第72話 買い物2


 八百屋での買い物を終えた俺たちは、次に食料品専門の雑貨屋に向かった。


 店の中に入ったら、塩コショウのほか小麦粉、各種の香辛料、砂糖、食油、オリーブの漬物、キュウリの漬物、ニンジンの漬物、キャベツの漬物などの漬物類が並んでいた。白菜の漬物が食べたくなったが、残念ながら白菜の漬物は並んでいなかった。

「まずは塩、そして砂糖だな」

「塩は分かるけど、砂糖を料理に使うの?」

「俺も詳しくは知らないけれど、何かの役に立つんじゃないか? 塩を入れ過ぎたら砂糖を掛ければなんとかなるとか」

「そうなんだ」

「さすがにそれはないんじゃないですか」

「でもあって悪い物じゃないし、どうせだから買っておこう」

「そうだよね」

「それはそうと、入れ物はどうする?」


 塩も砂糖も、というかこの店の売りものはほとんど計り売りだった。容器を持ってくればその容器に入れてくれるみたいだけれど俺たちはあいにく容器など持っていないし、この店では容器を売ってないみたいだ。


「いったん雑貨屋に戻って瓶を買うしかないんじゃない?」

「そうだよな」


 ということで俺たちは店を出て雑貨屋に舞い戻り、カゴを持って瓶を売っている一画にやってきた。

「塩とかコショウについてはそんなに大きな瓶は必要ないと思うけれど、漬物はある程度大きな瓶が必要じゃないか?」

「それでいいんじゃない。何を入れるにせよ蓋のしっかり締まるモノじゃないとだめだよ」

「うん。コルクの栓がついてるものならだいじょうぶじゃないか?」

「それでいいんじゃない」

「そういえば瓶から出すときスプーンがあった方がいいよな。あとで忘れずに買おう」

「うん」


 コルクの栓のついた小瓶を5つに中瓶を5つ、そして漬物用に大びんを5つカゴの中に入れて食器売り場に回ってスプーンを大、中、小、2本ずつカゴに入れた。

 そこで収納キューブを入れる袋があった方がいいと思いだした俺は二人をその場に残して急いで袋を売っている一画に行って長めの革ひものついた革製の小袋をひとつ手にしてふたりの元に戻った。


 精算したところ革袋はそれほどでもなかったが瓶は結構高くて、精算が終わったらチームの財布の中身がほとんどなくなっていた。

「悪いけど、お金が足りなくなりそうだから各自銀貨2枚ずつ出してくれるかい?」

「うん」「はい」


 二人から銀貨2枚ずつもらい、俺も2枚出して財布の中身が銀貨7枚くらいになった。これなら大丈夫だろう。

 収納キューブはズボンのポケットから先ほど買った革袋に入れて首から下げて上着として使っている胴着の中に入れておいた。




 再度食料品専門の雑貨屋にやってきた俺たちは、店の人に瓶を渡して塩コショウ、砂糖に食油、そして漬物類を買った。コショウ以外の香辛料は、使い方がわからななかったので買わなかった。妥当な判断だと思う。コショウはもちろん粉に挽いたものを買った。


「スープには出汁だしが必要だと思うんだけど、肉の代わりに干し魚を使えばいい出汁が取れると思うんだ」

「エド、料理できたんだ!?」

「いや、なんとなく思いついただけだけど」

「もしかして、それもレメンゲンの力なのかな?」

「うーん、そうかも知れない」

 なんでもレメンゲンの力のせいにしておけば説明しないで済むのでありがたい。


「先に乾物屋に寄ってから肉屋に回ろうか」

「そうね」

「はい」


 乾物屋では干し魚を適当に買って、出汁用に干し肉も買っておいた。野菜と一緒に煮ればちゃんとしたスープになるし立派な具になるに違いない。味が薄ければ塩コショウだ。生前3分間という割にけっこう長い時間かけていた料理番組で「味を調える」なる言葉を聞いたような気がする。まさに調味だ。

 乾物屋では乾麺も売っていたが、加熱板がひとつしかないので買わないでおいた。


「それじゃあ、次は肉屋だな」


 肉屋の場所は知っていたので俺が先頭に立って歩いて行った。人通りはそれなりだが午後からの人通りに比べればそこまで多くはない。


 肉屋では牛肉と豚肉と羊肉とトカゲ肉を買った。鶏肉が欲しかったが売っていなかった。

 店の人に聞いたところ、鶏肉は滅多に手に入らないそうで代わりに味がよく似ているダンジョン産のトカゲを仕入れているそうだ。そういえばギルドの鶏のから揚げなんだけど、あれってホントに鶏だったのか?

 おいしかったからいいけれど。

 他にハムとソーセージもあったので買っておいた。


 それぞれほうの木の葉に包んでもらっていて、受け取った俺はリュックに入れるふりをして収納キューブに収納してやった。生ものだからな。肉を自分で買ったのは初めてだったけれど、安くはないけどそれほど高いものではなかった。


「これで買い物は終わったな」

「明日からのダンジョンが待ち遠しいわ」

「そうですね」


 買い物が終わったところで街の鐘が5回鳴った。行ったり来たりした割にそんなに時間は経っていなかった。


「どこかの店に入ってお茶でも飲もうか?」

「賛成」「はい」


 適当に歩いていたら軽食屋があったのでその中に入り、いつものように4人席に3人で座ってお茶を注文した。もちろん俺がチームの財布から代金を支払っている。傍から見ると美少女二人を連れたどこかの御曹司に見えるかも?


 お茶がやってきたところで、明日のことを相談した。

「食べ物、飲み物の心配はなくなったから、あとはタオルとか着替えをある程度用意しておけば3泊はできそうだな」

「うん。じゃあ、明日から3泊で潜る?」

「明日はとりあえず1泊にしないか? あと1泊で6階層も全部見て回れそうだから」

「それじゃあ、1泊ね」

「ケイちゃんはそれでいい?」

「はい。大丈夫です」


「料理を作ることになるから、休憩時間は長めにとらないといけないよな?」

「そうね。そこは様子を見てから決めればいいんじゃない」

「それもそうか。それに一度スープを作っておけば、残ったスープは次飲めるし、肉なんかも焼いておけばすぐに食べられるものな」

「そういえば、パンを買うのを忘れてたね」

「まだ時間はあるからあとで買いに行こう。スープに浸したらおいしいし」


「わたしたちがダンジョンの中で温かいスープを飲んで温かい肉を食べてるのを他のダンジョンワーカーが見たら驚くよね」

「驚くというより呆れるんじゃないか?」

「たしかにー。アハハハ」

 今日のエリカはちょっとハイだな。明日からのダンジョンライフが楽しみなのは俺も同じなのでエリカのこの感じ、分からないでもない。



 お茶を飲み終わった俺たちはパン屋の場所を店の人に聞いて、パン屋に向かった。


 パン屋では丸い塊パンを10個ほど買った。丸い塊パンはこの国の標準的なパンで丸いフランスパンのようなものだ。一つ一つが結構大きいので包丁ナイフでスライスしないといけないけれど結構な食べでがある。

 パン屋にはそういった主食としてのパンのほかにクッキーなどのお菓子も売っていた。

「クッキーどうする?」

「お茶がないと、水だとちょっと」

「そうですね」

 確かに。ということで、クッキーは買わなかった。


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