20番ホール 月はいつもそこにある

「ここで決めるぞ」


「ああ」


 言葉少なめに、ケンカしたままの舞浜学院がアドレスに入ります。

 さあ。ここが決着の舞台となるのか、国内最長級のパー7、仮設3番ホールに来ています。

 堂々の千ヤード超え、驚きの国内最長級1174ヤード。これを高校生たちがどう攻略してくるか、打数よりもその姿勢に注目が集まるホールです。

 オナーは圧倒的優位にある舞浜学院。この3番をイーブンとするだけでも優勝が決まります。その大事な第1打。


「実のところを告白すると、君たちにはすっかり触発させられてしまっていてね」


「? なんのこと?」


「デュアルショットさ。それ以前にも動画はたくさんみてきたが、先月に対戦した時点ではまだ君たちのを見ていなかった。オレらが同年代のショットに感銘を受けたのはあれが初めてでね、衝撃だった。だから誇ってよ。君たちは君たちの力ゆえに破れるんだ。それは決して恥ずべきことじゃない。胸を張って帰るといい」


「だからなんのことだってば」


「まさか……」


「水守さんにはわかったらしいね。そう、オレらもね、編み出したんだよ。デュアルショットと表現して恥ずかしくない真の打法を」


「あなたたちも? デュアルショットを?」


「以前あれほどの猛威をふるったものを恥ずかしいもの呼ばわりとは恐れ入りました。厳密にはかつての技もデュアルショットにはちがいないのですが。真のショットとはつまり、なんらかふたり同時打ちのようなことをするということ。ふたり協力打ちではなく」


「あたり! まあ期待して見ててよ」


「わかったところで防ぎようはない。ひざを折れ、そして去れ」


「いやな上から目線ん〜〜っ!」


「ごめんよ、バカ真琴はこんな言い方しかできないやつでね。彼女は我が校の女王様だから」


「彼女だけじゃなくって。自覚ないかもだけどきみもだよ、ヤマトくん。物腰が柔らかくったって高いところから発言しているのは同じなの、気づいてる?」


「そう? だったのかな? だったらごめん」


「いいよ、謝んなくていい。そう言わせてしまうのはボクたちが弱いから。ボク——」


 みかねたジャッジの制止が入りました。これはペナルティではありません。


 両校とも少し長かったわね。ふたホール回って緊張が解けたところだったのよきっと。

 このひと月どうしてたとか、どんな練習をしたとか。

 誰よりもお互いのことがわかる間柄だもの。クラスメイトよりも家族よりもわかり合える敵同士。

 不思議よね、この試合を終えればきっと友情が芽生えることうけあいなのに、今は戦わなければならない。


 はたしてそんな内容だったでしょうか。まなざしにはかなりきつめの輝きが灯っていますが。


「オレらも区別をつけるためにね、名前をつけてみたんだ。以前のものがアイン、今からみせるこいつがツヴァイさ」


「なにそれ」


「数字ですね、ドイツ語の」


「ただの数? 雑ゥ!」


「フフっ。でしょ? いいアイデアが浮かばなくて。もういいやってなってさ」


 舞浜は不敵な笑みを残してアドレスへと。

 ボールを弟の大和がセットすると? 姉弟ふたりでその傍らに立ちます?

 まるで北端商業のようではありますが!?

 レフティの弟がボールの右に、オーソドックスの姉がボールの左で構えます!?


 まさか!


 ここは国内最長級の超ロングホールだ。ここが勝負どころとふんだんだろう。出るぞ舞浜の新技が。


 ドライバーのヘッド同士をつき合わせて!?

 今ゆっくりと振りかぶる、なんと同時に!


「これがツヴァイだ!」


「!!!!」


 そのまま同時に打ったァーーーーッ!

 ボールはティグラウンドの高さを維持したまま、どこまでもどこまでも低く飛んでゆく!


 ヘッドのトゥとトゥで打つなんて!? 信じらんない! そんなの一瞬でもミートがずれたらシャンクじゃないのよさ!

 まるで化け物ね。いったいどんなタイミングで打ってんのよ……。


 なんということでしょう、カメラがまるで追いきれません! ボールを見失いました!

