
周囲のクラスメイトは皆、真剣に話を聞いてノートを取っている。
「……唯の勘違いじゃないの?何も感じなかった。」
[そうか……。]
ステュクスを少し宥めてから再び授業へ望む。
すると教師から突然指摘されて冴月はその場に立ち上がった。実はこの教師と彼女とは少なからず因縁があり、以前に英語の教師というプライドをへし折られた事があるのだ。
「さぁ倉本。此処の文章は何が違うか──」
黒板を見た彼女は「ふぅん」と得意気に少し笑うと話始めるが周囲のクラスメイトはザワザワしていた。
どう見ても高校生が解ける問題ではないからだ。
「……そこの空欄の箇所はこの単語とその単語を入れる。それから2段目の文章は選択肢②を併せて繋げれば良い。最後の問題は簡単に解ける奴じゃなくて単なる引っ掛け問題、解答は……こう。」
彼女は自分から黒板の前へ来ると白いチョークを1本取って文章の下側へカリカリと字を書き記した。そしてそれを置くと黒板から離れて教師を見つめる。
「せ…正解……。」
「悔しかったら、いつでもどうぞ?相手になるから。」
踵を返して自分の席へ戻ると拍手と歓声が上がると1限の授業は盛り上がったまま終わってしまった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
2限の授業は化学。移動教室の為に冴月が教科書類を持って廊下を歩いていると目の前から上級生と思われる女性が冴月と擦れ違う。
紫色の髪をしたその女性は彼女を背にして足を止めた。
「……貴女…例の焼却者でしょう?」
「…知らない、何それ。」
2人の合間に唯ならぬ空気が流れる。
いつの間にか廊下には誰も居らず、彼女と冴月の2人だけがその場に居た。
「…人知れずに異能者や死徒と呼ばれる異質な存在達を狩り…この世の安寧を守る者達、それが焼却者。」
「つまり…それが私だってお前はそう言いたいの?だったら見当違いも良い所。」
「ふふふッ、そう…かもねッ!!」
突然、相手が振り返ったと同時に何かを冴月へ向けて振り翳すと相手の右手首へ自身の左腕を曲げて手首同士を接触させる形で防ぐ。振り翳されたそれは折り畳まれた黒い鉄扇だった。咄嗟だった事もあり、教科書類や筆記具を入れたペンケースが床へ落下し散らばってしまう。
「ッ……!?」
「けれど、この方が手っ取り早いでしょう?相手の正体を知り、戦った上で真意を確かめる…その方が早い。」
冴月と彼女は至近距離で睨み合う。自分の右頬の側面に有るのは相手が用いる武器なのは間違いない。
無理矢理に振り払うと冴月は彼女から距離を取り、直後に振り返って素早く右足で回し蹴りを放ったが躱されてしまった。そして張り詰めた空気の中で2人は離れた位置で睨み合う。
「貴女が私と戦う理由は他にも有る……実は私、信徒なの。」
「なッ──!?」
冴月は耳を疑った。
目の前に居る彼女は自分が信徒だとそう語ったからだ。恐らく自分を挑発する為の手段でしかないのは明白、だが本当に彼女が信徒なのかは解らない。
「名前は神楽結愛……貴女の学年の1つ上。さぁ、今度は貴女が名乗る番。」
「…光織、倉本光織。それ以上でもそれ以下でもない。」
自身の仮の名を伝えた冴月は深呼吸し相手の出方を伺っていた。対する結愛の持つ灰色の瞳が冴月の方を見ては彼女もまた反応を伺っている様子でピクリとも動かない。
「……そう。悪魔でも名乗る気はないのね?自らが焼却者であり…そして我々の同胞達を狩っていると……言わないのね?」
「いい加減執拗い、授業に遅れるから何処か行って…はっきり言って邪魔。」
冴月が口を開いて彼女を威圧、睨み付けると結愛は鉄扇を拡げてそれを彼女へと向ける。
「口の利き方には精々気を付けなさい……もうその生意気な口が2度と利けなくなるかもしれない。」
