第29話 石橋を叩いてお金が出るならば

 コドモトカゲ100殺の前に、死蔵されていた金の装飾品の浄化をした。

 もう、収入はどうでもいいが、浄化師は慈善事業、みたいなことになってはいけないので料金は貰う。

 だた手をかざしているだけでいいので、ジョウロで水を撒いている程度の労力。


 普段みんなで飲み食いをしているのと何処が違うんだ、と言うタラオの誕生日を祝った後、トカゲ100殺をして、8キロ9キロの回し車エリアに入って変わらないのを確かめ、5キロボスからのドロップも確認した。

 コドモトカゲは4分の1の確率で、柔軟性があり防御力も高い皮を落とした。


 六人衆に適性値の差が150を越えているのを条件に、コドモトカゲ100殺までの許可が出る。

 穢れモンスターは、大した攻撃力がないのに、穢れを払っても経験値的なものは変わらないらしく、倒すと基礎能力の上昇が早い。

 場の穢れがなければ動きも遅くなるので、根性さえあれば生産職でもクモザルくらいは倒せる。

 ダンジョン高専の生徒もやって来る。


「これからはみんな幸せになれるわ。内山君、ありがとうね」


 引率の望月先生にお礼を言われた。

 この人を見ると、まだ学生だったのを思い出す。

 教室に行ってもいないのだが、特別実習と言う名目で学籍は抜いてない。

 僕が卒業した学校、にして欲しいと言われた。

 安全が確認されたので、3年生の戦闘職を中心に、小トカゲを獲らせる。


 アイちゃんの誕生日の後、4キロはここまでと言うコドモ中トカゲエリアに行った。

 お義父さんと四分谷少佐の部隊が付き添ってくれる。

 まだコドモドラゴンより小さいが、この先は回し車エリアで、今までは別のモンスターは出なかったと言う。

 直立四足歩行なのに、穢れを払うとペタッとお腹が地面についてしまって、のそのそ逃げようとした。


「ぎゅ」


 以蔵に頭を蹴られて死んでしまった。


「あれ、上がらない」


 スキルレベルが上がらなかった。


「穢れてないとダメなのかな」


 四分谷少佐に言われて、穢れたのを探して、マゴラに倒させたら上がった。


「どうなった」

「穢れを払える範囲が広くなっただけです」

「ま、兎も角100殺だな。回し車はその後か」

「そうですね」


 ゴリラエリアの湧水に浄化をかけても、浄化水以外のものにはならなかった。

 5キロエリアは、ゴリラ、小トカゲ中トカゲの後、泥で作ったゴーレムのような汚泥鬼でボスエリア。

 富士森ではスキルレベルは上がってもあと1つ。

 今の処、日本中同じモンスターしか出て来ない。

 10キロの穢れ6キロは、入り口に小トカゲがいるのしか確認されていない。


 100殺が終わったら、場の穢れを払いまくって、同級生に中トカゲを倒させる。

 大きなモンスターを倒す度胸さえあれば、6キロ奥の経験値と、防御力の高い皮が手に入る。

 マサの誕生日を区切りに、回し車エリアに入った。

 当然保護者付き。


「中トカゲしか出て来ないな」

「お山はあるんですけどね」


 お義父さんと四分谷少佐が暇そうだ。


「なんか、あるように思うんだけど」


 ミャーちゃんがきょろきゅろしている。

 僕が突っついた山から、金塊が出た。


「あ、それだ」


 ミャーちゃんは崩れて消えて行く山の残土を、ビニール袋にしまった。


「なに?」

「ダンジョンメタル」


 10キロの米袋くらいの袋を傾けると、角に少しだけ何かある。


「普通は、ダンジョンの土を1トンくらい入れないと、見えるほど採れないの」

「初めて聞いた」

「鉱山て呼ばれている土を見付けられるのが探索者だけだから、ファーストが採集じゃないと興味ないかな」

「今更だけど、他のスキルの知識がほぼないね」

「お前は休みなしに働いてたから、無理はない」

「そう言ってもらうとありがたですけど、これ、探求者の仕事奪いませんか?」

「いや、今でも足りないから、取れた方がいいが、仕事きついからな。大概模範囚とか更生者にやらせるんだ。ここまでこさせるのはどうかな」


