Chapter5:「ワン モア プレイヤー」
Part32:「リコンストラクション・フォース」
RP AFの大隊は、廃墟での活動行動を完了させて順次撤収を開始。
ヴォートも殿、撤収の最終調整を一個中隊とその指揮官に任せ、一足先に彼らの「拠点」へと帰還する運びとなり。
そしてそれには星宇宙とモカも同行する事となった。
ヴォートと星宇宙たちは、一時的に車上の人となっていた。
乗車するは軍用の中型四輪駆動車。ヨロズがハンドルを預かり、ヴォートは助手席に座し。星宇宙とモカは後部座席にお邪魔している。
その四輪駆動車を筆頭に、他の軍用車た軽装甲車からなる小規模な車輛部隊が。人々の往来でできた荒れ地の轍を行き、帰還の途に就いている。
「――うぉ、見えた」
程なくして、車輛部隊の進路上に「それ」は見え。星宇宙は車上で身を乗り出して思わず声を零した。
――それは、拠点施設。いやもはや街を成す、広い土地を有するコミュニティエリアだ。
なだらかな丘を降りた先の広い土地に。ある程度の均一性を持つ、整備された建物施設で構成される、街が広がっていた。
それこそ、RPのこのプライマリー・ダウンワールド地方での活動、開拓拠点。
〝プライマリー・フロント〟と呼ばれる街であった。
Reconstruction Point――通称、RP。
「復興起点」の意味の名称を持つその組織。
その実態は、この荒廃した世界で着実に復興を進める。巨大な規模を誇る「国家」であった。
拠点――いや、首都は。このプライマリー・ダウンワールドより東にある地方に、〝リコンストラクション ワン〟と名称される都市市街を持つ。
その地で興された小さな生活コミュニティを原点とし、RPは長い年月を駆けて復興拡大。
現在ではこの荒廃した世界の各地方、地域に復興した都市・市街・コミュニティを。そしてRP AFの方面隊を持ち。
まもなく総人口100万人へと回復させる勢いの、その名が現す通りの復興国家であった。
未だに未復興、未開拓の地であるプライマリー・ダウンワールド地方へは、少し前に進出を開始。
他の勢力組織と衝突、ないし小競り合いを繰り返しながら。その物量に物を言わせた、いささか強引さも否めない姿勢方針をしかし厭わず、この地での復興開拓を着々と進めていた。
ヴォートと星宇宙等を乗せた四輪駆動車と車輛部隊は、間もなくそのこの地の復興の前線拠点である、プライマリー・フロントの街へと到着した。
厳重に守られる正面通用門を、いくらかのチェックを受けた後に潜り。街内へと乗り入れ、整備された街路を行く。
街の内部の造りは、元よりこの地に打ち捨てられていた小さな集落を再利用し。その周りにRPの持ち込んだ、簡易展開式の建物や、応急造りの建物を設置して広げたものだ。
それゆえ、完成された都市の華やかさなどは無くシンプルなものだが。
しかしその広くに渡って見える光景には、その全てに確かによく整備された様子が見え。何より行きかう人々には飢えや困窮の様子が無い。
RPの物資やマンパワーの潤沢さが、そこからだけでも見て取れ。
そしてRPからすればこの街ですら、一つの前線、一方面隊でしかない事実背景に。星宇宙等は事前知識としては知っていて尚、また改めて驚かされた。
そしてそんな星宇宙等の感嘆に止めを刺すように。上空をRPの気象観測用の軽飛行機が飛び抜けて行った。
ヴォートと星宇宙等を乗せた四輪駆動車は、そんなシンプルながらも整備された大きな街の内を進んで抜け。
程なくしてRP AFの駐屯地施設にたどり着いた。
RP AFのプライマリー・フロント方面隊の司令部が置かれる重要な施設ではあるが。しかし同時にここも、このプライマリー・ダウンワールドに展開するRP AFの多くの部隊施設の一つに過ぎない。
その駐屯地の、司令部の入る仮設庁舎に。ヴォートの案内で星宇宙等は案内される運びとなった。
「――……」
「ほぇぇ」
星宇宙とモカが通され案内されたのは、司令部仮設庁舎内に在る一室。そこは大隊長用の執務室――要はヴォートの仕事部屋であった。
今はヴォートとヨロズは、司令部への事後報告のために一度離れており。二人はその間にこの執務室で待って欲しいよう言われ。
接遇用のソファに腰かけて、待ち時間を過ごしつつ。モカの温い驚きの声を横に聞きつつ、星宇宙はここまでにあった色々を思い返していた――
「――繰世 よろず……!?」
シーンは一度、先の廃墟街での邂逅の場へ戻る。
ヴォートと一緒に現れた、金髪ショートボブの「武装アイドルJK」といった様相の美少女を前に。
星宇宙が言葉にしたのは、その美少女の本名。
星宇宙はその存在を知っていた。
明かそう。
「繰世 よろず」という存在は――音声合成ソフトキャラクター。
すなわちモカと同じ、本来は電子・空想上の存在だ。
詳細にはモカと同じ音声合成ソフトの制作開発会社が作った、音声合成ソフトのイメージキャラクター。
モカとは同時期に発売された同期的な存在とも言える。
《……えええええ!?》
《うっそん!?》
《よろずちゃん!?》
星宇宙が一度手元を見れば、それまで切迫していた状況からコメントを忘れ見守っていた視聴者の皆も。
堰を切ったように驚きのコメントを流している。
《ど。どういうこと!?》
「み、みんな落ち着いて……一つ一つ確認する……っ!」
そんな驚きで溢れるコメントに、落ち着くよう返事を返しつつ。またヴォートとヨロズの方へ視線を上げる星宇宙。
そのヴォートとヨロズの方あっては、星宇宙等に反して驚く色はさして無く。
どころか「やはりか」とでも言うような、全てを想定していたような様相を見せていた。
「どういう……」
「わぁーっ!ヨロズちゃんだぁーっ!」
「え」
そんなヴォート等に向けて一番に尋ねる声を向けようとした星宇宙だが。
それを遮り、何か驚きつつも嬉しそうな声色が横から上がった。
見れば、モカがヨロズの元へと駆け寄り相対。
「ヨロズちゃーんっつ、会えてうれしいよぉーっ!」
まるで親友、いやその通り親友との再会を喜ぶそれで。
大変に嬉しそうな笑みを浮かべて、ヨロズの両手を取ってニギニギと握り、軽くぴょんぴょんと飛び跳ねるスキンシップの様子を見せ始めていた。
「あー、はいはい。‶あたしとアンタ自身〟は初対面なんだけど……まぁいいか、アタシも嬉しいよ」
そんなモカに。一方のヨロズは少し呆れ困った様子で「そんな言葉」を零しながら、後輩か妹でも宥めるような様子を見せつつ。そしてしかし邂逅を喜ぶ旨を同じく返して見せる。
「あ、そうか……「この」モカとヨロズは初対面。でも同期としての知識は有してるのか……」
そんな二人の様子を背後から見つつ、聞こえて来た二人の会話に、星宇宙は何かに思い当たり言葉を零す。
説明すれば。
モカとヨロズは音声合成ソフトとしては同期だが、「今の」二人は実際の面識は無いのだ。
しかし二人の様子は、互いを存在としてはすでに知っていたらしきそれ。
その様子から、星宇宙は二人に確かな自我と経歴があり。そしてそれがイレギュラーなものであろうことを改めて感じたのだった。
「……っと、それも気になるけど――」
しかし星宇宙はそこで気を取り直し、改めてヴォートへと視線を移す。
「えっと、大隊長さん……?」
「とりあえず、ヴォートでいい。君の尋ねたい事は分かっている、そしてこちらからも色々と尋ねたい事がある」
探る様に呼びかけた星宇宙の言葉に。
ヴォートはまず端的に名乗り。そして星宇宙の意図を察し、それを汲み取って言葉を返す。
「少し長い話になるな――ここは安全じゃない。よければ自分等の拠点に一緒に来てくれるか――」
そしてヴォートは零した後に、星宇宙にそう願い入れる言葉を寄越した――
「――……」
そこまでが、ヴォート等との邂逅からここまでの経緯だ。
元々よりRPとの接触が目的であったため、その目的が成せたことは都合が良かったが。
思わぬ形で、それ以上の膨大な謎が生まれてしまった。
あの、ヴォートと言う大隊長は。このTDWL5のネームドキャラとして登場した覚えが無い。いやそれ以上に、何か明らかに星宇宙の事情を知っている風だ。
そして、繰世 よろずが一緒に存在している事実もまた謎。
それらに、星宇宙の頭の内は思考がグルグルと巡っていた。
《どーいうことなの……》
《まさかの展開》
《あのヴォートさんは何者……?》
コメント欄には、星宇宙とまったく同じ心情なのだろう、数々の疑問を表すコメントが流れている。
「いや、正直いくらかの予想は着いてるんだけど……」
その視聴者の皆のコメントをウィンドウに見つつ。星宇宙は漠然とした色ながらもそんな言葉を零しかけるが。
しかし直後、執務室の扉が開かれ。
そしてその回答を持つ張本人が、現れ入室して来た。
「すまない、待たせてしまった」
入って来たのは他でもないヴォート。今も漏れなくヨロズも一緒にいる。
「いえ、大丈夫……そっちは大丈夫なのか?」
それに遠慮と合わせて、聞き返す言葉で返事をする星宇宙。
「襲撃が起こっての出動は日常茶飯事だ。上にはいつも、簡単に報告して終わりだよ」
それに支障ない旨を返しつつ、ヴォートは対面のソファへと腰を降ろして星宇宙等と相対した。
ヨロズにあってはその背後の壁に背を着けて、腕組みの姿勢で待機する姿に入る。
「……」
改めて、ヴォートの姿を見る星宇宙。
その姿風体は、初めてあった時にも思ったが。どこか狡猾そうな雰囲気で、言っては申し訳ないがどこか陰険な悪だくみを得意としていそうな感じ。
しかし――今注目しているのはそういった印象では無く。
今はキャンペーンハットを脱いで明確になった、その顔立ち、造形、さらには髪色。
ヴォートと言う名の少佐のそれは、しかし星宇宙にとって馴染み深い――日本人のそれであった。
「あの……あなたは……」
そのヴォートに、とりあえず言葉を掛けたはいいが。
一体何をどこから尋ねるべきか。あまりの驚きの数々に、纏まり切っていなかったため、星宇宙は続く言葉に困り声を詰まらせてしまう。
「――〝TDWL5を、生身でプレイする〟のはスリルがあるだろう?」
「……え……――えっ?」
その星宇宙に。
ヴォートが誘う様に掛けたのは。そんな驚きの一言であった――
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