【伊藤博文・勝海舟】それ、大丈夫ですか?
伊藤博文は坂本龍馬の活躍に満足していた。ロシア帝国をウラジオストクに閉じ込めたおかげか、その後ロシア帝国が南下してくるという作戦は聞かなくなった。これで北方から攻められる心配はなくなった。そうなれば、さらなる領土拡大へと乗り出すことができる。だが、その前にすべきことがある。アフリカで戦闘を繰り広げているフランスをどのように援助するかである。
これには伊藤博文も結論が出せずにいた。フランスの領土はアフリカの西部。一方、イギリスの領土はアフリカ東部。理屈的にはイギリスを挟撃できるが、アフリカへ到達するにはインドを拠点にするしかない。あまりにも遠すぎる。アフリカでのイギリスとの戦闘に物資の補給。やることが多すぎる。この方針で進めば、海軍が返り討ちにあうのは目に見えている。同盟国であるフランスを助けるためとはいえ、自軍を失うわけにはいかない。
では、フランスへ直接物資――機関銃など――を運ぶことは可能だろうか。伊藤博文はその方向で考えを進める。アフリカ西部のフランスへ物資を補給するとなると、さすがにどこかで休息をとらなければならない。そうなると、アフリカ最南端の喜望峰がいいだろう。あの地は中立に近い。フランスやイギリスのどちらの味方についても、もう一方からは攻撃される。ゆえにどちらにも忠誠を誓っていない。それだけが理由ではない。喜望峰は海上の要地だ。どの国の船もここを休息地とする。つまり、お金をどんどん落としてもらえるのだ。
物資の供給だけなら、補給艦を防衛する軍艦は少なくて済む。これなら問題なさそうだ。あとは勝海舟に補給艦を準備させればいい。伊藤博文は側近にこう伝えた。「勝海舟を呼べ」と。
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勝海舟は伊藤博文の考えは、どうなのかと疑問を抱いていた。確かにフランスへ物資の補給により支援することはできる。では、フランスが勝ったとしてイギリス領アフリカは誰のものになるのか。当然、フランスのものだろう。大日本帝国に半分譲るほどフランスも馬鹿ではないだろう。
そうなると、問題なのは南アフリカだ。最近、あそこからはダイヤモンドが見つかっている。ダイヤモンドの採掘場をフランスが手に入れれば、大日本帝国と同じかそれ以上の経済力を持つだろう。伊藤博文はそこまで計算に入れているのだろうか。こちらはフランスに武器を補給して、自らの武器を減らす。それに対して、フランスは戦争に勝ったうえに、ダイヤモンドという資源を得る。勝海舟はそれだけは納得がいかなかった。
次の瞬間だった。伊藤博文に不気味な笑顔が浮かんだのは。
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