「泥の花」#なくさずの詩より
思い出した。蓮は泥の中でも輝けるのだ。この腐った世界の中で一人輝いている。無視は罪かもしれないけれど、いじめられているのも、いじめているのも、全て無視して本を読む貴女は美しかった。
はらりと髪が頬にかかる。それに手を伸ばして耳にかける姿は女神にも見える。
罵声と嘲笑が渦巻く、ここに花はあった。
でも、思うのだ。この花が枯れてしまうのは「これ」がなくなったらだろうか。それとも「なくても」花は輝き、そこに咲いてくれているのか。
気になる。
いつのまにか僕は三ヶ月ほどの「証拠」を集めて、教師ではなく「教育委員会」に提出した。周りは騒ぎだし、話は校長から先生へ始まり、保護者会の会長の子は、退屈をなくすかのように噂をした。
担任に知れ、教室中に知れ、制裁は行われる。
物語は簡単に終わった。どちらも認めて親同士の話、警察、色々なものが重なり、教室は「最初」の状態に戻る。
しかし、貴女は変わらなかった。
本を読んでいる貴女は綺麗だ。
そうか、もともと、ここは若さという泥だらけだったのだ。
僕は安心して、今日も貴女が読んでいる本と同じ本を読む。
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