 もれたのは2打目地点で待機していた撮影クルーの悲鳴です! おそらくは彼らの頭上を超えて、遥かその先へ。どこまで行ってしまうのか舞浜ボール!


「ツインズがツインショット、をね。なんの冗談なんだか」


「ところが現実なのです、受け止めねばなりません。わたくしたちがそうであったように、彼らもこの1ヶ月をただ指をくわえて過ごしていたのではない、という表れでしょう。追いつかんとして、突き放された」


「にしたって。ありゃ飛ばしすぎだよ」


「片方が左利きなのをこんなふうにして生かすだなんて。なんという発想、なんという精度」


 やっと重力を思い出したのか、ボールがようやく下降に入って。

 落としどころも実にいい、これこそベストポジション。止まった地点は? 数字が出ますでしょうか?

 出ました、なんと!? 推定飛距離はゴ、570ヤード!?


 以前のものはアイアンとドライバー。

 今回のものはドライバーとドライバーだ。

 以前で最長550ヤードほどだった。このショットはそれを上回ったな。


 この超々ロングコースのおよそ中ほどにまでボールを運んできたぞ舞浜学院! これでおよそ勝負あったか!?


「さあて美月ちゃん、いこっか」


「ええ」


「お、なんだか余裕あるじゃん」


「そっちが準備してきたように、こっちだってなんの準備もないわけじゃないってところを見せたげる」


「へえ、言うじゃない。ま、お手並み拝見っと」


 試技を終えた舞浜が下がります。それをなにごとか、労ってでもいるのか水守?


「覚えていますか? 先月のことです。あなたは驚きの一打を披露する前に予告してくださいましたね? それに今回も、新技を告知後に放った」


「うん? そうだったかな? 気にしないで、無意識からの発言さ。意図してのものじゃない」


「そうでしょうとも。あなたにはなんら狙いなどない。だってそれはあなたの騎士道精神に則った上での行動。そうすることが当たり前で、そうすべきと感じただけ。であるならばわたくしたちも倣いましょう。わたくしたちも今日までに新たな技を編み出しました。過去のものはふたつある技をさまざまに組み合わせただけ。これからお見せするのはそれらとは異なる打法です。つまり第3の打法になります」


「へえ。君たちもこの試合のために用意した技があるっていうの。それは興味深い、ぜひ見せて」


「言われなくとも」


「正直オレらは国内に肩を並べるほどの好敵手がいなくて寂しく感じているんだ。だからこうして君たちと戦っている今が一番充実している。競い合っていると感じられる時間なんだよ。だからこのままで負けないでおくれ。しっかりと競ってから負けておくれよ」


「なんだか違和感があったんだ。その理由がわかった。あなたたちを最強の高校生って認めるよ。強すぎる。でもあなたたちは頂点に長く居すぎた。居すぎて怖さとか見上げる気持ちとかを忘れてしまってる」


「それはそうさ、だからこうして——」


「ううん、ボクが言わんとしていることをなんにもわかっていない。ボクが言いたいのは、どうしてもそれを手に入れたいと願う渇望がないってこと。得られないからこそ求めて、届かないからこそ背伸びをする気持ちがあなたたちにはわからない」


「そう言われてもね。オレらの台頭はペアゴルフの歴史とともにある。君らだってこの地位に3年もいたら同じになるさ」


「だったら負けない。そんな人たちに負けられない。ボクたちは楽しいスポーツに興じているんじゃない、生きるか死ぬかの戦場にいるんだ。ボクたちはあなたたちの向こう側をこそめざす」


「一か八か。練習では結局ほとんど成功していませんが」


「1000ヤードとなればなりふり構っていられないよ。それにあんなものを見せられちゃあ。覚悟はもう、できてる!」


 舞浜が下がり、出てきましたのは長崎東西。苦境に立たされていてもなおこの表情、まるで大海原に出航するかのような清々しさで秋の風を受けます水守・大空ペア。


 どれだけ飛ばせるかだ。

 舞浜はともすれば2オンすら狙える位置にある。ここで400ヤード級を3回打つつもりならほぼイーブン以下が確定、長崎の敗北が決まる。

 ここは是が非でも舞浜の570ヤードに喰らいついていく必要があるんだ。彼女らにその考えがあるかどうか。これは必達だぞ。


 さあ長崎が構えます。ティグラウンドで、ふたり並んで。

 これまでも幾度となく見てきた光景です。いくらか頼もしささえ感じる長崎のこの布陣も、本日は最初の試み。どう出るか。


 え。

 ちょっと待って?

