【勝海舟】なんか、おかしくないですか?

 勝海舟は大海原を軍艦で気持ちよく移動していた。風が程よくあたり心地よい。勝海舟は伊藤博文の指示に疑問を持っていた。あれは慎重になりすぎだ。もっと堂々としていればいい。その方が海軍の士気も上がるし、なにより勝海舟自身の気分がいい。





 インドに着くとイギリス人のリーダーが勝海舟を向かい入れてくれた。



「遠路はるばる、ありがとうございます。貴国の援助に心より感謝いたします。さあ、こちらにおかけになってください」



 そこにはインド製と思われる座り心地が良さそうなイスがある。勝海舟は思った。我が国でも、アメリカ人やメキシコ人たちに用度品を作らせようと。



「それで、インドに着いたら我々に物資を補給していただけると聞いていますが」



「ええ、もちろんです。こちらがその補給物資になります」



 イギリス人は荷造りされた物資を指す。そこには食べ物から日常品まで、さまざまなものが詰まっていた。これなら、ベトナムやカンボジアを攻めるのに十分だろう。後はインドネシアにいる海軍と挟撃すればいい。部下に荷物を運ばせようとしたときだった。勝海舟が違和感に気づいたのは。この荷物、火薬のにおいがする。それも、日常品の荷物から。



「みんな、荷物から離れろ! これは罠だ!」



 勝海舟はとっさにかがみ、頭を守る。



 次の瞬間、荷物が派手な音を立てて爆発する。轟音が耳をつんざく。鼓膜が割れそうな位に大きな音が。



 勝海舟が顔を上げると、そこに広がっていたのは悲惨な光景だった。無残に吹き飛んだイギリス人に同胞たち。黒焦げた大地。火薬独特の嫌な臭い。生き残っていたのは勝海舟を含め数人だった。イギリス人のリーダーも吹き飛んでいた。なるほど、自爆覚悟だったのか。



「総員撤退! 荷物には近づくな!」



 生き残りのイギリス人が銃を通りだすが、勝海舟が撃つ方が早かった。伊藤博文の言う通り、懐に拳銃を忍ばせておいて正解だった。まさか、予想通りになるとは。それも最悪な形で。伊藤博文の指示は的確だったのだ。イギリス人が裏切ることを織り込んで作戦を立てたのは。



 しかし、こちらにも考えがある。こうなることを想定して海軍の本体はインドネシアに置いてきたのだ。インドネシアからベトナム、カンボジアへ行く部隊は必要最低限に抑えてある。



 勝海舟は軍艦に乗り込むと、イギリス人の軍港を砲撃するよう指示を出す。敵への怒りをこめて。残っていた火薬に着火したのか、港は派手な炎と煙をあげて燃えていた。これが大日本帝国を裏切ったものの末路だ。イギリス人は後悔しているだろうが、いまさら遅い。今回は辛勝と言えるだろう。敵の罠を見破り、勝海舟が帰還し、港を焼き払ったのだから。



 勝海舟は急いで電報をインドネシアに送った。勝海舟の指示を待っている坂本龍馬のもとへ。

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