第107話 初めて草を生やしてみた魔王


 クラスメートたちの反応も変わっていた。

 前までは恐れを抱いた目をしていたのだけど……。


 俺からプリントを受け取った時の『目』は、いつもと違った。

 輝いているというか、まるで有名人を見つけた時の目をしていた。


(……やっぱりなんかあったよな……)


 昨日だ。昨日、俺は何か大きなことをやっていたらしい。

 ……でも本当に身に覚えが無いんだけど……。

 強いて言えば、HRサボってイヤホンでリスニング勉強してたことくらいだし……。


「なあ聞いたか?」


「ああ。城ヶ崎じょうがさきってスゲーよな」


「流石は極悪ごくあく非道ひどう六神ろくしんじゅう及び魔王まおう


「やることが違うよ他の奴とは」


「それなのにいつも通りだぞ今日も」


「バッカおまえ、ああいうのが当たり前なんだよ」


「俺なら我慢できずに近所に勇姿を語ってるぜ」


「強者の余裕ってやつ?」


 と男子たちがヒソヒソ。

 女子たちは、


「ねえねえ」


「知ってる知ってる」


「凄いよね~」


「ちょっと話しかけなよ」


「え~? 無理だって」


「逆に話しかけづらいよね」


「うん、雲の上の存在って感じ?」


「芸能人とかアイドルに話しかけづらい的な?」


「それそれ」


 とヒソヒソ。


(………………マジか)


 なんか凄いことになってんだけど。

 汚名返上を通り越して話しかけづらいほどの人になっちゃってるよ。


 俺今、何食わぬ顔で自席で頬杖ついてるけどさ……。

 気を抜いたらニヤケちゃうほど嬉しいんだけど。


 え、オレ何かやっちゃいました?wwwwwwwwww


(ヤベーよ)


 これアレだろ。アレ的なアレだろ。アレ的なアレ的な。

 ほら一軍男子とかあるじゃん。


 もうそこまで上り詰めてるよ俺。

 いや一軍どころじゃないわ。


 魔王軍だよ、魔王軍。

 魔王軍男子だわ俺。


 魔王だけに、なんつってwwwwwwwwwwwwwwwww


 ちょ、やべ、そう考えると緊張してきた。

 だってずっと素朴素朴言われてて46億軍男子だったんだもん。


 急にランクアップしすぎだって。

 困るなそれは(大喜び)。


「ところでトアリさん、ゴールデンウィークの予定はあるの?」


 と、加藤かとうが。


「今のところ金色になること以外の予定はありませんね」


 と、トアリが一緒に教室に入ってきた。

 加藤は俺の右隣に、トアリは俺の左隣(窓際最後列)に座る。


「城ヶ崎くん! 昨日はお手柄ね! 見直したわ!」


 朝からうるさっ。おまえは相変わらずだな。嬉しいけど、もうちょっとボリューム落とせないの? 声量の調節メーター壊れてる?


「おや城ヶ崎くん。舞い上がって羽ばたくGになってないですか?」


 おまえも相変わらずだな失礼度。


 す、スゲーな。

 他はガラッと変わってんのに俺を取り巻く世界は全然変わってねえ……。


 いやまあ内心ホッとしてる自分が居るけども。

 この二人がブレたらブレたで恐いし。

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