 周りには跳ね返してくれる障害物が見当たらないわよ? 岩も木も、カート道すらないじゃない。どうするつもりなのかしらあの子たち?


 上野さんの心配をよそにスイングはもう、始まってしまった!


 んちょっと待ってぃ! いつもと違って大空ちゃんも同時じゃないのよう!? これはぜったい新しい何かよ、新技なのよォ!


 ボールにアドレスしたのは水守、そのまま打ったァ!


「ぐぬきぬくくぬ! だ、第4の奥義! バイアフリンジェンス・オブ・ブリッジヘッドおおおおおお!!!」


 実際にボールを打ったのは大空!?

 えええっと? どういうことですか?


 なんてことをするんだ!

 放送席だと映像を拾えてなかったのかもしれない。

 打ったのは美月くん、それですぐに前のティマーカーに当たったんだ、球形のね。そこで90度横に飛んで左のティマーカーを直撃、さらに90度手前に折れ曲がってつばめくんの足下に。ボールはカタカナのコの字を描いて飛んだんだ、それを彼女が力任せに打ち返したって寸法だな。


 では2度もクッションを!? まるでビリヤードです水守・大空ペア!

 赤井さん、打ち返したとおっしゃいましたが、ドライバーショットをドライバーで、ですか?


 そうなるな。

 まったく、とんでもないことをやってくれるもんだ。実質美月くんのショットをほぼ直接打ち返したのと同じだけの威力がでる。球威に負けなければの話だがね。


 さぁどうなる長崎ボール? 舞浜とは対照的にどこまでも高く飛びゆくが?


 同じ威力でも追い風があるときは高いほうが有利。

 風は左からだが若干の追い風、存外おもしろいところまで飛ぶかもしれん。


「超えろぉオッ!」


 まさか!?

 越えて?

 越えてきたァーーーーッ!

 長崎ボールがなんと舞浜をオーバードライブ! 舞浜ボール対比の推定600ヤード地点に着弾んん!


 風の恩恵を受けたのね。微風だけれど、ないよりはマシ。

 100ヤードで1ヤードの恩恵を受けるのなら、600ヤードなら6ヤードにもなる。この差は大きいわよ。

 あの子たちは自然を味方につけるのが本当に上手だわ。


 右へ流されましたがそれでもフェアウェイをキープ。こちらも2オンが射程となる圏内に運びました!

 いやあ、驚きましたねえ長崎東西の新型ショット。

 あんなにも飛ぶものですか赤井さん? 信じる信じないではないのですが、どうやったらあんなに飛ぶのかが疑問なんです。


 じゃあ野球を例に説明してみるよ。

 ティアップしただけのボールをホームランにするのは強打者であっても案外難しいんだ。だが、ピッチャーから放たれた速球は十分な反発を生んで、観客のいるスタンドまで届く飛距離になる。