「…だったらどうするの?その変な武器で私の事を殺すとでも言いたい訳?」
冴月は吐き捨てる様にそれを言い切ると
結愛がそれを振り上げて襲い掛かる。
振り下ろされた鉄扇から身を守る様に右腕で顔を守る様にし後退して躱したが右手首に僅かに掠って出血してしまった。白い肌を持つ華奢な細い腕から赤い液体がつうっと流れ出る。
「あら失礼?私、手癖が悪くて…クスッ……。」
「…そんなにお望みなら、この場でたたっ斬って──」
挑発された冴月が咄嗟に法術を使おうとした時、名前を呼ばれて振り返ると浩介が此方へ歩いて来る途中だった。どうやら自分の事を探しに来たらしい。
「おーい何してんだよ、先生もう来てるぞ?」
「ご、ごめん…少し探し物してた。ヘアピン落としちゃったみたいで。」
「ヘアピン?ふぅん……。」
そう言って誤魔化した後に振り返ると結愛の姿はいつの間にか消えていた。部が悪いと判断し逃げたのだろう。冴月は浩介と共に移動先の教室へ向かって歩いて行った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
3限の数学、4限の国語の授業をそれぞれ終えた後。
昼休みを迎えると普段と同じメンバーで昼食を取る。5限は体育だから着替えの時間も含めて少し急がなければならない。冴月が購買でパンを購入し屋上へ戻って来ると竜弘の右側へと腰掛けた。
彼の前を見てみると男用の弁当包みではない可愛らしい花柄の物が置かれている。
「竜弘、それ何?」
「これ?お弁当だよ。平井さんが僕にって作ってくれたんだって。」
「……ベントウ?」
冴月は首を傾げながらそれを見ていた。
彼が包みを解いて長い丸型をした赤い箱の蓋を開けてみると色鮮やかな具材が詰まっている。肉とアスパラを巻いた物、卵焼きに冷凍食品のハンバーグと唐揚げ。他にもブロッコリーとミニトマトが入っていた。
下の段を開けてみると黒いごま塩が振られたご飯が
敷き詰められている。和歌奈は恥ずかしそうに彼の左側で照れていた。
「ど…どうかな?男の子って何が好きか解らないから……色々詰めちゃったけど。」
「そんな事ない、どれも美味しそうだよ。」
竜弘が彼女へ微笑みかける横で冴月は姿勢を戻すと詰まらなそうにして包みを開いて菓子パンを食べ始めていた。
「何よ、ただ箱の中に食べ物詰まってるだけじゃない。」
「ちっちっちっ、違うんだなぁ倉本さん。弁当作って貰えるのって男からすれば案外嬉しかったりするんだぜ?な、優一!」
「え?あ、あー…うん……確かに嬉しいかも。」
隣に居た浩介が優一を見て頷くと同時に左手の人差し指を立てて左右に揺らす。冴月は視線だけ彼の方へ向けた。
「ふぅん…そんなに嬉しい訳?」
「勿論、それが気になってる相手からなら尚更…!!」
「気になってる相手……か。」
頷きながら視線を戻し、自分が手にしていたカスタードクリーム入りの菓子パンを再び齧った。
直ぐ横では竜弘が嬉しそうに弁当を食べている。
和歌奈と自分の距離が縮まったかと思えば再び突き放されるといった現実は何処か受け入れ難い。
竜弘を守る為に自分が居るのに何故か向こうの方が1枚上手な気がするのだ。無論、守るとは別の意味だが。
「…納得行かない。私の方がアイツと……。」
食べ終わると彼女は次のパンへ手を伸ばして袋を開いて無言で食べ進めて行った。
そして屋上から立ち去ってしまうとステュクスが冴月へ声を掛けて来る。
[心が乱れている。]
「…うるさい、何でもないから。」
階段を降りて2階付近のゴミ箱へゴミを器用に投げ入れると自分の教室へ向かって歩いていた。
未だ昼休みは終わらず、他のクラスでも誰もが話していたりと様々。その光景を見ながら途中で足を止めた。
「……ねぇ、ステュクス。」
[どうした?]
