犯人は

 なんとも酷い目にあった。


 青信号の横断歩道を渡っていたら、信号無視をした車にはねられたのだ。

 生死を彷徨うような大怪我を負い、長いこと入院する羽目になった。


 親兄弟が遠方なことや、勤務中に起きた事故だったこともあり、会社の後輩が自宅から何かと必要なものを持ってきたり、甲斐甲斐しく世話をしてくれて大変助かった。

 先輩の部屋、汚すぎますよ〜と言われたが、男の一人暮らしなんてそんなもんだろ?


 ようやく退院して久々の自宅に帰ると、小綺麗に整頓されていて驚いた。

 後輩が見かねて片付けてくれたのかもしれない。


 会社に復帰したら、何か美味しいものをご馳走しなければ。

 そう思いながらリビングへ入ると、机の上に見覚えのない手紙。


 何気なく広げたそこには、なんだか見覚えのある手書き文字でたった一言。

『しぶといね』と書かれていた。

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