 彼女らのはそれだ、美月くんの投げた球威のままにつばめくんが力まかせでホームランにする。

 にしてもティマーカーとは考えたな、今まで木の幹や岩へ行って返る際に生じていた損失を、究極にまで最小化したんだ。


 なるほどですね。長崎東西らしい新型ショットでした。

 選手たちはおよそ600ヤード近い2打目地点に向かいます。優雅に、クルーズするかのように。


 そうとう距離があるものねぇ。ほとんど2打ぶんよ。


「どうした大和、先ほどまでみたいに褒めたたえないのか」


「…………!」


「衝撃を受けた、焦りを感じた。それはつまり、相手を格下に見ていたということ。私と同じ、彼女の指摘と同じというわけだ」


「そうなのかもしれない。そうだったのかもしれない。だけど。それを認めて、改めてライバルと見定めた。その上で勝つ!」


「フッ、その意気だ。私も認めよう、ついに見つけた。これまでで最強の好敵手であると」


「聞こえてるよぉ〜。やっと追いつけたかな。こっからだよペアゴルフは」


「わたくしだって。負けません」


「こっちもさ」


「勝つのは常勝・舞浜学院だ。おまえたちなどではなく」


「言い方ァ! ごめんね? バカ真琴がごめんね?」


 さあ、衝撃の両校の第1打から冷めやらぬまま2打目地点です。先に手前の舞浜から。


 ふたりとも当然とでも言うようにドライバーね。


 直ドラですか。

 このホールは1174ヤード、舞浜高校の地点からは残り600以上あります。先ほどのビッグフライトとなったティショットよりもさらに飛ばさねば届きません。


 それでも挑戦するつもりなのね。

 それでいいの。それでいいのよ。

 成功しても不発でも、その経験はきっとあなたたちの財産になる。

 不感症のあの子たちもしっかりと、この大会で得難いものを得たわね。


「アウトドライブされたとはいえ、長崎は2打目で届かないはず。オレたちは狙おう、ここから。ここが勝負のホールだよ」


「だな。やるぞ」


「乗せるつもりがあるの!? ここから!?」


 二宮姉のなにが意表をついたのか、大空がおののいて後ずさります。


 よほど驚いたようね。


「オレらの特訓の成果はひとつだけじゃなくってね。実はもうひとつあるんだ」


「まさか! この上がまだあるっていうの!?」


「ふふふ、ごめんね。あるんだよ。君らが新技を用意していたように、オレらも編み出したんだよね、ふたつ。そいつで今から乗せてしまおうと思って。はは、ごめんね」


「そこで見てろ、きっと驚く」


 アドレスします二宮姉弟。ボールを挟んで、先ほどと同じに。


 いや待て。ヘッドが完全に重なってるぞ。まさか?

 さっきとは? 異なる?


「せいぜい驚いてよ。こいつが……ドライ!」


 同時に振りかぶって、同時に振り抜いたァーーーーッ!

 すさまじいまでの金属音!?

 ヘッドがミートの瞬間にこすれたか、昼間でも見えるほどの火花が散ったァ!


「!!!! そんな手が!」


「さっきとは違う!?」


 おい、上野くん見たか今の。


 ええ。戦慄しています……!


 この年寄りの目が確かなら、こすれたどころじゃあなかった。ありゃあ激突だ。

 弟がボールをミートした瞬間に、姉のヘッドが追いついて弟のヘッドの尻を強烈に小突いたんだ。

 あれはそうとう飛ぶぞ。長崎東西のは言うなれば足し算、舞浜のは掛け算だ。

 高反発ヘッドによって押し出された高反発ヘッドは、どこまでもボールを押しつぶして離さなかったろうからな。いったいどこまで飛ぶのか見当もつかん。


「あんなデュアルショットがあるもんか! あんなもの、あのふたりじゃなきゃ打てっこない!」


「ですが現実に」


 まだ上昇中だ舞浜ボール、いったいどこまで飛んでゆくのか?

 見守るしかできない大空はこの表情です。


 あんなに眉間にしわを寄せて。

 苦しいわね。自分たちが成功率の低そうなショットを成功させたあとだけになお苦しいわ。

 舞浜がオンさせるには610ヤードは必要。はたしてあのショットにそれだけの力があるかしら。600ヤード級なんて世界レベルなのよ?


 そうは言うがすでに1打目で目の当たりにしてる。それも対戦相手の長崎東西が披露して。

 ここでも出るんじゃないのか、600ヤード級がふたたび。


 どうやら距離は十分にありそうだ、600ヤード超の勝利への架け橋が、いま鮮やかに佐野の仮設3番に架かる!

 っと!?

 無念のオーバーッ! グリーンを素通り、そのままラフに姿を消しますッ!

 舞浜の大飛球は予想外の距離を得てグリーンを大きく大きく超えました! 推定飛距離はなんと!? 640ヤードにのぼります!

 長崎東西は剣ヶ峰で残った! 残った残った!

 舞浜はがぶり寄って勇み足でしょうか!


 640ヤードも飛ばしたのォ!?

