求める

「すいませんでした」

「久しぶりにヒステリックになっていたね。落ち着いてくれてよかったよ」


 いつの間にかアマリアの上で寝てしまっていたらしい僕は、彼の部屋で起きて、開口一回目で謝罪した。


 その時にはアマリアもいつものカチューシャを頭に付け、白衣を身に着け、いつもの服装へと着替えられていた。


「まったく、どうせ、また過去の夢でも見たんでしょ、クロ」

「う、うん」


 過去、それは僕の趣味が完全否定された時の事。


 僕の趣味は、女装。

 まったく僕を知らない人なら普通に騙せるほど、女装には自信がある。


 でも、それを受け入れてくれる人はアマリア以外にいなかった。

 それは仕方がない事と、頭では理解している。


 けど、心で納得が出来るほど、僕はまだ大人じゃない。


「…………アマリア、一つ聞いてもいい?」

「なに?」

「それは何? ものすごく血なまぐさいんだけど…………」

「あぁ、これかい!」


 言いながら僕に背中を向けていたアマリアは、目を輝かせ振り向いた。


 …………手にノコギリと細く白い腕を持ちながら。


「これは、昨日の女性だよ。目がものすごく綺麗でね。まずくり抜いたのさ。その時に綺麗な叫び声をあげていたから、声帯も気になって喉を切ってみたのさ。それでね――……」


 聞かなければ良かった。


 この後もアマリアは、いかに昨日出会った女性が綺麗かを語り出す。


 煌々と、楽しそうに。


 アマリアの趣味は、人体解剖。

 それも、美しいとアマリアが感じた女性のみを捕まえて、解剖する。


 女性にしか興味がなく、男性はどんなにかっこよくても冷たい視線を向けて追い払う。


 …………僕、一応アマリアの恋人なんだけど。なんで、僕以外の女性について、こんなに楽しく語るのさ。


 そう考えても、わかっている。

 僕は、どう頑張っても、どう着飾っても、男なんだ。


 アマリアも男。

 アマリアは、女性にしか興味はない。


 でも、僕が告白したら、何故かあっさり付き合う事を了承してくれた。


 それが意味わからなくて聞いてみたりもしたけど、うまくあしらわれてしまう。


 最初はそれでも良かったけど、共に過ごすにつれ、徐々に僕のうちに潜んでいた気持ちが溢れて、アマリアに執着し始めてしまった。


 最初は我慢が聞かず、本当に酷かった。


 僕以外を視界に入れると、自然とを発動してしまい、壁を何回も破壊させた。


 アマリアを外に出さないよう、部屋に監禁しようともした。


 それでも足りなくて、椅子に縛り付けようともしていたな。


 どれもアマリアは「やりたいならどうぞ?」と、何も抵抗しない。


 いつでも冷静で、僕を受け入れてくれるアマリア。

 だからこそ傷つけたくないし、悲しい思いをしてほしくない。


 アマリアが「してもいいよ」という度、僕の中にある良心に針が刺さり止まる。


 それが最初から分かっているからわざと言っていたのかと、今になって思う。


 僕が止まると、アマリアは必ず僕を抱きしめてくれていた。


 そして、こう言うんだ。


「いい子だね」


 と。

 ぎゅっと抱きしめ、頭を撫で。

 耳元で言うんだ。


 溺れないわけがない。

 好きにならないわけがない。


 いや、もうこの感情は好きという感情で収まっているのか。今の僕にはわからない。


 自身の手のひらを見つめていると、影が差す。

 上を向くと、頬を膨らませ見下ろしてくるアマリアの姿。


 何だろうと聞こうとすると、顎を固定され頭を動かせなくなる。

 わからず見つめていると、顔を近づかせてきた。


 そのまま、熱い唇が重なる。

 ゆっくりと、キスを落とされた。


 リップ恩を鳴らし、離れる。

 もう少ししていたかった気持ちを抑え、何故キスして来たのかアマリアに問うと「なんとなく」で、返される。


 顎から手を放され、解放された。


 時々、アマリアは今みたいな行動を起こす。

 意味が分からない。


 意味が分からないけど、嬉しいからいい。


 アマリアと重なった唇を触る。

 嬉しくて、たまらない。


「私の趣味を、受け入れてくれてありがとう」

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