第18話復讐の端緒

芳樹は、午後は、辰雄の運転するトラックに乗った。

銚子のいろいろな場所に置かれた新聞、雑紙、段ボールの回収作業だった。

(トラックへの廃品コンテナ積み込みは自動化されているので、見ているだけ)

倉庫に戻っての、フォークリフト作業も、全て辰雄がするので、芳樹は見ているだけの状態。


辰雄も芳樹が「三日でいなくなる」と察していたので、余計なことは言わなかった。

(アイドルやゲーセン、パチンコの話を時々、するだけ)

仕事は、午後5時にキッチリ終わった。


帰りは、事務係の渡辺理恵(30代前半のぽっちゃりとした女性)の運転する軽四で銚子駅まで送ってもらうことになった。


理恵は、とにかく愛想がよく、話好きだった。

「桑田さん、すごく、いい身体ね」

芳樹も仕事の緊張が解け、ようやく笑った。

「身体しか、使えないので」

理恵も、笑った。

「天下のW大さんでしょ?いいなあ、頭がよくて、身体も立派」

「女殺しかな?」


芳樹は、理恵を横目で見た。

少し腹が出ているが、胸も立派。

東都物産のムシャクシャついでに「抱きたい」と思ったが、それを言う勇気はない。


ほとんど渋滞もなく、軽四は銚子駅に着いた。

芳樹が

「また明日も、よろしくお願いします」と定例言葉を言うと、理恵は芳樹の手を握って来た。

「うん、楽しみにしている」


芳樹が驚いていると、理恵は、さらに強く握って来る。

「明日ね・・・楽しみにしているよ」

芳樹は、押された。

「わかりました、よろしくお願いします」

陳腐なリアクションと思ったが、理恵の本音が読めない。

(理恵の顏も赤くなっている)


理恵が、「あはは」と笑い、芳樹の手を、ようやく解放した。

芳樹は、小さく一礼。

逃げるように、改札を通り過ぎた。


「あれは・・・色ボケか?」

「抱いて抱けないことはないが」

「さすがに今日いきなりは、ありえん」


電車がホームに入って来た。

都内と違い、かなり空いているので、芳樹はそのまま座った。

鞄から、廃品回収のコンテナに入っていた「廃棄週刊誌」を取り出し、読み始めた。

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