 さすがは最強の高校生というべきね。もしかしたらプロよりも。ペアゴルフ国内最強かもしれない。


「ちいッ! 乗らんとはぁっ! 大和ォ!」


「怒んなよ。そう何度も練習できるショットじゃないからね。練習不足がでちゃったか」


 二宮弟のドライバーを見てください。フェイスの反対側が無惨につぶれています。


 グシャグシャじゃない。ヘッドが根元からグラついてるわ。あれではもう使い物にならないわね。

 ああなると破損を申告して破棄かしら。真琴ちゃんのクラブも当然無傷では済んでないわよね。

 もしここを乗り越えられたら長崎はチャンスよね。


 ええ。2オンができたなら、の条件つきではありますが。


「あわわわわ。あれが乗ってたら負けていた?」


「ええ。しかもこれを外しても負けが確定します」


 舞浜の勝負をかけた一打だったが、まさか飛びすぎるとはな。

 あんなもの精密にコントロールなんてできないよ。今日までに何回練習できたと思う?


 たしかに。

 リスクもディスアドバンテージも全部飲みこんでの挑戦だったということね。だとしてもこのチャレンジには賞賛しかないわ。


 しかし対戦相手にプレッシャーを与えるには十分でした。ラフとはいえおよそグリーン近く。

 水守・大空ペアは、次の試技でグリーンにオンさせることができなければやはり負けが濃厚です。重要な局面はなおも続きます。


 でもあの子たちのはいくぶん易しいかも。1打目を飛ばしておいたから2打目を楽に打てる。


 それでも560ヤードはありますよ。かつての長崎東西では手も足も出なかった距離です。

 それを克服してみせたのが先ほどのショットでしたが。彼女たちが立つのはフェアウェイ、今度こそ障害物がない状態でのショットになります。


「橋頭堡は築きました。あとは攻め落とすのみ」


「ボクたちもね、ふたつまでは間に合ったんだ。これなら届くはず、まあそこで見ててよ」


「参りましょう」


 1ヶ月前までは500ヤードを越すショットはありませんでした長崎東西。それがわずか1ヶ月の間に新しい技を考案、なんと500ヤードどころか600にも手が届くめざましい成長を見せてくれました。

 残りは560ヤードほど。ただしここには跳ね返してくれる障害物がありません。

 舞浜はおそらく次を乗せてきます。すなわち長崎はこれを乗せねばおそらく敗退。

 果たして。


「まさかこんなに追い詰められるだなんて。さすがは決勝戦、さすがは舞浜学院ですね」


「そんなことより大丈夫? 顔色おかしくない?」


「顔色が? まさか、1センチはあろうかというくらい日焼け止めを厚塗りしてきましたのに?」


「でも」


「いいですかつばめさん。ここで打たねば終わりです。それとも打たずに終わりますか? 打たなくても終わり、打ってダメでも終わりです。でしたら打ちましょうよ」


「でも打っちゃうと続いちゃう」


「ではサッと打って終わらせましょう。それに第2は比較的負担が少ないですし」


「でも改良型はそうじゃない」


「デモもデーモンもありません。わたくしのために打ってください」


 話し合いは終わったようです?

 これまでとはうって変わり、無言で見つめあう水守・大空ペアです。


「そうだったね。ベッドで終わるのをよしとせず、最後まであがくんだって、そう決めたんだもんね!」


 あの布陣は二人羽織のもようですが。

 果たしてあの技で560ヤードが届くでしょうか。1ヶ月前までなら400後半がせいぜいでした。さらに100ヤード近く上乗せする鍛練を積んだか長崎東西?


「行こうっ!」


「はい! このホールの向こう側へ!」


 さあ大空がスイングを。

 ッと!? スイングトップで水守がシャフトをつかんで放さない!?


 それどころかぶら下がってるじゃないのよう!


「ふんむ……!」


「にににににに……!」


 じゃああれはもしかして!?

 北端商業の改良型ァ!?


「届けあの夏の日の555ヤード!」


「第2の奥義・改二!」


 水守が放すとさらにダフって!?

 まさかここで雷獣ショットを重ねがけ!? さらにもう一度地面で溜めを作る!?


「ををををををおおおおおあああああああ!!!」


 多段雷獣ショットってことなのォおおお!?


「菩薩掌!」


「アンティーク・マリオネット・オブ・コンドル!」


 水守が運命の一打を押さえこんだ!

 対照的にボールは高く高く! 大空へと舞い上がります!

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