視線

 もし、人の絵が描かれた看板から視線を感じたら、目を合わせないようにするんだよ。


 視線を合わせたら最後。

 その場から動けなくなるからね。


 石化したり、金縛りになるわけじゃない。


 入れ替わってしまうんだ。


 気付いたら、ずぅっと同じ景色を見ている。

 動かせるのは視線のみ。

 後ろを振り向くことはおろか、頭上を見上げることすらままならない。


 あと、入れ替わった後の、人間の方がどうなるのかは、ちょっと分からない。

 まだ視線を合わせてくれる誰かに会ったことがないからね。


 ただ、入れ替わった後の僕が、看板になった僕に向かって、ニヤリと笑って立ち去ったことだけは覚えてるよ。

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