第2話 【映画評】冥界婚(2021.12.17記)

【東京ドキュメンタリー映画祭2021の上映作品です】


1.作品データ


題名;冥界婚

監督;北村皆雄

制作;2018年

上映時間;104 分


2.映画祭の資料より


[内容紹介]

韓国には、独身で亡くなった男と女を死後に結婚させる風習がある。本作では、遠洋漁業で死んだ34歳の男と、失恋で自殺をした27歳の女性を、金石出というムーダンが冥界婚させる。シャーマンが口寄せし、男性の霊が従兄に憑依して自己の死の詳細を語るシーンは圧巻。死者と生者の感情が交錯し、哭きと恨のめくるめく世界が現出する。


[監督のことば]

1980年から韓国の冥界婚を2回撮っている。3回目は決定版を作ろうと1999年に撮影した。しかし、2日間続くクッ(祭儀)の歌、語り、呪文を、全訳してくれる人がいなかった。それができなければと、私の気持ちも遠のいていった。2014年、韓国の多島海でのセウォル号沈没の悲劇は、亡くなった若者たちの「冥界婚」を各地に生んだ。私はこれこそが冥界婚(死後結婚)だという記録を完成させたいと思った。2年かかってしまった。


[監督プロフィール]

北村皆雄

1942年、長野県出身。映画監督、TV製作者。沖縄・韓国・日本・ヒマラヤ・チベットで数多くの作品を作る。日本映像民俗学の会代表、ヴィジュアルフォークロア主宰。代表作に、映画『カベールの馬』(1969)、『アカマタの歌』(1973)『見世物小屋』(1997)『修験』(2005)『ほかいびと~伊那の井月~』(2011)など。現在『チロンヌプカムイイオマンテ』を製作中。


3.兎平亀作の意見です


ムーダンは、仏教と儒教が習合したものである。本映画に見る限り、道教も入っているようだが、単なる折衷ではない。異質な思想同士の緊張関係の産物である。


なんだかヘンテコなものに見えるが、日本にだって、神道とか荒神とか明神とか八幡と言った摩訶不思議なものがあるではないか。


冥界婚はシャーマンの一人芝居などではなかった。シャーマンの投げた球を受け取る「キャッチャー」がいて、二人のコミュニケーションが、会衆全体を熱狂の渦に巻き込んで行く。キャッチャーがオーバー・ヒートしたら、シャーマンは火消しに回る事もある。


まるでフリー・ジャズのセッションみたいだと思った。

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