青年は世界を巡る~廃墟の少女と出会い共に世界を旅する~

TMt

第1話 廃墟の出会い

広大な大陸エルデア。そこには剣と魔法が共存する世界が広がっていた。しかし、魔法を操れる者は稀少で、エルデアの人口の中で一万人に一人がようやく小さな火や水を出せる程度であった。


15歳のリアンは、大陸の南端にある小さな村で剣術を学んでいた。彼は剣の達人として名を馳せる一方で、無茶な行動でしばしば周囲を困らせることもあった。成人となり両親に見守られながら、未知の冒険を求めて旅に出た。


ある日、リアンは大陸の中央部に位置する廃墟の村に足を運んだ。この村はかつて栄華を誇っていたが、数年前の大戦で壊滅し、今では誰も住んでいなかった。リアンはその廃墟の中で何かを見つける期待に胸を膨らませながら、慎重に足を進めていた。


「ここには何があるんだろう…」


リアンは呟いた。

廃墟の静寂は不気味で、風が吹き抜ける音が耳をついた。


その時、彼はかすかな泣き声を聞いた。音のする方へ進むと、崩れかけた家の中に震える小さな少女を見つけた。


「大丈夫か?」


リアンは優しく声をかけた。


アリスは涙をぬぐいながら顔を上げ、震える声で答えた。


「…誰?」


「僕はリアン。君の名前は?」


リアンは静かに尋ねた。


「アリス…」少女は不安そうに答えた。


彼女の名はアリス、12歳の少女だった。


「心配しないで。僕が君を守るから」


リアンはアリスを抱き上げ囁いた。アリスはリアンの胸に顔を埋め、少しずつ安心していった。


リアンはアリスを連れて村を出ることにした。彼女は初めは不安そうだったが、次第にリアンに心を開き、二人は本当の兄妹のように仲良くなった。アリスには強大な魔法の才能があったが、彼女はその力をうまく制御できず、時折暴発してしまうことがあった。


「アリス、君の魔法は本当にすごい。でも、もっと上手に使えるようにならないと危険だ。」


リアンは優しく諭した。


「うん、わかってる。でも怖いの…」


アリスは俯いて言った。


「大丈夫、僕が一緒にいるから。少しずつでいい、練習してみよう。」


リアンはアリスの手を握りしめた。


旅を続ける中で、二人は数々の困難に直面した。ある夜、彼らは深い森の中でキャンプを張っていた。突然、野生の獣が彼らに襲いかかってきた。リアンは剣を抜き、獣と戦ったが、その数が多く、次第に追い詰められていった。


「アリス、今だ!」


リアンが叫んだ。


アリスは恐怖で体が震えていたが、リアンの言葉に勇気を振り絞り、手を伸ばした。すると、彼女の手から強力な炎が放たれ、獣たちは一瞬で焼き尽くされた。


「すごい、アリス!」


リアンは驚きと喜びを混ぜた声で叫んだ。


アリスは息を切らしながらも、リアンに微笑みかけた。


「ありがとう、お兄ちゃん。リアンお兄ちゃんがいたからできたの。」


リアンはアリスを抱きしめ囁いた。


「君は本当に強いんだ。これからも一緒に頑張ろう。」


翌日、二人は大陸の中心部にある砂漠の都「ミラージュ」を目指して旅を続けた。ミラージュは砂漠の真ん中にあるオアシスの都市で、豊かな水源と緑に囲まれていた。リアンとアリスは都に足を踏み入れ、その美しさに息を呑んだ。


「ここがミラージュか…。本当にオアシスみたいだ。」


リアンは感嘆の声を上げた。


「わぁ、すごい…!」


アリスは目を輝かせていた。


市場を散策していると、謎めいた占い師が二人に声をかけた。


「君たちの未来を占ってあげようか?」


リアンとアリスは顔を見合わせ、興味津々で占い師のもとに向かった。占い師は古びた水晶玉を取り出し、慎重にその中を覗き込んだ。


「おお、見える…君たちの未来には、偉大な試練と大きな選択が待っている。しかし、その先には希望の光が輝いている」と告げた。


リアンはその言葉に少し不安を感じたが、アリスの手を握りしめ、


「どんな試練が来ても、僕たちなら乗り越えられる」


と自信を持って言った。アリスも微笑みながら


「うん、一緒に頑張ろうね」と答えた。


その夜、二人は宿に戻り、これからの旅の計画を練った。砂漠の都ミラージュには、古代の遺跡が隠されているという噂があり、そこには強大な魔力を秘めた宝物が眠っていると言われていた。リアンとアリスはその遺跡を探索し、宝物を見つけることを決意した。


翌日、彼らは遺跡の場所を知っているという老人に出会った。

老人は険しい顔つきで、

「その遺跡には恐ろしい守護者がいる。多くの冒険者が挑んだが、誰も戻ってこなかった」と警告した。


しかし、リアンは決意を新たにし、

「僕たちならきっとできる」と言い放った。


老人はリアンの強い意志を見て、しばし黙考した後、

「ならば、これを持っていけ」と古びた地図を手渡した。


「この地図には遺跡への道が記されている。気をつけて行くのだぞ」と忠告した。


リアンとアリスはその地図を手にし、遺跡へと向かった。旅の途中、彼らは再び砂嵐に見舞われ、視界を失いながらも進み続けた。そして、ついに巨大な石柱がそびえ立つ遺跡の入り口に辿り着いた。


リアンは剣を構え、アリスは魔法の準備をしながら、遺跡の中へと足を踏み入れた。暗闇の中、彼らの前に現れたのは、巨大な石像の守護者だった。リアンはその石像に向かって叫んだ。


「僕たちはこの遺跡の秘密を解き明かすために来た!道を開け!」


石像は動き出し、リアンとアリスに襲いかかってきた。リアンは剣で応戦し、アリスは魔法で支援する。二人は息を合わせ、石像の弱点を見つけ出して攻撃を続けた。やがて、石像は大きな音を立てて崩れ落ちた。


リアンとアリスは疲れ果てながらも、遺跡の奥へと進んでいった。そこには、古代の宝物が輝いていた。リアンはその宝物を手に取り、

「これが僕たちの冒険の証だ」とつぶやいた。


しかし、彼らの冒険はまだ終わっていなかった。遺跡の中にはさらなる謎と試練が待ち受けているのだった。


「でも、これで終わりじゃないよね?」アリスが尋ねた。


「もちろん。僕たちの冒険はこれからも続くんだ。」


リアンはアリスの手を握りしめ、次の冒険へと歩み出した。

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