 それは行政担当が考える事なので、出て来る中トカゲを倒しながら、アイテムを取って帰った。


 通常業務で1キロ四方を浄化したら移動する。

 クモザルだけでなく、ゴリラも生産支援職の餌食になっている。

 みんな4級従魔が一緒なので、怖くない。

 戦闘職も3級を順調に獲れているようだ。フュージョンしているのもいる。

 結局回し車エリアはダンジョンメタル以外の目玉はなく、中トカゲエリアを浄化したら、討伐は他人に任せて、5キロに入ることにした。


 中トカゲエリアまでは保護者はいらないと思うのだが、同じモンスターでも4キロと5キロでは強さが違うので、保護者付きである。

 多少強くなった所で、浄化したら一緒、と言う結果だった。

 小トカゲエリアに湧水があったので浄化して、中トカゲエリアを掃討してお昼にした。


「で、行くの」

「はい、そのつもりでここでお昼にしました」


 状況次第、と言うことで、決めてなかった。

 慢心せずに、やはり1匹汚泥鬼を釣ってもらう。

 クレイアニメみたいに関節が無いように動く、頭に3つ丸い玉が三角に嵌っているだけで口がない3メートルの泥人形は、浄化すると自重で潰れた。

 銀二に頭を蹴らせたら、砂に変わった。


「あ」


 ミャーちゃんが袋を出してその砂を詰める。

 出たポーションオーブは、銀二が持ってきた。


「レアメタル?」

「そう」

「無理に回し車行く事はないのか」

「で、どうなんだレベルは」

「上がりません」

「じゃ、100殺終わるまでは一緒に入る」


 二人とも一人娘なので過保護。

 浄化しない汚泥鬼は、スキル無しの人間よりは速い程度だ。

 以蔵の前蹴りを躱せず、体と同じ色の上の玉を蹴られて、あおむけに倒れた。


「死なないか」

「ぎゅ」


 以蔵がご不満である。スクネは俺なら倒せたみたいな顔をするな。

 起き上がろうとうつ伏せになった後頭部に掌底を当てて、衝撃波を流して砂に変えた。

 出たのはただのマナコアだった。

 スキルは上がったがやはり、浄化範囲が広くなっただけだった。

 砂はミャーちゃんが仕舞う。


「二発蹴れば倒せるな」

「ぎゅっ」

「いや、これとんでもなく倒し難かったんだぞ。刺しても斬っても修復早いし、ぶっ叩いても衝撃が分散する」


 お義父さんが不満げである。


「どうやって倒していたんですか」

「頭を前後から同時にぶっ叩く。左右でも可」

「なるほど」


 ドローンは壊されなかったので、もう一回釣って、以蔵が二段蹴りで倒した。


「ちょっと、試して見たい事があるんです」

「何でもやってみ」


 もう1匹と言うか1体釣ってもらう。

 マゴラに気弾を吐かせたが、倒せない。


「ぎゅ」


 自分の出番だとばかりに、以蔵が蹴り殺す。


「これ倒すなら、ファミリアかマスターが浸透勁使えないと駄目ですね」

「それは報告する。9キロなら衝撃波取れるからな」

「そちらはお願いします。ミャーちゃん、忙しくない? 誰か仕舞い役呼ぶ?」

「これ収納すると探索が上がるっぽいの。いっぱい倒すなら一人じゃ無理でも、わたしにもやらせて。疲れないから」


 危険はないので、採集者を入れて促成栽培することにした。

 100殺の後、試しにスクネに倒させたら、一発で終わらせてドヤ顔された。

 ウサギってドヤ顔できるんだな。


 出来るだけ浸透勁使いを増やすために9キロの回し車エリアまで行ったら、浄化スキルレベル6の真価が発揮された。

 宝の山から、銀のエスニック怪人仮面が出た。


「銀製防護の仮面。穢れを防ぎ、精神を護る」


 精神攻撃は半減くらい。

 出た物は僕が必要な物として、チームと六人衆に配った後、軍に流された。

 巨大なモンスターは存在だけで威圧感があり、咆哮には恫喝が入っている。

 銀があるなら、当然金もあるだろうと推測され、10キロに僕を入れたがるが、まだ早いと思う。

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