「人間を理解するのは難しい。人一人を理解するのに相当な時間が掛かる。」
そう呟くと彼女は擦れ違う生徒達を視線で追って眺めていた。
[当然だ。1度でその人間を理解するのは不可能……故に人は繋がり、そして触れ合うのだ。]
「……私の知る限り、焼却者には恋愛感情なんて不要…なのに私は竜弘の事を知り、興味を抱いてしまった。ステュクスはどう思う?恋とか愛…そういうの。」
[結論から言わせて貰うが御主には未だ早い。]
キッパリとステュクスは言い切ってしまった。
冴月にはそういった感情は早過ぎるという事らしい。
「えッ…?」
[今は己に課せられた使命、それを成す事を優先し行動するのが最善であろう。それにタツヒロ…奴の身に何が起きているのか……それを突き止めねば。]
ステュクスがそう話すと彼女は無言で小さく頷く。
「…うん……解ってる。」
そしてチャイムの音が鳴ると彼女は自身の教室へと体操着を取りに歩いて向かって行った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
5限の授業も他の授業と変わらず約50分後に終わり、放課後を迎える。帰りのHRも終わると竜弘と共に部室棟へ向かって歩いていた。
「平井さんは?」
「家の用事が有るから今日は来られないって。僕達も文化祭で何やるか一応話し合いだけして帰ろうかなって思ってるけど……冴月はどう思う?」
「竜弘に任せる…そうしたいならそうすれば良い。」
ジッと見つめていると彼は小さく頷いた。
同好会の部室の前へ着き、中へ入ろうと竜弘がドアノブへ手を掛けた時。冴月が彼の右手を掴んでそれを止めた。まるで何かを感じ取った様にも見える。
「冴月?」
「……中に誰か居る、下がって!!」
直後に冴月は竜弘の前へ立ち、ドアへ右足による前蹴りを入れて蹴破る。轟音と共に大きくドアが凹んで倒れると部屋の中に居たのはあの時見た長髪の茶髪の女性と似た誰か。窓の景色を見て振り返ると穏やかな笑みを浮かべ、笑っていた。
「お前…あの時の!!」
「……貴女、随分と乱暴なのね?女の子がドアを蹴って開けるモノじゃないってご両親から教わらなかった?」
「勝手に人の部室に入っといてよく言う。仮にこのまま入って来たら法術で消し飛ばす気だった癖に。」
冴月は黄金色の瞳で目の前の相手を睨み付ける。
少しずつだが殺気が立ち込めて行き、1歩間違えば
校内での戦闘に発展しかねない。
「先ずは自己紹介…私の名前は[[rb:哀羽彩葉 > あいばいろは]]、貴女に斬られた詩葉の姉。そしてッ──!!」
彼女が左手を突き出した直後、冴月目掛けて何かが放たれると彼女はそれを左手で掴んで止める。
狙いは彼女の後ろに居た竜弘だったらしいが目論見は外れた。それを投げ捨てて再び相手を威圧する。
「私は信徒…焼却者を狩る為に存在している。」
「──ちッ、ステュクス!!」
彩葉が右手へ赤と黒の装飾がされた剣を握り締めて差し向けて来た。
そして普段の様に法術を使用せずに冴月は法衣をマントの様に、そして刀を素早く左手へ握り締める。
これは悪魔で緊急の場合に用いる手段、冴月が詩葉と戦った後に独自の鍛錬の末に会得した物。
「我が葬具…スレイヴがお前の血を欲しがっている。さぁ、覚悟なさい……妹を傷付け、愚弄した貴様を私は絶対に許さない!!」
「はッ、妹同様に返り討ちにしてあげる。それに信徒の癖に葬具なんて生意気なのよ!!」
2人の後ろで竜弘は指輪を懐から取り出し、左手の中指へ嵌める。その場の雰囲気に呑まれたせいかじんわりと彼の両手には汗が滲み始めていた。
「冴月……!」
