第45話 ??ざまぁ⑲私の力
「いたいぃいぃぃいいいいい」
「さぁ!やってまいりました!少し前から地獄の檻の中で、そして冥界の門のあたりで『いたいぃいぃぃいいいいい』と喚き散らしていたザ・めんどくさい男のライエルの登場です!」
えぇと、なんでしょうかこれは。
準備ができたと言われて黒いお馬さんに乗せられて飛んできた先にあったのは……闘技場でしょうか?
そしてその端の方にライエル様が放置されています。
私は反対側の端に降ろされました。
「そして今、入場したのは精霊術師エメリアです!彼女はライエルの元婚約者で元パーティーメンバーですが、婚約破棄とパーティー追放を喰らうも、努力して地上から魔王や魔族の四天王を一掃し、人間を救った英雄であります!」
オォォオォォオオオオオォォオオオオオオオオ!!!!!!!
よくわかりませんが、観衆から歓声が上がったので、カーテシーを披露しておきました。
一体、どれ程の冥界の住人が来ているのでしょうか?
観客席の中央の一角には豪華な玉座が設えてあり、神様が座られています。
「よし、祭りの開催だ!この冥府は辛気臭くていけないから、たまにはいいだろう。今日は、"晴"れわたる、"露"天のもとで、"う"んざりする、"い"つメ"ン"たちよ、大いに騒ぐがいい!……ふむ、略してハロウィンだな」
神様……無理やりすぎるのではないでしょうか?
しかも、どこの世界の言葉でしょうか???
「エヴェディアァアアァァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!??????」
場内で大きな声を出している赤いデーモンの声に反応したのか、ライエル様が頭を起こして私を視界に捕らえ、恨みつらみが込められた恐ろしい声で私の名前を呼んでいます。
「まぁ、醜い男ですわね、エメリア様。あんな姿にまで堕ちてなおエメリア様を求めるなんて」
断じて求められてはいないでしょう。
「聞きなさい怪物よ!私の名はメロディアレーゼですわ!あなたの愛しのエメリア様はもういません。心も体も私のものになったエメリア様には指一本触れさせ……って、シルフ、なにをするのですか~~~~~」
ナイスですわ、シルフィード様。
風に揺られながらメロディアレーゼ様は闘技場の外に飛ばされて行きました。
「お~っと!まだ戦いの火ぶたが切って落とされる前から白熱する両者だぁ!」
メロディアレーゼ様は興奮した様子で叫ぶ赤いデーモンさんにまで無視されていますが、まぁいいでしょう。
私は淡い光が当たっている位置に移動します。
「それでは、はじめるぜ~~!!!ファイッ!!!!!!!!!!!!」
「エヴェディアァアアァァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!??????」
オォォォオオオ
開始と同時に蹲っていたライエル様が跳ね起きて飛び掛かってきました。
予想外の行動に、観衆が沸きます。
……が、予想通りではあります。
ライエル様にはあまり魔力が残っていないのは見ればわかります。
短期決戦しか勝機はないでしょうから。
「セイクリッドセブン!」
私は聖属性魔力で構成された7本の槍を放ちます。
「ぐぉおおぉぉぉおおおお!!!!!」
しかし、それを一切よけずにライエル様は突っ込んできます。
労しいことに、もう回避もできないのでしょう。
「バリア×160!」
「ぐおぉらぁああぁあああああ!!!」
「むぅ……」
そのまま私が貼ったバリアに突っ込んできて叩き割ってきます。
160枚あれば、十分耐えれそうですが、この攻撃力はなかなか厳しいですわね。
私は何枚かのバリアを動かしてライエル様の退路を塞ぎます。
「これまで地獄の檻でも、冥界の門でも全く動かなかったライエルが突進を繰り出した!しかし、余裕をもって防ぐエメリア!この勝負から目が離せないぜぇええ!!!!」
ウオォォオオオォォオオオオ
赤いデーモンさんが観衆を煽ります。
「ライエル様、こんなにまでなっても私が憎いのですか?」
「ぐぉおおぉぉぉおおおお!!!!!」
帰ってくるのは意味をなさない叫び声です。
こんなにまでなって……それでもあなたは……。
そういえば昔から言っていましたね。
『僕は僕の力で魔族を倒して世界を救うんだって』
「ライエル様、私は……」
『エメリア、倒すのが先だ。ここは冥府。倒しても意識は残るだろう。話すのはそれからだ』
そうですわね。シャドー様の仰る通りです。
「さぁ、エメリア様!この私を使って、あの怪物を倒すのですわ!」
私は魔力を練ります。
ライエル様が使うものと同じ灰色の魔力……無属性魔力を。
「おぉっと、エメリアが魔法の準備を始めたぞーーーー!!!!!!」
ウオォォオオオォォオオオオ
私はただただ深い悲しみを込めて魔力を注ぎ込みます。
これで終わりにしたいのです。
「あのぅ、エメリア様。ここにいるあなたの虜である美しき唯一無二の精霊の力も使っていただいて構いませんのよ?」
どうかライエル様を怒りの鎖から解き放ってあげたいのです。
申し訳ないのですが、そのためには自分の力で事をなさないといけないのです。
そのために、全ての力を捧げても構いません。
「って、おい、まじかよ?」
オォ……オォ?
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