18.神様だって遊びたい

 今回は「半身転生」の作中に登場する神を自称する存在——神様について話していこうと思います。

 設定の練り方というよりは、単純なネタバラシです。


 まず、作中での神様の行いを振り返ってみましょうか。

 千葉新が事故に遭い魂が分裂した際、神様はどちらかが異世界に行く必要があると言いました。

 まず1ダウトです。

 別人として日本に留まらせることもできました。

 その場合別の戸籍などが必要になるわけですが、そのくらいはわけないです。

 何なら周囲の記憶ごと改ざんして、本人すらそれに気づかないようにすることも出来ました。

 なので神様はある意味自分の欲求も含めて彼を異世界に転生させました。


 次に、神様は事あるごとにアラタに対して力を与えます。

 【不溢の器カイロ・クレイ】をはじめとしたエクストラスキルの大半は神から下賜されたものですし、それ以外にもいろいろと便宜を図っています。

 その中でも神様はアラタに対してあることないこと吹き込んでいます。

 数えただけでも4個くらい嘘をついていました。

 もう何も信じられないですね。


 その次の大きな節目は、やはり時間の巻き戻しでしょうか。

 これはアラタというよりノエルの願いによるものですが、神様は異世界の時間を巻き戻しました。

 これによりアラタが魔王となった世界線は消え、ジークとナナが勇者のクラスに選ばれた世界線も消えたわけです。

 その後どんなクラスに選ばれたのかは分かりません。

 可能性は無限ですから。


 その後、神様はまた嘘をつきます。

 一度死亡したアラタに対し、魔王の因子から完全に決別したければスキル、クラス、魔術を放棄しなければならないと迫ります。

 ここは作中でも明確に否定されていますね。

 神の御業をもってすれば案外簡単に魔王の力をアラタから分離することができます。

 つまり彼が能力を失う必要はなかったのです。


 そうして最後、エピローグでもう一度登場します。

 アラタの死後、彼を転生させることが出来ないので天国とも地獄とも呼ばれる場所に案内します。

 これはシステム的な話なので、神の意志は介在しないです。

 もっとも、この時点で目的を達成したと思っていた神様は大層ご機嫌でしたが、すぐにそれが間違っていたことに気付きます。

 可哀そうな存在です。


 とまあこんな感じで神様は「半身転生」の世界に干渉してきました。

 なぜ?

 あれだけの力を持っておきながら、なぜ神様は下々の人間のことを気にするのか。

 答えは単純で、神様自身が人間に興味があるからです。

 人間になってみたいとすら思っています。

 だからアラタを受肉体として育てることに決めたのです。


 受肉体とは、神性存在が人間の存在する世界に降りるための器のこと。

 ベルフェゴールもラグエルも、ヤマタノオロチもそれぞれ受肉しています。

 受肉すれば人間世界のレギュレーションに従うことになるので、最低限食事や睡眠は必要となります。

 その代わりに世界にあふれるあんなものやこんなものを貪りつくすことができるわけです。


 ただ、異世界の神ともなれば受肉体もそれ相応のものが必要となります。

 下界に降りるとき、神様は能力を相当制限して受肉するのですが、それでも器の強度が足りないと肉体が弾け飛びます。

 だから出来る限り強靭な肉体が必要なのです。

 ここで言う強度は物理的、魔術的、精神的といった要素にとどまらず、どれだけ神本来の在り方に近いのかという要素も含まれます。

 つまり神の座とやらに手をかけたアラタは最高の素材だったということです。

 もっとも、そうなるように神様が手塩にかけて育てたわけですが。


 結果的に神様の道楽が世界を救ったと言っても間違いではないわけです。

 ただ、そもそも魔王関連の混沌が神によってもたらされた可能性は否定できません。

 作中にもあるように、ラスボスである魔王ユウ——古木名勇は異世界転生者です。

 彼を野放しにして魔王化技術の開発を放置したのは単純に神様の職務怠慢ですし、何なら後押しすらしていました。

 アラタの師匠アラン・ドレイクにも同じことが言えます。

 彼は老人となってから不老の呪いをかけられていました。

 やったのはもちろん神様です。

 数百年の時を生きるドレイクがひょんなことからユウと出会い、2人は世界を破壊するための魔王化技術を開発します。

 理由は面白そうだったから。

 サイコパスな暇人に永遠にも等しい時間を与えれば、まあそうなるよなという話でした。


 実は神様は魔王化技術が実際に使用されることを望んでいました。

 もっと言えば、アラタが一度魔王になることを望んでいました。

 受肉体としての強度を底上げするため、さらに強度を確かめるための最終テストとして最適だったのです。

 ただ、魔王に侵された肉体を使うのはお古を着込むようで嫌だな、それならそれらしい理由を探して時間を巻き戻すか、そんな思考で神様は作中での行動に出ました。

 本当に自分本位極まりない存在ですが、神様は世界そのものなので文句のつけようがありません。

 神様だって遊びたいわけですし。


 アラタの死後、ベルフェゴールが彼の遺体を管理することになりましたが、最後の最後に彼は条件付きで肉体を神様に与えることを許可しました。

 最終的にどんな形に落ち着くのかは分かりませんが、アラタの肉体であれば少なく見積もっても300年は使えます。

 それだけの強度があるのです。

 そんな肉体を使って神様は何を見て何をするのか、そういう話を書くのもありかなと思います。

 まあ優先順位が低いので本当に書くとは思いませんが。


 今回はこんなところで締めようと思います。

 次回は「半身転生」を長々と書きすぎた反省をしようと思います。

 いやもうほんとに。

 短くまとめる能力って何?

 みたいなことについて書いていこうかな。

 では。

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