「…此処じゃ蒼月は振れない、何処か広い所じゃないと!!」
彼女は彼の居る方へ僅かに振り返り、そう伝える。
大太刀が振れて尚且つ戦える場所…思い当たる節は幾つか有るのだが放課後は何処も部活で使用している。ましてや迂闊に人を巻き込む事になり兼ねない。そして竜弘は悩んだ末に彼女へ伝えた。
「…そうだ、屋上なら!!」
「ダメ、遠過ぎる…!それは流石に──ッ!?」
2人が相談していると彩葉が剣を用いて後方の窓を破壊、ガラスが飛散し風が吹き込んで来る。
そして無言でクイクイと左手の指先を自身の方へ曲げて合図をした。どうやらついて来いという事だろう。冴月はつかつかと数歩程歩いて中へ入った。
「……良いわ、乗ってやる。」
彩葉が飛び降りた後、冴月も駆け出して窓枠へ。
左足を掛けて身を乗り出すと竜弘の方へ振り返る。
「私が受け止めるから、竜弘も飛んで!!」
「えぇッ!?僕も飛ぶの!?」
「男でしょ、グダグダ言わないでさっさと飛ぶ!!」
冴月は先に自分から飛び降り、駐車場へ着地。
次は竜弘の番で彼は恐る恐る窓枠から下を見てみた。幾ら3階といっても高い上に見ているだけで怖くなるが下では冴月が催促しながら待っている。
「ええいッ、どうにでもなれぇえッ!!」
意を決して彼は右足を窓枠へ掛け、外へ飛び出した。頭から真っ逆さまに下へ向かって落ちていくとあまりの怖さに目を閉じてしまった。このままでは地面と激突して即死、或いは悶え苦しんだ末に死ぬかの何れか。だがそれは違った。少し経つと彼は何かの温もりを感じ取って目を開く。自分の直ぐ左側には冴月の顔が有る。所謂、お姫様抱っこの構図で彼の身体は受け止められていた。
「さ、冴月…さん……?」
「ッ──!?さ、さっさと降りなさい!!重たいんだから!!」
赤面した彼女にポイッと地面へ投げられると結果的に竜弘は地面へ伏せる様に転んでしまった。
「いったぁッ!?」
「……コホン!アイツ追うから、早く立って!!」
冴月に促された竜弘はその場に立つと彩葉を追って街中へ駆け出して行った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
同じ頃、和歌奈は家の用事で外出していて
住宅街の有る通りを進んでいた。
店の有る方面へ向かっていた時、前から呼び止められる。目の前に現れたのは白髪の男で黒い上着を羽織っていた。彼の表情は穏やかで語り掛ける様に和歌奈へ話し掛けて来た。
「……すいません、少しお尋ねしても宜しいですか?」
「…?はい……何ですか?」
この辺では見かけない顔な上に何処か怪しい雰囲気が彼から感じられる。早い所、話を切り上げて用事を済ませようと思っていた。
「……駅へ行きたいのですが迷ってしまったみたいで。何方へ行けば良いですか?」
それは凄くシンプルな話で駅への道のりを聞いてきただけだった。和歌奈は安堵したのか彼と共に駅の方へ向かって歩いて行く。
何故なら自分が向かう店も駅の方面に有るからだ。
暫く道なりに進んで行き、人通りのある場所へ差し掛かると和歌奈が振り返る。
「後はこの道を真っ直ぐ──ッ!?」
突然、腹部へ痛みが走ると前屈みに倒れてしまう。
そのまま白髪の男へ寄り掛かる様に気を失ってしまった。
「……これでエサは手に入った。後はあの女と共にアイツを始末するだけか。」
その男の名は破壊者……嘗て冴月と戦った相手。
白い歯を剥き出しにし不気味に笑うと気絶した和歌奈を抱えて何処かへと向かって行った
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます