君は13人の姫と恋をする

星 恵《ほしめぐま》

第1話 きっかけはロバなんかを飼う事だった。

天井あまい 杉它すぎたそれが僕の名前である。ドが付く程とまでは言わないけれど、そのロバが妹と一緒に来るまでは残念ながら天井家は酷く貧乏だった。


両親も僕も大反対したのだけれど、

そんな事を気にする事なく


元から何かを成し遂げて大事を家に

持ち込んで帰ってくる妹は、ある意味で僕らの期待を裏切らずに妹本人の誕生日に猫でも拾ってきましたのノリと勢いでロバを家に連れて帰ってきたのだった。


─いやいや、待て待て…

そのロバは何をどこで?どうやって?


慌てふためく両親の質問に対して

妹は涼しくこう答えた。


『わらしべ長者です。』


9/25 御歳13歳


天井あまい稀代きたい


物々交換だからこそ、返品交換クーリングオフがまず出来ないから、本気で両親は妹にどこから連れてきたのか訊ねるが妹は黙秘を続けている。


僕らを養うだけでも大変なのに卵を産む鶏やウズラでもなければ、猫でも犬でも文鳥でもない、本当の意味で何処の馬の骨かもわからんロバなのである。


対するロバは妹が先に『モイティ』と命名しており、一畳の庭に最初からウチの子です。みたいな態度で図太くふてぶてしい態度で不細工な欠伸をしている。


─なんだコイツッ…可愛げないわぁ。


と心の内で唾を吐いた僕だったが、

1切れのスーパーのケーキを囲んだ翌日の朝、

呆気なく家でのパワーバランスが崩壊した。


このロバ…モイティは、

”うんこ”の代わりに金を産んだ。


歯を剥き出し舐め腐った笑顔を僕に見せるロバと

寝起きの真顔で寝ぼけてる妹が愛おしそうに


『おはよう、モイティ。』と言うのだった。


「…は?」


と頓狂な声を上げたのは両親と僕だった。


かくして、僕ら天井家は

本物のわらしべ長者になってしまったのである。

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